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 Chapter 8 館内でも遊ぼう(未定稿)

8−1 体験学習室


 鳥の博物館には,体験学習室がある。2001年に設置したものだが,室内には,ちょっとした,実験,観察,工作などが出来る道具が揃っていて,「さわれる剥製」もある。鳥の羽などを顕微鏡で観察したり,鳥の声を聞くことの出来る図鑑があったり,鳥の折り紙やぬり絵など,小さい子向きのアイテムもある。さわって,調べて,遊ぶことの出来る部屋なのだ。休日になると,子どもたちが何人も出入りしていて,友の会のボランティアやフロアスタッフが応対したりしていて,賑やかだ。
 でも,この部屋にはちょっと不満に思っていることもあった。せっかくの遊び場なのに,遊べるイベントが無い。1990年代後半ぐらいから,体験型の科学館は,全国あちこちに出来た。既存の科学館の一部を体験型に改装した例も多い。鳥の博物館の体験学習室も,この流れに沿ったものだが,この施設を活用した,小イベントを,前からやりたいと思っていたのだ。理想は科学技術館のワークショップ。科学技術館では,1つのフロアにテーマの違う複数のワークショップ……オープンな形の実験室があり,ここで時間を区切って,あちこちのワークショップが交代で切れ目無く科学実験イベントを提供しているのだ。まぁ,鳥の博物館には科学技術館のような大掛かりな設備は無いし,体験学習室と言っても,20人も入れば一杯になってしまうような狭い空間なのだが,この場所で,土日に,1回30分以内で完結する,科学工作教室とか実験教室などが出来ないだろうか,と考えていた。
 野外での観察会事業を始める前,体験学習室が出来た当初から,「あそこでイベントやってくださいよ〜」と時田さんにお願いしていたのだが,人手不足もあり,なかなか話が進まなかったのだが,2003年秋には「フロアスタッフと遊ぼう」と題して,ヨウシュヤマゴボウの実で絵手紙を書くイベントが実現した。ちょうど企画展で鳥の目の機能と実の関係などが話題として取り上げられていた時期で,企画展連動の小イベントとして行われていた。すばらしい。こう言うのが欲しかったんだ。
 体験学習室イベントは,ちょっとした工夫とアイデアの,ささやかなものでも,展示室オンリーの博物館とは違う付加価値を与えてくれることも分かった。リピーターが増えるのだ。野外での観察会のときもそうだったが,展示とイベントの相乗効果がある。展示のついでにイベントを楽しむ。イベントを目的に訪れ,イベントが終わったら展示を見て行く。どちらもアリなのである。

 ここまでメリットが分かったのだから,もう絶対,体験学習室イベントを増やすしかないでしょ。
 2003年の冬休み時期は,子連れであちこちの科学館,博物館のイベントめぐりをすることに決定。もちろん,子ども受けするネタ探しが目的。最初のうちは,他所の真似でもいいから,レパートリーを増やしておかなくては。
 子どもを遊ばせながら,親は必死にネタを盗もうと目を光らせる。子どもの世話をしているんだか,子どもに付き合ってもらっているんだか……。

8−2 まずは春休みイベント


 やはり,狙い目は学校の長期休暇の時期。そこで,春休みを利用して,室内イベントをするべく,博物館スタッフと話し合った。とにかく,来館した子どもたちが,気軽に参加して遊べる内容と所要時間で設定する。演示する側の労力も考慮し,午前1回,午後1回で30分ずつ,と言う設定にした。
 内容は,コストもあまりかけられないので,簡単なもので,ちょっとサイエンスを感じてもらえるもの。1人1回15分ぐらいで終わるネタを2回やれば,おおよそ10人×2回として,30分で20人,1日で40人が遊べる。
 あれこれアイデアを出して絞り込んだ結果,2004年春休みイベントは,発泡スチロール薄板を使った,室内で飛ばして遊べる「鳥グライダー」の工作と,曲がるストロー1本と紙コップ1個で3通りの音の出る原理の違う「鳥笛」の工作の2本立てに決定。
 春の週末の,ちょっとしたイベントとなった。
 子どもたちや親子連れが,気軽に参加してくれる……この雰囲気,博物館のこれまでのイメージを変えてくれることを期待したい。

8−3 次は夏休み?

 体験学習室イベントも,順調に動き出した。これを目当てに来館する子も増えた。
 やはり,剥製展示やジオラマ展示が主体の博物館では,「動き」のあるイベント,見学者自身が動いて,能動的に取り組んで遊ぶイベントを投入して,メリハリをつけたほうが効果的だ。「次の一手」は,やはり夏休み。夏までに,いろいろなネタを検討して,フロア担当のスタッフ+ボランティアのお手伝い,と言う戦力で,夏休み時期,子ども達にリピーターになってもらおうと言う計画だ。

 その後,この体験学習室イベントは,7,8月の土日に,ネタの種類を増やし,6通りのネタを日替わりでローテーションを組むことで,実施された。このパターンの体験学習室イベントは,その後も,ネタを増やしたり入れ替えたりしながら,室内の定番イベントとして,続けられている。

 将来的には,学校の休み時期以外の土日にも,体験学習室イベントを投入し,休みの日には必ず何かをやっている,と言う形にしてゆきたいし,この手の実験,工作ネタがたくさん提供できるようになれば,学校の校外学習や見学受け入れの際にも,使うことが出来る。さらに,同じフロアで行われる「企画展」と連動した,体験型ワークショップなども,やってみたいし……構想だけは,どんどん膨らむ。
 もちろん,実現のためには,あれこれと調整,試行錯誤を強いられるのだが,野外イベントが快調に進んでいる今なら,いろいろと実行する勢いがあるように思う。あれこれ立ち上げて,労力がかかり過ぎ足り,人が集まらなかったりしてダメだったら,やめれば良いのだし,とりあえずお金のかからないところから,どんどん手を動かしてみるのも,良いのではないだろうか。今なら多分,かなりの確率で成功すると思う。


 いずれにしても,体験学習室を基地に,館内にも子どもたちが遊びながら学ぶ場所が広がってきたことは確かだ。館内展示と館外の自然観察会との距離が,これで少し縮まったような気もする。

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