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 Chapter 27 久しぶりの単発イベント(未定稿)

27−1 春はここから


 2005年3月。久しぶりに,鳥の博物館単独主催で,単発の観察会の開催にこぎつけた。

 この観察会はもちろん,2004年度の「年間計画」に出してあったものなのだが,うっかり,1月下旬までまったく手つかずの状態で放置されてしまった。1月20日の「鳥インフルエンザ講座」が一段落したときに,ふと,時田さんに,「3月の観察会は……」と切り出したら,やっぱり,すっかり忘れていた……(冷汗)。実は私も,時田さんが動かないので,休止かな?とも思ったのだが,既に教育委員会の「あびこ楽校」のスケジュールに,3月に観察会をすることが掲載されていたりしたので,これは逃げられないと思い,時田さんに声を掛けたのだった。慌てて計画表を確認し,大急ぎで企画会議。

#「あびこ楽校」とは,我孫子市のさまざまな部署で開催している生涯学習対応の市民向け講座を統括して呼ぶ,「ブランド名」のようなもので,鳥の博物館の観察会やセミナーなどのイベントも,すべて「あびこ楽校」のイベントとして登録されている。

 忘れかけていたからと言っても,慌てることは無い。昨年も実施した,岡発戸・都部エリアの谷津田を舞台に,早春の花を探したりしながら,春を体感しようと言う企画なので,気持ちに十分な余裕はある。具体的な開催日と,キャッチコピーを兼ねたサブタイトルと,目玉となる観察ネタを相談し,後は一気に準備作業を進めるだけ。だんだんイベント作りの流れがスムーズになってきた。

 ……で,決まったタイトルが,

  「谷津田の春を見つけよう」

 昨年とあまり変わらないのは御愛嬌。中身はちゃんと新企画を投入する。
 今年は,「花いろマップ」と言う企画だ。
 現地の地図をモノクロ拡大コピーして,白地図パネルを作る。そこに,丸いインデックスシールをたくさん用意して,見つけた花の名前を書いて,貼ってゆく。インデックスシールは花の色に合わせて,水色,白,黄色,ピンク,紫,赤を用意し,どんな色の花がどこに咲いていたのか,一目瞭然となる仕組みだ。地図とシールは斉藤さんが持ち歩いて,「情報集積所」となる。花探しは,子ども達にやってもらう。

 なお,この「花いろマップ」は,「いろ」を平仮名にしてある。「色」の意味と,「いろいろな花が見つかるよ」と言う意味を重ねている。

27−2 なんだか人が多いぞ


 春分の日……3月21日。朝9時に東我孫子駅前に,受付場所を設置。今回も人気が高く,定員をややオーバーしたところで予約を打ち切っている。ただ,学芸員の機転で,「定員を超えているので,予約は受けられませんが,当日,観察会の集団の後ろにくっついて歩けば,ひととおりの自然解説は聞けます」と言う,事実上の黙認をしていたので,予約外の参加者がちらほら。予約者との差別化もしなくては,がんばって予約した人には申し訳ないので,パンフレットや貸し出し双眼鏡は,予約者のみの待遇。

 出発時刻の9:30が近づくにつれ,やたらと人が増えてきた。予約定員は30人。実質30数名の予約+予約の取れなかった人で「後ろからでも良ければ」と案内した人が数名……のはずなのに,何故かもっと多い。無予約の「飛び込み」参加者が少なからず来ているのだった。この「定員30人」は,観察コースの道の狭さから導き出した「快適人数」なので,これだけ多いと,かなり苦しい。それに,誰が本当の「参加者」なのか,分からなくなってしまう。スタッフを除いて,40数名までは数えたが,なんだか,収拾がつかない予感。

27−3 大人数でゾロゾロと…


 ともかく,来てしまった人を追い返すことも出来ないので,ゾロゾロと谷津田の入り口まで移動。まぁ,今回の観察ネタなら,多少,人数が膨れても大丈夫だと思うが,道の狭さだけは変えようも無いので,スタッフをフルに使って,参加者をばらばらにして動かすことに。入り口の広場で,挨拶と説明をして,「花いろマップ」のキーステーションになる斉藤さんを,長い行列の真ん中あたりに配置して,スタート。最初から大声での説明なので,あっという間に声がかれそうだ。

27−4 マップでいろいろ発見


 観察に入ってしまえば,いつものペースだ。つくづく,自然解説は「場数」であると思う。頭でっかちになって,机の上で立てた企画が,現場で上手く行かなかった,なんてことは,いくらでもある。そこで状況を見極めて即座に軌道修正が出来るようになったり,あるいは企画の段階から,「これでイケる」と自信が持てるようになるのも,観察会の経験数による部分が大きい。……もっとも,同じ内容のものをずっと繰り返しているだけの観察会では,そんなに経験値が上がらない。マンネリは,参加する側も退屈だし,担当する側も成長しないのだ。積極的に「観察ネタ」をひねり出し,刺激的な観察会を作り続けてゆくことが出来れば,たとえ同じフィールドで行われる「定例イベント」であっても,メリハリが利くし,何より,担当していて面白い。

 さて,今回のメインの「観察ネタ」である「花いろマップ」。花が見つかるたびに,子ども達がせわしなく動いている。単純に花を見つけて名前を教えるだけの観察会より,遥かに動きがいい。斉藤さんは大忙しだ。私は……と言えば,花探しは子ども達に大部分任せて,珍しい花とか環境指標になりそうな花に重点を置いて解説を加え,あとはひたすら虫探し。時田さんの様子を見たら,鳥を探しつつも,蝶について熱く語っている。得意分野の微妙に違うところが,自然解説の個性にそのまま反映されるので,面白い。

 途中,陽だまりで蝶をのんびり眺めたり,アカガエルのおたまじゃくしを観察したり,春らしさをあちこちで感じながら,出発点の広場へ。

 出来上がった「花いろマップ」は,谷戸の北側と南側で,大きく違っていた。北側の斜面は日当たりの良い南向きになるので,タンポポやオオジシバリなどの黄色い花が多く,日当たりの悪い南側は,寒いうちから花をつけている,オオイヌノフグリ,タネツケバナ,ホトケノザなどが目立っていた。

 私が虫をまめにチェックしていたのには,理由がある。
 この「花いろマップ」に,見つけた虫の情報を乗せていくと……ハナアブやモンシロチョウの見つかった場所と,黄色い花の咲いていた場所が,見事に重なった。ナナホシテントウも,陽だまりが好き。こうして,花と虫と地形や日当たりの関係が,見えてきた。

 ちょっとした工夫で,自然の見せ方も,いろいろ演出できる。何を見せたいのか,何を伝えたいのか,そして,上手く伝えるためには,どうすれば良いのか……こうした観察の工夫や視点の転換は,いつも頭のどこかで考えておいて,自然観察会をマンネリ化させない努力は必要だと思う。それに,時代と共に,生き物の研究も進むし,環境問題に対する考え方も変わる。そうしたトレンドを逃さず,観察会にどんどん取り込んでゆくためにも,「観察ネタ」について,いろいろと研究して,見せ方の工夫を考えておくと良いと思う。

 観察会は,いつも同じではない。着実に進化している。
 歩みを止めれば,廃れてしまう。

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