部屋に入るなり、初音ちゃんは、畳の上に放り投げ
られていた一冊の本を見つけた。
「あっ、本がある」
今日の昼、何気なくコミケで買ったものだ。
「なに、これ?」
初音ちゃんはそう言って、本に駆け寄った。
「あっ、わたし、この本知ってるよ」
って何故、知ってるんだぁ!!(笑)
「耕一お兄ちゃん」
湯上がりのため、肌はほんのり桜色に染まり、髪か
らはシャンプーとリンスの、身体からはボディソープ
のいい匂いがした。
「うん? な〜に?」
酔いの覚めやらぬ俺は、気の抜けた返事をした。
初音ちゃんは覗き込むように俺の目を見て、
「あのねぇ、この前買った花火があるんだけど…」
ちょっとモジモジしながらそう言った。
「えっ、花火? いいねぇ…、風流だねぇ…」
目を細めて俺が言うと、
「よかったら、…一緒に食べよ?」
ううっ、初音ちゃん! 花火なんか食べちゃ駄目だ
!(笑)
どのくらい走ったことだろう。
俺たちは、取りあえずは亡者の追撃を逃れた。
同じような洞穴が続いている。
「…はあ、はあ、はあ、はあ、はあ…」
「…ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
俺と初音ちゃんは、膝に手をついて息を切らした。
「…な、なんなんだよ、チクショウ!」
俺は天井を見上げて言った。
「…ド…ドラえもんって…」
初音ちゃんが呟いた。
「…ドラえもんって言ってた」
どうやら、初音ちゃんは恐怖のあまり聴覚に異常が
生じたようだ(涙)
「おはよう、初音ちゃん」
俺が応えると、テーブルについていた初音ちゃんは
弾むように立ち上がった。
「耕一お兄ちゃん、座ってまっててね、いまお味噌汁
あっためるから」
「お、サンキュー」
初音ちゃんは軽い手つきで、味噌汁の入ったお椀を
懐に入れた。
「…少し暖めるのに時間は掛かっちゃうかもしれない
けど……」
けど……って、初音ちゃん、君は豊臣秀吉かぁ!!
(笑) でも、なんかうれしいぞ(爆)