「どれも二人じゃ盛り上がらないなぁ」
「…うん」
「二人じゃ、できるゲームも限られてくるからなぁ。
…カブとか、ブラックジャックとか、セブンブリッジ
とかは知らない?」
「ごめんなさい」
初音ちゃんは首を左右に振った。
…ってよく考えりゃ、今言ったのは全部賭けの類の
ゲームじゃないか。
いかんなぁ。
周りの仲間の影響で、覚えてるゲームは全部この手
のものばかりだ。
「他になんかあったかなぁ」
「耕一お兄ちゃん、スピードは?」
「なにそれ、映画?」
「違うよ。アイドルの」
「…」
「…」
「すごい記憶力だなー」
「えへへ」
初音ちゃんは照れながら後ろ頭を掻いた。
「根本的に頭がいいのかな」
「そんなことないよー。…だって、テストの答とかは
ちっとも覚えられないもの。わたしね、昔から文章の
意味とか内容とかはすぐに忘れちゃうんだけど、物の
色とか形とかは、結構簡単に覚えちゃうんだ」
「へぇ、変わってるっていうか…」
「うん、たとえばね、一度会ったことのある人なら、
絶対に顔を覚えてるの。でも、名前は思い出せない、
そんなのばっかり」
「変な頭だなぁ。ついでに変な髪型だなぁ」
俺が言うと、初音ちゃんはむっとし、ぴぴぴと髪を
逆立てた。
…すまん!
それから俺たちは、初音ちゃんの部屋でトランプを
して遊ぶことにした。
とても女の子らしい可愛らしい部屋だ。
「何をしようか?」
カードを切りながら俺が訊いた。
「うーん、そうねぇ…」
制服から私服に着替えた初音ちゃんが言った。
「パーカーは?」
「パーカー? サンダーバードの?」
「そう。それ、それ」
「うーん、あんまりそのギャグ分かんない」
初音ちゃんは申し訳なさそうな顔をする。