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 Chapter 43 「季節」を感じる観察会を作れ!(未定稿)

43−1 既に「定番」かな?


 今年度最後のアウトドアイベントは,「谷津田の春をさがそう」……岡発戸,都部の谷津田を歩く,「春探し」の観察会だ。この観察会も3回目。これで,鳥の博物館の観察会事業も丸3年経過したことになる。年度当初に,おおよその年間イベント計画を立てているのだが,3月の観察会は,ほぼ1年先のこととなり,なかなか具体的な構想が組めず,つい,前年踏襲で観察会の枠組みだけ決めてしまう傾向があるのだが,そんな影響もあってか,3年連続,同じ場所,同じテーマである。それでも色褪せないのは,やはりテーマ設定が良かったのだろう。この時期になると,毎年のことなのに,やっぱり春の花を探しに行きたくなったり,おたまじゃくしを見たり,ウグイスの「ホーホケキョ」が聞きたくなったりするのだから,春の始まりを体感する観察会は,捨てがたいものがある。
 もちろん,完全な前年踏襲ではない。ちゃんと内容については,少しずつ変えている。
 1年目は,とにかく「春」を感じるものを探してもらった。
 2年目は,「花いろマップ」と言うイベントを導入した(Chapter 27参照)。
 そして今年は……

いろ生きものビンゴ

 A4判の大き目のワークシートにビンゴのマスを書いたものだ。
 ただ,マス目がちょっと変わっている。
 縦の列は,「くさばな」「むし」「木」「とり」,
 横の列に,「しろ/くろ」「きいろ」「あお/みどり」「ピンク/むらさき/ちゃいろ」
……と言うふうに設定し,それぞれの交点のマスに,観察したものを書き込んでゆく。
 タンポポを見つけたら,「くさばな」×「きいろ」のマスに書き,コサギを見たら,「とり」×「しろ/くろ」のマスに書き込む。ビンゴを完成させる楽しみもあるが,たくさん書き込まれるマスと,そうでもないマスが出てくる点が狙いなのだ。一目で,茶色い鳥が多いとか,白や黄色の花が多かったとか,生きものと色の関係が見渡せるのである。ゲームとして楽しんでもいいし,後で見返して,ふーん,なるほどと思うのも良し。使い方も自由だ。各自の興味の範囲や興味レベルに合わせた使い方が出来るところがミソ。

43−2 下見は土壇場に


 下見は大事だ,と言いながら,しばしば後手に回ってしまうのが,下見会の日程調整。なまじ,近所での開催で,しかも,昨年,一昨年と同じ時期に開催経験のある場所であるために,どうしても出遅れる。スタッフには岡発戸での観察会未経験の人もいるのだから,ここで手を抜いてはいけないのだが。
 結局,下見の日程は,11日(土),定例探鳥会(てがたん)を午前中に終わらせた後。
 お弁当持参で「てがたん」を担当し,終わったらすぐにお昼を食べて,午後1番に岡発戸へ。結局,下見部隊は総勢4名。ちょっと寂しい。

 元々が生き物好き集団である。フィールドに出れば,あれこれと見つけ出しては,話題に事欠かない。「教材」の使い心地を試しつつ,あちこちで写真を撮りつつ,ざっと打ち合わせをして解散。こんな大雑把で良かったっけ。これもまぁ,ある種の「慣れ」だと思う。経験的に,不安な要素が多いときほど,真剣に下見をする。生き物が把握し切れていないとき,参加者が集まりすぎたとき,極端に不人気なとき,スタッフ間の意思疎通が今ひとつのとき……少しでも不安材料を減らすためにも,下見に力が入る。下見の手際が良くなるのは,「慣れ」でもあり「自信」でもあるようだ。

 実は,個人的には,本番当日(21日)午後に用があり,観察会は途中で抜け出さなくてはいけない状況が確定している。いつもよりも申し送り事項が多くなるが,メイン担当から外してもらっているので,個人的には気楽な面もある。

43−3 平均年齢上昇中


 開催日は,ちょうど春のお彼岸(春分の日の開催だから,当然なのだが…)。お墓参りで道路が混雑する特異日でもある。こんな日にわざわざ観察会に参加することを選ぶ人がどのくらい居るのか,少し心配にもなったが,参加予約のほうも順調に入り,満員となった。

 観察会当日。天気も上々。
 下見や打ち合わせの時はまったく動かず,当日いきなり現れる市民スタッフもちらほら。打ち合わせ無しでは,参加者とあまり変わらない。もったいないことだ。ちょっとでも事前の意思疎通が図られていると,ぐっと強力な戦力になるんだけどなぁ……。下見の面白さや大切さを理解してもらうのには,もう少し時間がかかりそうだ。

 この,春の谷津田の観察会は,年を追うごとに平均年齢が上がってきているようだ。花の観察を前面に出すと,やはり参加者の年齢層が上がりやすいような気がする。子どもは動くもののほうが良い。実際には,アカガエルの卵やオタマジャクシが,この観察会の中心的話題になっても良いのだが,あまりアピールすると,オタマジャクシを持って行かれるという問題もあるので,「メインの観察対象」なのに「隠し玉」的な扱いとなっている。この辺の匙加減は難しい。
 まぁ,ともかく,参加者の平均年齢が高い時ほど,子ども達を飽きさせないように気をつけて進めないといけない。

43−4 待ちぼうけ


 観察のほうは,天気に助けられ,花の種類も多く,まだ上手に「ホーホケキョ」と鳴けないウグイスの声が聞こえたりして,春の訪れを感じるには十分なものが揃っている。今年はコブシの花がゼロだったのには驚いた。昨年,たくさん花をつけたいたのに。柿の実みたいに,良く花や実のつく年と,そうでない年が交互に来るようだ。
 一方,アカガエルの卵塊の数は例年に無く多い。今年は確実に3桁ある。10個ぐらいしかなかった年もあったのだから,たいした復活振りだ。
 毎年観察していても,決して「去年と同じ春」には出会えない。そこが,自然観察の面白さであり,この変化に気づくことも大事なのだ。

 鳥や花が比較的良く見つかるので,野鳥ファンの年配者を中心に,観察のペースが遅くなってくる。子ども達はどんどん先行。あっという間に列が伸びてきた。
 観察コースは谷津田の一回りなので,出発点の広場に戻れば良いのだが,どこが先頭でどこが最後尾か,見渡せないほど差が開いてしまった。しっかり観察しようとすると,時間がかかる。その一方,興味のあるもの,無いものの差も出てくるので,鳥をじっくり見たい人が後ろのほうに固まってきた。「鳥ばかり追っていると子どもが飽きる」と言う経験則の通りになってしまった。こんなとき,下見に参加していなかったスタッフの人が,事情を理解していてくれたら,もう少し調整も効くのだけれど,鳥の好きなスタッフたちは後ろのほうに固まって歩いているし……。

 途中,私は時間切れで,アカガエルの卵を見た後,早足で帰路についた。あらかじめ参加者には言ってあるので,挨拶を交わしながら,どんどん参加者を追い越してゆく……と,ゴール地点の広場に,既に到着している人もいた。予定より30分以上早い到着だ。子どもが飽きてしまったか?スタッフの意思疎通が足りないか?
 念のため,後方を歩いていた時田さんに電話を入れてみる……が,出ない。うーむ。
 観察案内中の携帯電話は,決して気持ちの良いものではないが,いざと言う時の連絡用には重宝なのだ。昔は連絡用トランシーバーを先頭と最後尾に持たせたりしたが,今は携帯電話の番号さえ把握しておけば良い……はずなのだが,電話に出てくれなければ,意味が無い。
 仕方が無いので,先頭に居る人に後ろの事情を少々説明して,了解してもらって,家へ急いだ。これからスーツに着替えて,午後は学会なのだ。

 本当ならこんな時は,無理して中途半端に観察案内に手を出したりしてはいけないのだが,下見の段階で,担当が私を含めて4人しか確定していなかったので,やむなく出ることにしたのだが,参加者に迷惑をかけていないか,心配になる。一応,サブ担当に下げてもらってはいたが……。

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