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姉も姉なら、妹も妹だ

 和気あいあいな先輩後輩の会話の中、不意にかおり
ちゃんが、部屋の隅に座った俺に目を向けて、
「…ところで、あの人さっきからあそこで、いったい
なにやってるんですか?」
 オクターブの低い声で言った。
「さあ? 暇人のやることは…」
 そこまで言って、梓ははっと言葉を飲んだ。
 ひきつった俺の眉を見て、すっかり彼女のペースに
飲まれている自分に気がついたようだ。
 梓は慌てて立ち上がり、俺の側へと駆け寄った。
「あ、紹介がまだだっけ。こいつ、耕一っていうの。
あたしの下僕なんだ」

「ふう〜ん、下僕なんですか」
 かおりちゃんは薄く目を閉じて、訝しげな顔で俺を
睨んだ。

 オイオイ!(ってこのネタは前にも使ったな(笑))


秘めたる思いは心に留めよ

「…でも、彼女は俺がいると不愉快そうだから」
 俺は聞こえよがしにそう言った。
「そんなことないわよぉ」
 梓は怒りを噛み殺し、ひきつった笑顔を浮かべた。
「二人とも緊張して、まだ打ち解けあってないから、
話が弾まないのよ。もっと楽しくさあ…」
「正直言って、わたしは梓先輩と二人きりになって、
安心させておいてから『エイッ!』とか言っちゃって
ベッドに押し倒して、先輩の柔らかな唇にそっと口づ
けして、さらに軽く唇を噛んで、びっくりさせて口が
ひらいたその瞬間に舌をねじり込んで、先輩の舌と絡
めて、先輩が私のあまりのテクに酔いしれて、『ボ〜』
となっちゃった頃合いを見計らい、『お姉さまって、
よんでもいいですか?』とかなんとか聞いちゃって、
さらに制服の上から先輩の胸を軽く触って、『お姉さ
まの胸ってとてもやわらかい…』とか……って、アレ
ッ? 梓先輩!? どこいっちゃったんですかぁ?」

 部屋の外では、梓が頭を抱えて座り込んでいた。


梓よ! それはバレバレだ

「とにかく、もうちょっとだけつきあってよ〜」
 梓は情けない声で言った。
「まったく…。大体なぁ、そんなに嫌ならはっきりと
彼女に言ってやればいいじゃないか。嫌いだからもう
帰ってくれって」
「…そ、そんな。…あの子、傷ついちゃうじゃない」
「矛盾してる奴だなあ」
「…そ、そりゃあさ、ちょっとは行き過ぎたところも
あるけど、普段のあの子は…なんかこう可愛くって、
そんなに嫌いってわけでもないのよ。だから…」
 梓は気まずそうな顔で俺の目を見た。

「ねぇ、耕一。あんた、適当に時間を見計らってさ、
あたしに、『『八時だよ! 全員集合』の時間だぜ、
一緒に見ようよ』とか言ってよ」
「……。言ってもいいけど、本当に良いのか?」
「え? 何で?」
「…」


それは…現実(笑)

 再び部屋に戻った俺を、かおりちゃんは冷たい視線
で迎えた。
 彼女にとって、俺はお邪魔虫以外の何者でもない。
「…なんだ。てっきり、気をきかせて出てってくれた
のかと思ったのに」
 俺を見るその目には、もはや明らかな敵意が含まれ
ていた。
「か、かおりぃ〜」
 梓は困った顔で苦笑した。

 その後もかおりちゃんは、あからさまに俺を無視し
続けた。
 三人共通の話題には一切乗ってこず、梓が自分個人
に振ってくれた話題にだけ笑顔で応えた。
 この俺とは、何がなんでも話をしたくないらしい。
 仕方なく、こっちが口をつぐんで大人しくしている
と、二人の会話は次第に花が咲き始めた。
 SEX友達の話、援助交際部の話、好きな体位の話、
脈絡もなく次々と、Hな話題が飛び交った。

 女子高生ふたりの本音の空気に押され、俺は徐々に
部屋の隅へと押しやられてしまった。

 くっすん! 女なんて、不潔だぁぁ!!(笑)


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