(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)

 Chapter 44 気持ちも新たに,新年度(未定稿)

44−1 新しい委嘱状


 2006年4月。「市民スタッフ」制度が発足して,初めての年度替り。手元に新しい嘱託状が郵送されてきた。今年度はスタッフの新規募集は行わないとのこと。一応,継続意向確認があったが,ほぼ全員が継続した模様。丸1年近く市民スタッフの動きを見てきたが,次第に,動いている人と動いていない人の差が,はっきりしてきたようだ。現状では市民スタッフの活躍の場は,観察会と室内イベントが主体で,なかなか,それ以上の活動に手を出せていないのも事実だ。人を受け入れて手伝ってもらうには,まず,受け入れ体制の整備が必要。とりあえず,市民の目に触れやすいイベント事業から整備し,運用しながら市民スタッフを育てると言う手法を取ってきたわけだが,今後は人目に触れにくい,調査や資料整理など,地道な活動にも手を広げて,さまざまな興味を持ったスタッフを受け入れるような展開も必要かと思う。ただ,受け入れる側である博物館スタッフのほうに余裕が無いのも,ひとつのネックになっている。「体制作り」には,時間もパワーも必要なのだ。

 今年度の目標として,既に市民スタッフによる事業展開の進んでいる観察会と室内イベントについては,市民スタッフの中から,イベント運営を牽引できる人を育てることを考えておきたい。何人か,リーダーシップの取れる人が揃ったら,それがまた,新たなスタッフを勧誘する力にもなると思う。

44−2 人数が読めない


 3月の「てがたん」の参加者は38人,4月は53人。「てがたん」の参加者が初めて50人を突破した。この盛況の原因は,2月の,手賀の丘少年自然の家との共催観察会に端を発する。このときに一緒に観察案内をした,手賀の丘の施設ボランティアの人たちが,「鳥博スタイル」の観察案内を気に入ってくれて,芋づる式に参加者が増えて行ったのだ。
 その後5月は雨天中止となり,6月にはいつもの参加人数に戻っていたが,大人数を相手にした経験の無いスタッフも居たので,大変だったと思う。予約不要の観察会は,こういうデコボコは,どうしても起こる。もちろん,団体やグループでの参加を規制するつもりは無いが……10人程度の小人数のグループなら,いきなり参加しても問題は無い。大人数での参加は,「てがたん」に限らず,どこの観察会でも,事前相談があることが望ましい。4月の「てがたん」では,30人で参加したいとの連絡が事前にあったので,スタッフの数を増やしたり,グループ分けや観察テーマの設定などを調整する余裕があった。

 グループで観察会に参加する場合,グループを固めたまま,担当者をつけてしまう方法と,グループをばらばらにしてもらって,こちらの枠組みに好きなように入ってもらう方法がある。子供会などのグループが来た場合は前者を選ぶことが多く,大人のグループの場合はバラけてもらうことが多い。こうした,人の割り振りに関しても,事前に相談があれば,より希望に沿ったことが出来たり,こちらからお勧めのプランを提案することも出来る。観察内容を調整することも可能だ。本当に大人数であった場合は,一般向けイベントとは別に観察案内を組むこともありうる。
 その典型例が,学校の校外学習での利用だ。

 定例の「てがたん」は,博物館の「常設展示」の野外版みたいなものだ。お客さんの年齢層や人数やニーズに応じて展示案内の説明を変えるように,グループ,団体で「てがたん」を利用する場合も,事前に相談を受ければ,いろいろと柔軟に対応することが出来る。

44−3 フェイスリフト


 博物館では,5月に,イベントに関わっているスタッフに,人事異動が少々。産休,育休補助のため,市民スタッフの岡さんを嘱託として採用したのだ。これで岡さんは,「手伝い」の立場から「本業」にシフト。
 博物館も役所である以上,異動や人事交流は避けて通れない。どんなに優れたチーム編成が出来たとしても,何年も同じ顔ぶれでチームを組めるわけではない。常時,人が入れ替わることを想定しながら,事業の継承,発展を考えなければならない。もし,10年後にも市民スタッフ制度が残っていたら,博物館のスタッフよりも,市民スタッフのほうが,イベント担当キャリアが長くなったりするかも知れない。そうなると,学芸員も少々やりにくいかも知れないが……。

 市民スタッフの下見会&勉強会も,私が提案した分の「基礎講座」的なものが一段落した。次に何をやるべきなのか?……それについては,私があまり手を出し続けてはいけないと思っていたので,提案を見送ることにした。私がスタッフから抜けるようなことがあっても,市民スタッフシステムが問題なく継続するようでなくてはいけない,と言うのが,大きな理由だ。
 しかし,それ以前の問題として,下見&勉強会に来る人が少なくなってしまったのが気がかりだ。5,6人しか集まっていない。それでも,内容的には,どんどん活発になっている。ぼちぼち,私の喋る場面も無くなりそうなほどだ。下見の時に花を撮影して,翌週の本番の時に,画像付きチェックリストにして配るという試みも実現した。いろいろな人のいろいろなアイデアが具現化するのは良いことだ。「てがたん」は博物館の観察会事業における「アンテナショップ」だと私は考えている。いろいろ試行してみるのも良い。不幸にしてあまり上手く行かなかったとしても,他のスタッフがフォローしてくれるので,かなり冒険した企画も投入できる。いろいろなことを試し,経験することで,観察会も,スタッフも,大きく育ってゆく。

 いつも同じ場所でやっているとマンネリが進む,とも言うが,私は,使い慣れたフィールドだからこそ,野心的な企画を投入するだけの余裕が生まれるのだと考える。また,経験的に,同じ場所,同じ季節に観察しても,それは決して,毎年同じではない。去年と違う新しい発見が,必ず何かある。そうやって,地域のフィールドを深く掘り下げてゆくような観察案内も,「地域博物館」である鳥の博物館の観察会でなければ出来ない,大切なことだ。

 それにしても,もうちょっと,スタッフの溜まり場になるような場所,時間が欲しい。さらに,市民スタッフ内でイベントを組むとか,内部的な活性策を考えて欲しい。他の博物館の事例を見に行くとか,他の観察会に参加して,自然解説の技術を学ぶとか,そんなことをやってもいいかな,と思う。

(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)