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第9話 磯のアワビの片思い

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「デザートは何かって もちろん君だよ」

今回のデザート 真行寺 君枝
<ストーリー>
俊介の青春時代のマドンナ、景子と偶然再会する。
ディナーの約束をするが景子は人妻だった。

[今回のメニュー]

マグロの醤油着鉄火丼
アワビのシャブシャブ
原作の同名エピソード「磯のアワビの片思い」を
ベースにドラマ化しています。

冒頭アワビを調理する俊介
大西俊介39歳 独身
趣味は手料理を作る事 そしてバイク・・・

と言う事で、岩城氏のプライベートシーン

ビンテージバイクレース(1945〜72年に生産されたバイクのレース)
GRAND SLAM4 CR−1の模様
なんと今回も岩城氏は優勝したようです。
奈々子さんのナレーションで言っているようにこのエピソードは
いつもライト感覚なコメディタッチとは明らかに違います。
今回のゲストはなんと人妻。
一番「デザート」らしくない、けど一番、森さんらしい一偏です。

ドラマは街で偶然出会った二人が俊介のホームベースに
入ってくるところから始まります。

景子「すてきなお住まいだわぁ」
俊介「今お茶でも入れるよ」
「でもあんまりゆっくりしてられないの
早く帰って夕食の支度しなきゃならいから」
俊介「って事は今はめでたく人の奥さん?」
俊介「昔俺が乗っかっていたオートバイ覚えてる?
景子「シルバーメタリックのドカッティ?」
俊介「そうそう シルバーショットガンっていうんだ
あれまだガレージに健在だよ。」
革ツナギを身にまとい夕日をバック
ドカッティで走る回想シーンが何度か出てきます。
今回は思いでの人という事を演出しているのですが
これはスタジオ撮りですね。

俊介は景子をドカティのタンデムシートに乗せたいがために
一人乗りのドカティにタンデムステップをつけて改造していたという

ちなみに私のHONDA XLR200は本来二人乗りですが軽量化のために
タンデムステップを取っ払っています。<これで不自由な思いをした事が・・・

二十年前 景子には良一という彼氏がいて
二人がそのまま一緒になるものだと思って俊介は身を引いたと言います。
でも二人はうまくいかなかった

景子「クリスマスイブの夜にねあたし当時の月給のほとんどつぎ込んで
バカラのグラスを送ったのよ良一に」

俊介「バカラのグラスか 背伸びしてたからなあの当時みんな」
景子「でも良一はなにも用意してくれなかったのよ私へのプレゼント
前の年には素敵なブレスレットくれたのに、最高のセンスのプレゼントだった

「覚えているよ」<この時俊介の顔が輝く 実はこれには訳がある

「翌朝は一面の雪景色 良一の声が聞こえたのよ。景子景子出ておいでって
一面の雪にI LOVE YOUって書いてあった。
景子俺の心からのプレゼントだよ受け取ってくれよって
あたし窓の下を見ながらどこにプレゼントがあるのよ
なによこれって それからすごい剣幕で自分がプレゼントした
バカラのグラスを片っ端から壁に叩き付けて一つ残らず割ってしまったの。

「現実の生活感に私追いつめられていたのよ。
先行きへの不安やお金のことで夢がしぼんでいくような気がして
私はバラ一本でもよかったの良一に何かプレゼント買ってもらいたかったのよ」

「私泣きながらもし偶然雪が降らなかったらどうするつもりだったの
窓に<ILOVE YOU>って描くつもり ケチッ!って叫んでいた。」

この時俊介の顔は痛々しい顔で「そりゃひどい」といいます。
実はこの一件について原作では設定が微妙に違っていて
雪に「I LOVE YOU」を書いたのは俊介自信になっています。
バカラのグラスを割ったのは当時の俊介の恋人の高橋ミエという女性です。
ちなみに第10話で俊介と対決するソムリエの名前が高橋ミエになっています。

おそらくこれは推測ですが良一に雪に「I LOVE YOU」を書くように
アドバイスしたのが俊介でそれが見事に失敗したのを知って
「そりゃひどい」となったのではないでしょうか

景子「今の私ならどんなものより雪に書かれた「I LOVE YOU」を
取るけどね。そうよ毛皮や宝石なんてどうって事ないのよ。
いくら積まれたって嬉しくとも何ともないわ。あのころが懐かしいわね」

俊介「ねぇ覚えていっかな。一晩中とばした後三人で飛び込んだ飯屋
ダンプの運転手がいっぱいいてさ じろじろ睨まれてさ
こっちももう強気になって睨み返して」

そりゃそうでしょう夜バイクを飛ばしているのはいわゆる暴○族じゃないですか。
時代背景を考えるとまさに暴○族全盛時代だったはずです。
トラックの運転手にとっては天敵のようなものです。
なんといっても岩城さんも公道レーサー(=暴○族)からの出身ですからね(^_^)

そのときの飯屋で食べたのが
マグロの醤油漬け鉄火丼

私も学生のころ初めてお茶の水にある某学生食堂で
鉄火丼食べた覚えがあります。

俊介「今は幸せなんだろう?」
景子「広尾に家があって車が三台
シベリアンハスキーとマルチーズを飼っているわ
二人の息子は幼稚舎から慶応に入れたし夏は軽井沢でテニス三昧」

俊介「結構尽くしじゃないの」
景子「この十年来私たち夫婦のことやっていないよ」

長いこと仕事のストレスでだめなのだと思ったら
夫には愛人がいて週に二度は会っていたという。
不倫物に出てくるいかにもっていう設定ですね

景子「私あの十年間を思うと気が狂いそうになるの
私の30代は何だったのかって」

景子「今度は私の番」
「私の番って?」
景子「不倫をやってやってやりまくるつもり
俊介「目には目をってやつだよね、俺はあまり進めないけどね
景子「私はね普通の女が一生にする回数と同じ数だけ経験して死にたいのよ
人より十年分損したまま老いたくないのよ絶対に」

俊介「俺は何もしてあげられないけど少なくとも君の華々しい門出の
祝膳ぐらいは用意してあげらると思うよ。」

これは物凄い状況ですね。
かつてあこがれだった女性が今自分のところにきて
身を持ち崩しそうになっている。
奈々子さんも分析していますが、男としては下心と思いやりが
交錯する状況ですね。下手すると自分が不倫相手になるかも知れない

俊介「昔懐かしいマグロの醤油漬け鉄火丼なんてどう?」
景子「国道沿いのあの店にいくの?」
俊介「いやいや代々木上原のここで」
景子「ここで?」<ちょっと意味ありげな表情で聞き返す

今日はネタが仕入れられないから翌日の夜に景子を招待する

セラピスト奈々子が俊介の心理を分析する

人妻の生々しい告白にかすかな嫌悪感を覚えながらも
かつてのマドンナの臭うような女盛りの色気には心がときめいてしまう。
鉄火丼をご馳走しようと言うプランに0.5%の下心が無かったとは言わせません。


私の分析はちょと違います
ひょっとして俊介には景子を救う考えがあったのかも知れません。
俊介の部屋で食事をした女性はみんななにか悩みを持っていたのに
いつのまにか解決してしまう。
あるいは美味しんぼのようにアワビのシャブシャブになにか
意味が込められていたとか

さて翌日
会社から帰るとマグロの鉄火丼の調理にかかる俊介
どうもいつも築地の魚屋から材料を仕入れているらしい。

鉄火丼の前菜に用意するのが
アワビのシャブシャブ
高級食材ですね。薄く切ってシャブシャブとは美味しそう

酒は冷酒 新潟は久保田の万寿<原作通りです

料理の準備が出来るとどこかにしまい込んでおいた
箱の中からオルゴールを取り出しゼンマイを巻く。
二十年前に景子からプレゼントされた品物である。

オルゴールの音色に聞き入っていると後ろから突然
誰かが抱きついていくる。
奈々子さんだ。
「わぁっ 奈々子」心臓が止まるほど驚いている俊介
隠すようにオルゴールを止めてしまいます。

ここで奈々子さんが登場するのは原作にはないドラマのオリジナルです。

テーブルに用意された二人分の食事をチェックしている奈々子
奈々子さんはいつもはこういう行動は取らないのですがね。
なんといっても今回は高級食材のアワビですからね
やっぱり食い物の恨みは怖いんですよ
奈々子「おいしそう」<私にもちょうだいと言いたげですね

俊介「奈々子にご馳走したいのは山々なんだけどね」
「めずらしいね 急にこんなんなってくんのね」
奈々子さんがいうには予定のクライアントがキャンセルになったそうですが
ひょっとして俊介の部屋には盗聴器か隠しカメラであるんじゃないでしょうか

奈々子「居座っちゃおうかな」<恐ろしい事を言い出す奈々子食い物の恨みは恐ろしいぞー
俊介「今日のお客さんね・・・」
俊介の言い訳がはじまります。
俊介「いや勘ぐらないでよ」
奈々子「勘ぐってないけど」
俊介「いや誤解だって」
奈々子「誤解してないけど」
「このオルゴール彼女からのプレゼント?」
意地悪に笑う奈々子さん
岩城さんにはこういう演技が合っていると思います。
今回はシリアス路線なのでこういうコミカルなシーンを
入れたかったのじゃないかと思います。

奈々子「好きだったのその時?」
「昔の思い出へのアプローチは慎重にね
夢を壊して終わりなんて事になりかねないわ」

やはり俊介を心配してきたようですがなぜ俊介の状況がわかったのでしょう?
やはり盗聴器が・・・・

電話のベルが鳴る
「私、景子」電話ボックスから掛けています。
ここからのシーンは名場面だと思います。
場面の編集や合成を使わずスタジオつまり俊介の部屋に
公衆電話のボックスを持ち込んでの撮影はなかなか実験的で面白いです。
最後には離れた場所にいるはずの景子と俊介の
視線が絡むというかつてどんなドラマでも見たことのないシーンが出来ます。
携帯電話が普及した現在では考えられないシーンですね。

俊介「どうしたの 道に迷った?」
景子「迷ったのは道ではなくって私の心なの」
俊介「待っているんだ早く来ないか」
景子「だめ」
俊介「アワビのシャブシャブ用意したんだ。
しかも外房のアワビだ」<こんな時も食材に対するこだわりを忘れない

俊介「俺の事信用していないのか」
景子「問題なのはあなたの方じゃなくてあたしの方なのよ」
「あたしがあたしを信用できないの」
「無意識に身に付けた下着私愕然としたの
まだ身につけたことのないシルクの物だったの
自分の下心に気付いちゃったのよ、すごく惨めだわ」

森さんの世界ですね。なんとも生々しい会話です

景子「今でも私の事少しは好き?」
俊介「もちろん好きだよ」
景子「じゃそのまま好きで居続けてちょうだい」
俊介「とにかく来ないか」
景子「だめ 行けないわ。行ったらあなた私の事好きじゃなくなるもの」
景子「私は飢えた肉体を持て余している盛のついた雌犬なの」
俊介「自分の事そういうふうにいうの良くないよ」

景子「お願いだからあたしの事ずっと片思いで居続けてちょうだい」
俊介「わかった」
景子「私があまりふしだらに身を持ち崩さないように祈っていてね」
俊介「それは大丈夫その点は僕が保証するよ」
景子「どうしてそんな風に確信が持てるの?」
俊介「だって君今 身をもってそれを証明したじゃないか
君は口で言うほどふしだらな女なんかじゃない」

確かにそのとおりですね。数学的思考ですね。

ここで問題、死刑執行人が死刑囚に言いました
「おまえの最期の言葉が本当なら縛り首、嘘なら銃殺にしてやる」
さて死刑囚は最期になんと言ったでしょう?

景子「ありがとう、時々あたしの事思い出して心配してくれる?」
俊介「もちろん時々じゃなく毎日思い出すよ」
「そして心底から君の事心配するよ」

今回は俊介さん格好良すぎますね

景子「よかった一人でも私の事心配してくれる人がいるってわかって」
「家を探したら出てきたの昔良一からプレゼントされたブレスレット
あなたが見立ててくれんですってね」
と言うわけだったのですがこれはドラマオリジナル設定です。

この夜、俊介はたった一人で酒盛りをしました。
心の中でかつてのマドンナに声援を送りながら
こんな時なんです、私が俊介って男にどうしようもなく惹かれてしまうのは


森瑤子さんというと不倫推進派のような印象がありますが
やはり「デザート・・」の世界では最後はこうなるのですね
大西俊介のような男ばかりだったら不倫不倫とこんなに
もてはやされる事はないでしょうね。
現実には自分の欲望に忠実な人間が多いようです。

ラストはひとりアワビのシャブシャブを食べる俊介さんでした。
いつもに比べると寂しいラストですが原作に忠実なシーンになっています。

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