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略して『初耳』

「…雨月山の鬼っていうのは、この辺じゃ結構有名な
おとぎ話なの。旅行者用のパンフレットにも載ってる
から、てっきり柏木クンも知ってるかと思ったけど」
「初音ちゃんの耳だなあ」
「えっ!?」
「初耳ってことさ!」
「…」
 由美子さんが怪訝そうな顔をする。
 …俺は一体何をしゃべってるんだ!?


とってもお茶目な由美子さん

「なんでも住職さんが言うには、そっちの物語が先に
出来て、それを要約したのがおとぎ話版なんだって。
だからそっちの物語の方が、おとぎ話版よりももっと
シチュエーションが細かいのよ。雨月山の鬼に関して
も、ずっと恐く描かれててね、例えば、鬼はどうして
人里を襲ったかというと…。なんでだと思う?」
 由美子さんは、いきなりクイズ形式に質問した。
「…うーん、人を食べるからとか?」
 俺が適当に答えると、
「ブッブー! 残念、はずれ」
 由美子さんは楽しそうに笑って言った。

「正解は、CMの後で!! チャッチャラチャ〜ン!
(ジングル(笑))」

 オイオイ!!


女性の第六感(笑)

「正解は、雨月山の鬼が、人間狩りを楽しむ鬼だった
から。雨月山の鬼は、普通のおとぎ話の鬼とは違い、
人間を食べるわけでもなく、貢ぎ物を要求するわけで
もなく、ただ、逃げ惑ったり、刃向かったりする人間
を殺すことが生き甲斐の鬼だったの」
「たちの悪い鬼だな〜」
「でしょう? それにね、女性をさらうの。若い女性
ばかりをね。もちろん慰みものにされるの」
「慰みものって…」
「え? あっ…、か、柏木クンが思ってるほどの陵辱
は…しなかったと…お、思うけど…」
 由美子さんは、俺の頭の中を見透かしたように、顔
を真っ赤にしながらそう言った。
 非常に恥ずかしい…。


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