(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)

 Chapter 37 去年とひと味違う「秋の虫観察会」(未定稿)

37−1 「虫いじり観察会」の本命


 「あびこ自然観察隊」は,我孫子の自然の「旬」を紹介する単発イベントである。
 秋の「旬」な自然観察と言えば,バッタ,コオロギ,キリギリス,赤トンボ……虫が観察テーマになることが,結構多い。この時期,まだまだ主役は「虫」なのである。9月の「鳴く虫観察会」が,虫の声を楽しむ,静かな観察会だったが,今度は一転して,賑やかに遊ぶ観察会。

 題して「秋の虫と遊ぼう」。

 目的はズバリ,「虫いじり」。
 最近では,昆虫採集はメジャーな遊びではなくなり,虫に触れない子も少なくない。これには親の影響も大きい。親が虫を嫌がったり,触れなかったりすると,子供も同じように虫を扱うようになり,虫に対して,「怖い」「汚い」「気持ち悪い」と感じる子も多くなる。
 「虫いじり」の観察会は,子どもと虫の距離を縮める目的もあるが,隠れた目的として,親の「虫嫌い」対策も考えている。今年も,その秘策をひとつ,投入する。

 今年は開催がちょっと遅くなってしまい,10月1日(土)の開催。予約受付は9月16日から。この日に,我孫子市の広報が出るのだ。
 予約も順調に進み,1週間ほどで定員オーバー。なかなかの人気だ。


37−2 三部構成


 今回の観察会の大まかな流れを紹介しよう。

 まず,朝9時半スタートで,まずは,ひたすらバッタ取り,コオロギ取り。子ども達の人数分以上に,ペットボトルで作った,簡易捕虫ビンを用意した。これを配って,博物館駐車場脇の土手と休耕田で,ひたすら虫取り。「見たことのない虫が捕まったら,教えてねー」と声をかけておき,案内役も虫取りをしたり,虫の探し方,取り方を教えたり,虫の名前を教えたり,ほとんど参加者と一緒の行動。
 今年は開催時期が遅かったので,ショウリョウバッタやトノサマバッタよりも,コバネイナゴが目立つ。ウマオイはゼロ。ツユムシの仲間もほとんど捕まらない。去年はほとんど見つからなかった,成虫越冬するクビキリギスやツチイナゴの姿も。休耕田には,産卵直前のエンマコオロギの姿があったり,昼間でもエンマコオロギの鳴く季節になっている。休耕田に入った子が,タンボコオロギの幼虫が捕まえた。このコオロギは幼虫で越冬する種類だから,このままの姿で冬を過ごすのだろう。
 季節の進みは正直だ。毎年,同じような企画をしていても,ちょっとした季節の違いを実感する。こういう感覚は,毎年同じ観察会を担当するか,リピーターにならないと分からないだろうな。もちろん,初めて参加した人でも,バッタやコオロギに触れて遊び,見上げれば赤トンボが飛んでいる,この季節感は,しっかり体感出来ると思う。自然観察をしていると,季節の動きを敏感に感じ取れるようになる。

 博物館の周りにどんな虫がいるのか,ひととおり分かったところで,次のメニューに移る。子ども達が飽きる前,「もうちょっと遊びたいのになー」と言う位が,切り替え時だ。
 次のメニューは,「バッタ釣り」。昔からある遊びだが,観察会参加者には初体験の遊びだ。「バッタ釣り」とは,いわば,バッタのルアー釣りだ。交尾時期を迎えたバッタのオスは,メスの体と同じくらいの大きさの動くものに,闇雲に飛びついてしまう。この習性を利用し,バッタを釣ってみようと言うわけだ。この遊びを観察会に導入するアイデアは,去年から出していた。去年,斉藤さんにバッタルアーを試作して,実験してもらっていたので,目処は立っていたのだが,今回,新たに市民スタッフに参加した岡さんが,バッタ釣りの指導経験があるとのことで,話が一気に具体化した。道具の準備も岡さんにお願いすることにした。いろいろな色,形の木片を糸で吊るし,棒の先につけたものを配り,バッタ釣りの体験をしてもらう。
 もう,バッタの交尾,繁殖の時期は終わりつつある。うまく釣れないかも知れない,と心配したが,10分ぐらいすると,「釣れた〜!」と言う声が。第1号は,小学生。釣れたのはトノサマバッタ(このバッタ釣りで釣れるのは,オスだけ。その理由は自分で考えてみてください。)。その後,あちこちから「釣れたよ!」の声が上がり,半分以上の人が,バッタを釣ることに成功した。良く見ると,結構,親のほうが夢中になっている。虫をじかに触ることに抵抗のある人でも,バッタ釣りなら,「十分に虫とのふれあい」を楽しめる。そして,バッタと駆け引きをしながら,バッタの習性を体感できるのがいい。
 来年は「ルアー作り」の段階もイベント化して,自分の作ったルアーでバッタ釣りをするようなイベントを組んだらどうだろうか……観察会の中から,早速,「次の計画」が動き出した。

 さて,最後のメニューは,赤トンボと,成虫で越冬する蝶にスポットを当てる。この日に観察できたトンボは5種類。うち3種類が赤トンボの仲間。ひと目でオスメスを見分けるポイントを紹介したり,トンボを素手で捕まえるワザを披露したり。
 成虫越冬する蝶は,ヒメアカタテハ,ウラギンシジミを観察。翅を閉じると目立たなくなるのが特徴的。駐車場脇の土手には,ヒメアカタテハの幼虫も,たくさん見つかった。かれらの食草はヨモギ。身近な場所で,たくさんの蝶が育つことも,ちょっとした発見だ。

37−3 親子で遊べる観察会を,もっと!


 今回の観察会の参加者は,14家族40人。このうち,小学生以下の子は23人。ほとんどが親子,家族での参加だ。
 このような参加者層は,当初から狙っていたもので,まさに,狙い通りの人たちが集まっている。もちろん,観察会の内容によっては,大人の参加比率の高いものもあるが,それはそれで,観察会の役割を十分に果たしているし,他の主催団体の観察会に比べれば,子どもの参加比率は非常に高い。

 なぜ,「親子での参加」にこだわるのか。
 ひとつには,博物館の教育機関としての機能を果たした結果であるとも言える。観察会事業の計画段階から,子ども達が遊べることを基準にしたプログラム作りと,親も引き込む魅力を与えることに注力してきたわけだし…。
 また,この年代が,観察会参加者の「穴」であったのも事実。御年配の方には申し訳ない話だが,子どもが独立して,自分のための時間の出来た年代は,勧誘しなくても観察会に参加してくださる。小さい子を持つ世代は,子どもに手間がかかると言うだけで,既に観察会に参加しにくい条件が揃っているのだから,その部分の敷居を低くするのが,順当な策と言える。そのためにも,親子で遊べる自然観察イベントでなければいけない,と言うべきなのかも知れない。
 そして,これはまだ実現していない構想なのだが,子ども達が遊べる場を作ったら,その次は,子ども達と遊んでくれる,自然観察会の担い手を作ること。2005年度には「市民スタッフ」制度により,その一部が実現しつつあるが,私は「次の一手」として,幼児教育,学校教育,理科教育などを志す学生などの,若い世代の参加を考えている。具体的なものはまだ無いが,教員養成課程を持つ大学などと連携して,野外実習の場として,観察会や体験学習室イベントを学生に体験してもらったり,観察会の常連の子を,「ジュニアリーダー」として育てるようなことも考えている。どんなものがどんな形で実現するか,今のところまったく未知数ではあるが,観察会の「担い手」の年齢層が高齢に偏らないような方向性を,今から考えておいたほうが良いと思う。私も,そう遠くないうちに,「高齢者」になってしまい,小学生とのギャップを埋められなくなるときが来るかも知れない。そうなる前に,子ども達と「自然遊び」を楽しんでくれる「お兄さん」「お姉さん」が増えてくれることを願う。

 さまざまな年代の人たちが出入りしてこそ,博物館の教育機関としての機能が全うされる。特定の年代に偏るような運営方法は,好ましいとは思わない。その,博物館利用者の年代の拡大策の第一段階が,子どもの参加,そして,その親世代の参加だと言う位置付けだ。

(→「博物館で遊ぼう!」の先頭へ)
(→前のページへ)
(→次のページへ)
(→Home)