1998年10月3日 ハノイ〜東京

8時45分起床。急いで支度をして9時5分にホテルの前でハン君と会う。バイクでタイ湖を通り、ホーチミン廟へ。ここにはホーチミンの遺体が安置されている。写真を撮ることはおろか立ち止まることさえ許されない厳重な警備で有名。だからここに入った人が語ることのほとんどは、ホーチミンの遺体のことではなく警備の話。今は修復中のため中を見ることは出来ないとのこと。後に知ったことだが帰りの飛行機で知り合った人もベトナム人の案内人に修復中といわれていたが行ってみたら入れたとのこと。よくわからない。

 すぐとなりにあるホーチミン博物館へ。中に入り階段を上ると正面に彼の像。この像を見ればわかるとおりこの博物館は非常にお金がかかっている。しかも無駄に。内装は一貫した趣味の悪さだ。

 次に寺を覗き、歴史博物館へ。ホーチミン博物館でもそうだったがハン君の方がよほど熱心に見ている。基本的にこういう施設で入場料が必要なのは外国人だけ。壺や衣服などの工芸品。あまり面白くない。

 

 

 カフェ・ダーを飲みにホアンキエム湖北側へ。小さいが落ち着くお店だ。彼はトイレに行った。カフェ・ダーを飲んでいると、絵はがき売りの少年が来た。1セット(10枚入り)が650円。これは高い。彼は東京に鈴木という友達がいるという。はい、そうですか。カフェ・ダーをおごってくれと言うので、ごちそうする。日本人にしては英語がうまいねと言われるが、これは英語が話せるベトナム人と話すと確実に言われるので、社交辞令だろう。彼は、このあと家族を見に行かないかという。昨日ハン君というヤツの家に行ったばかりだというと彼はハン君を知っているという。ハン君のプロヴァンスに住んでいるという。23歳で、ハン君の親戚だともいう。ハン君の家の場所を書き込んだ地図を見せると彼の家もそこだという。ハン君が戻ってくる。ハン君とその絵はがき売りの少年がベトナム語で少し会話する。しばし沈黙。ハン君は今日はあまり機嫌がよくないようだ。ハン君にキミの親戚なのかと聞くと違うという。だがよく知っているそうだ。

 ホーチミンの絵はがきは欲しかったので350円に負けさせて買う。バイク置き場に戻ると11時半なのでバイクを返しに行こうとハン君に言う。すると彼は、私が友達と会ったあとどうするんだ、2時間後にまた待ち合わせようと言う。私は先程の絵はがき売りの少年の話を聞き、一挙に相対化され、英語が話せる若いベトナム人のある種の「たかり」のパターンを理解し始めていたし、ハン君の機嫌もあまりよくないし、トイレにしては明らかに長すぎるのも何かおかしいなと気になっていたのでそろそろ潮時かなと思い、バイクを返そうと主張する。

 ハン君は「ねばりの人」なので、まだバイクが必要な理由をつぶやくように述べるが1日8ドルはベトナムで使う金額の中で安くはないしデポジットの40ドルも返してもらいたいので、バイクはもう必要ないと強く言うとあきらめた様子。12時待ち合わせている私の友人たちに会わないかと誘うが、これから用事があるとさっきと矛盾したことを言い断られる。返したあとに歩いて彼がバイトをしている店へ。彼は地図代をもらっていないというので300円払う。やや興ざめモードに入る私は2日間の感謝の気持ちとして5万ドン札2枚を渡すと、学校の授業料として50ドル必要なんだという。それは払えないよというと、わかっているでももう1枚くれという。断ると、じゃああと2万5千くれという。2万5千ドンはたったの250円だがもちろん金額の問題ではない。ここまで来たら貰えるだけ貰っておこうというように感じたのでそれも断り、やや気まずく別れた。

 

 12時に近づいたのでパペットシアターへ。O氏、T氏と会い、ホアンキエム湖畔のレストランへ。他の客は皆白人。メニューもあり料理の写真も載っている。3人とも違うものを選んで、分け合う。安いBGIではなく、豪華にTigerビールをたのむ。彼女たちは昨日は列車でホイアンに行ってきたのだったが、体調も崩し街にはめぼしいところもなく少し退屈だったそうだ。

 今日は天気も良く、長い時間のんびりと談笑する。食事はごちそうしていただく。しばらく湖畔を散策したあと、彼女たちは帰国が迫っているのでホテルへ(T氏が持ってきていた「地球の歩き方」を借りる)。私はハノイでの初ショッピングへ。

 

 美術博物館もみたかったので、グエン・タイ・ホック通りNguyen Thai Hocを西の方へ。文廟を外から眺め、そばのクラフト・リンクというお店を覗く。このお店は非営利団体によって運営されており、少数民族のハンドメイドの品物を扱っている。なかなかセンスのいいお店だ。次にすぐ近くの美術博物館へ行くがもう閉まってた。残念。明日行くことにする。グエン・タイ・ホック通りには、あまりお店がなくまた歩いて戻るのもいやだったのでこの旅行で始めてシクロに乗る。しばらく値切るがなかなか頑固なので100円でホアンキエム湖の南まで。ガイドにある相場より若干(といっても2,30円)高い
かも。でもなかなかいいコースで戻ってくれた。

 

 

 

 

 

 何軒もお店を見て回る。お葬式を目撃。先頭は楽団で100mぐらいの行列だ。遺体を乗せた車の後ろには泣きじゃくっている家族がいた。

 

 日も暮れてきたのでお店や商店街を見つつホテルのある北の方へ。途中で手彫りのはんこ屋さんを見つける。50歳くらいの夫婦でやってるみたいだ。お店は狭く、そこでおじさんが彫っている。道沿いのウィンドウに彫り終えた商品が出してある。ひとついくらぐらいか聞いてみると、約1ドル。予想より高い。値切ろうとすると彫り途中のものを見せて、いかに面倒くさい作業かを訴える。面倒くさそうだ。それでも4個で3ドルに負けてもらう。

 ホテルの近くでフォー・ガー。どうもホーチミンよりもハノイの方がフォー類はおいしいらしいがどっちもおいしい。道ばたの露店で食べたのでおばちゃんとはほとんど言葉が通じないが、もうそれを楽しむ余裕がある。日本人だとわかると娘との結婚を勧められる。

 8時にホテルに戻る。ちょっと早いがこういう日があってもいい。荷物の整理をしたあと、「地球の歩き方」を隅から隅まで読む。すると先程のはんこ屋が載っていてビックリ。なるほど高いわけだ。これで私だけが知っているちょっといいお店ではなくなった。

 明日は、いよいよ帰国なのでノイ・バイ空港までどうやってたどり着こうか思案しつつ眠る。