「インターネット国試質問」

質問と回答のページです

97年4〜5月分


中枢性尿崩症の治療薬で、サイアザイド系利尿薬を用いる。と記載されてい るのですが、利尿剤なのにどうして尿量が減少するのか。チャートとyear ノートの説明 では納得できません。year ノートにはフィードバックにより云々と書いてあるのですが 、尿量が減少するのが主作用となるのならサイアザイド系は利尿剤と定義するのはおかし いのではないでしょうか。頭がパニックです。わかりやすく詳しく教えて下さい。

(97/ 4/23 23:23 愛知県 Bさん)

97/5/2

サイアザイド系利尿剤は中枢性尿崩症にもある程度効果があります。 しかし、中枢性尿崩症に対しては合成バゾプレシンで強力かつ持続性の抗利尿作用のあるデスモプレシン(DDAVP) が有効なので現在ではサイザイド系利尿剤はほとんど使われません。むしろ腎性尿崩症の抗利尿治療に利用されています。

ところで、なぜ利尿剤であるサイザイドが尿崩症に効果があるのかははっきりとは分かっていません。 したがってこの理由は国家試験には出題されません。

現在国際的に多くの研究者たちに広く認められてもっとも有力な考え方は サイアザイドのナトリウム利尿が重要な役割をしていて、ナトリウムの枯渇状態となって始めて サイアザイドが抗利尿効果を示すというものです。 ナトリウムが枯渇状態になると近位尿細管でNaClの再吸収が過剰になり、 遠位尿細管へ運ばれる尿量が減る。この結果抗利尿作用を示すという考え方です。 1981年に DeFronzo and Thierが提唱したものです。


前脊髄動脈症候群について「障害の初期には深部反射は減弱、あるいは消失するがしばらく時期を経て亢進する。 Babinski徴候も初期には認められぬこともあるが、暫くすると出現する。」と新臨床内科学p.1079右上に 書いてありました。

そこで質問です。上記の内容は脊髄が spinal shock になったと言うことから理解できるのですが、 それはともかく前角も障害されれば下位運動ニューロン障害となって深部反射(−)、Babinski(−) となるはずなのですが。なぜでしょうか?

(97/ 4/25 14:37 名古屋 A君)

97/4/28

詳しく、しっかりと勉強をされた学生さんからしか出ないレベルの高い質問で感心しています。

「前脊髄動脈症候群」はご承知のとおり脊髄の特定の範囲の血管障害により、 そのレベルの横断面上、腹側の2/3が障害を受けるものです。そのため障害レベルにおおよそ一致した 高さに突然の疼痛が起こり、あっという間に(十数秒もたたないうちに) 対麻痺や四肢麻痺を生じます。それと同時に障害レベル以下で温度覚および痛覚が消失します。 触覚の一部も障害されているはずですが触覚の繊維の大部分は後索を上行しますので温痛覚の脱失に 比較すると軽度であって、国試によく出る「解離性感覚障害」の形を取ります。 当然のこと膀胱直腸障害も出て、深部感覚は正常に保たれますのでこの際合わせて覚えておきましょう。

この際病変レベル以下の麻痺は弛緩性で、当初病変部以下の腱反射は消失し、 Babinski徴候も初期には認められません。 錐体路障害が急にきた場合当初こういうことがあり、 このことをA君も言われているように「spinal shock」と呼びます。 腱反射やBabinski徴候などの錐体路障害の症状はしばらくしてから出てきます。 胸髄以上の障害の場合には、これも時折出題される「腹壁反射」は消失します。

「前角も障害されれば下位運動ニューロン障害となって」との質問ですが前角の障害はあくまでも 障害のレベルだけであってそれよりも下のレベルの前角までは障害されないのです。 例えば頚髄の病変なら胸髄や腰髄の前角は障害を受けていませんので深部反射やBabinski徴候は出現します。 spinal shockの時期を過ぎれば深部反射もBabinski徴候もしっかりと出るようになります。



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