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 Chapter 5 秋を見る,秋を伝える(未定稿)

5−1 里山の秋


 我孫子には,手賀沼と言う,自然観察に適したフィールドがある。
 だが,我孫子の自然の楽しみは,それだけではない。
 手賀沼と利根川の間に広がる台地。台地を削って流れる水が作った斜面林と谷戸。その,谷戸に広がる里山の風景がたっぷり残っている場所が,東我孫子駅から歩いてすぐの場所にある。
 それが,「岡発戸・都部の谷戸」

 我孫子には難読地名が多い。岡発戸(おかほっと),都部(いちぶ)も,かなり読みづらい。こう言う難解な地名があること自体,この土地に人が住んでいた歴史の長さを物語るものだ。「○○台」「○○が丘」みたいな,新しい住宅地の名前とは,ひと味もふた味も違う土地なのだ。

 さて,今回の観察テーマは,「里山の秋」。前2回とは違い,観察対象を特定しない。観察対象は何でもOKだ。この場所の自然環境を眺めて,感じて,知ってもらうのが目的だから,観察した鳥や花や虫の種類数などにも,一切こだわらないことにする。この観察会シリーズの目的は,我孫子の自然を知り,楽しむことにあるのだから,むしろ,今回の観察会のほうが,正攻法ではないだろうか。
 開催日は10月4日(土)。この時期なら,気候も穏やかだし,秋の虫も,秋の花も楽しめるはずだ。

5−2 下見のほうが楽しい?


 岡発戸・都部の谷戸は,我が家から徒歩20分ぐらい。一応徒歩圏だが,徒歩以外にまともな交通手段が選べないのも事実(現地には駐車場は無いので,車もダメ)。春には花を探したり,アカガエルの卵を見に行ったり,けっこう通っているのに,夏から秋にかけては,つい,暑くて行くのが面倒になってしまう場所だ。しかし,例によって,博物館は鳥関係以外の情報は手薄で,パンフレットを作ろうとしても細かい現地情報が無い,オリジナルの写真も無い,と言う状態なので,下見をしながら写真撮影をすることに。
 9月末,博物館に一旦集合し,「観察会事業首謀者トリオ」で,現地下見に向かった。
 天気が良いこともあり,花も虫も実に豊富だ。木の実,草の実もネタになりそう。バッタもたくさん見つかるし,蝶も,成虫越冬のもの,蛹で越冬するものを取り混ぜ,いろいろ飛んでいる。時田さんの蝶マニア的な話も快調だ。いろいろ勉強になるけど,この話,そのままでは観察会の本番で使えないだろうな。こう言う話を言いたい放題交わせるのも,下見の楽しみなのだ。
 ここのエリアは,そう遠くない将来,「谷津田ミュージアム」として,自然を残し,人と自然のふれあう場を作る計画もある。なまじ役所的整備が入ると,管理のしやすい都市公園みたいな造園をされてしまう可能性もある。そうなってしまったら,里山の魅力なんてあったもんじゃない。この土地の整備については,どんな利用のしかたが望ましく,どのように環境を整え,維持してゆくか,たっぷり時間をかけて検討して欲しい。都市公園を作るのだったら,わざわざここに作る必要も無いだろう。まず,今必要なのは,この場所の自然環境をきちんと把握することだ。計画が実行される前の,この谷津田の姿を,しっかり観察して記録&記憶しておきたい。

 この谷津田での観察会には,ひとつ,問題がある。

 それは,トイレが無いこと。

 公園緑地ではない場所を観察会に使う時には,トイレがネックになることが,結構ある。
 普通に歩けば1周30分もかからない場所を,下見では2時間近く,本番になると3時間近くかけて,ゆっくり見て歩く。集合時に,集合場所近くでトイレを借用できる場所を押さえておく必要がある。
 もちろん,水道も無い。飲みもの持参も必須だ。駅のすぐ近くで開催する半日だけの観察会であっても,ちょっとしたハイキングに行く位の覚悟が要求される。その分,自然が豊かだと言うことでもあるのだが…。

5−3 助っ人登場

 さて,今回の観察会には,頼もしいスタッフが加わることになった。地元で植物を丹念に調べている首藤さん。鳥の博物館友の会会員でもあり,我孫子環境レンジャーにも名を連ねる,植物観察の名手。植物の知識が不足気味な鳥の博物館スタッフにとっては,心強い。事前にバッチリ花の様子もチェック済みとのこと。いろいろ教えてもらおう。

 鳥の博物館には「友の会」と言う組織がある。2002年スタートで,百数十人のメンバーがいる。時田さんの話によると,博物館を拠点に学んだり,博物館の活動への協力なども期待していたようだったが,実際に始めてみると,サークル活動的な集団が形成された。友の会の中に,デジカメ同好会,鳥凧同好会,鳥の絵同好会などのグループも出来たが,博物館の事業への協力体制までは作ることが出来なかった。観察会事業が進展し,こうして友の会からも助っ人が現れるようになってくれば,友の会発足時の構想も,少しは実現したことになるのかも知れない。

 もっとも,私も友の会に登録しているのだが……。

5−4 何でも見ます!


 観察会当日。スタッフは博物館に8時半集合で,事務室で軽く打ち合せをしてから,博物館のワゴン車に資料や小道具を積み込み,出撃!……と言っても,集合場所の東我孫子駅までは1km半ぐらいで,すぐ到着。この近さも岡発戸の魅力だ。
 既に定員を少し超えるくらいの予約が入っている。参加費は無料なので,名前のチェックをして,パンフレットや地図,オリジナルの缶バッヂを渡すだけ。駅前コンビニにトイレの借用をお願いしてある。天気が良いので,水分の用意も案内する。トイレのついでに,コンビニで飲み物でも買ってもらえれば,ギブアンドテイクだ。今回は子どもの参加が少なめ。やはり,「虫の観察会」見たいな,はっきり目的を持った観察会のほうが,中身が分かりやすくて,参加動機を与えやすいのだと思う。それに,鳥や花の観察が中心になると,年配者がどっと増えるのは,どこでも似たような傾向だ。むしろ,このような設定の観察会で,子どもが全参加者の2,3割になっているなら,子どもが多い観察会だと言っても良いだろう。

 9時半ギリギリに東我孫子駅に着く電車を待ってから,観察会スタート。とりあえず谷戸の最上流部の入り口まで移動し,そこで挨拶。観察対象は何でもアリです!と宣言し,谷津田の細い道を歩き始める。

 こう言う環境は,四季折々,違った表情を見せてくれる。今は,夏の暑さが過ぎ,ぼうぼうに伸びて,ちょっとくたびれた草が茂っている。その中に,秋に咲く花があちこちで見つかる。手賀沼公園などに比べると,外来植物の割合が少ないし,花の種類も多い。整備された公園には,「藪」が無いのだ。雑然と草が生い茂るような場所では,都市公園では見られない草花が咲く。いろいろな植物があれば,いろいろな虫を育む。コオロギやバッタもいろいろ見つかるが,ぼちぼち,成虫で越冬するバッタ……ツチイナゴが目立ってくる頃だ。興味の赴くまま,あちこち寄り道しながら,ゆっくり歩く。時折,遠景を眺めて,深呼吸。谷津田の秋の匂いをたっぷり吸い込んだ。ここは,いちばん低い所で海抜4〜5m,高い所でも20mぐらいしかない。その,わずかな標高差でも,台地と斜面林に包まれた,谷戸の風景がしっかり作られている。

 もっと,この風景をのんびり楽しんでいたいところだが,「これな〜に?」と,子どもたちからの質問もどんどん来る。こんなとき,花や虫の名前を教えるだけではいけない。一言でもいいから,さらに興味を繋ぐよう,虫の生態について触れてみたり,花をもう少し詳しく観察してみたり,草花遊びをしてみたり,必ず「名前を知ること」以上の楽しみを提供する。それが,「あびこ自然観察隊」の最大の売り物でもある「しらべ学習対応」なのだ。

 あ〜楽しい!あ〜忙しい!

 お昼近くになって,やっと出発点の谷津田の入り口まで戻って来た。
 お腹も減ってきたので,簡単に観察したものを復習して,博物館の宣伝やら,次回の観察会の予定やらをアナウンスして,解散。
 秋の花だけで,50種類以上解説した。こんなに喋ったら,ほとんど記憶に残らないだろうな。どれか1つでも,インパクトのある観察が出来れば,それがいちばん良いのだけれど……。首藤さんは70種以上の花をノートに記録していた。恐れ入りました。
 私はいつも,自然解説は「生きものの種類の羅列」ではなく,生き物の生きざまに触れること,人と生き物の関係を見つめることに注力しているつもりなので,あまり種名検索が得意なほうではない。でも,やっぱり,生き物の名前を次々と即答出来る記憶力は,やっぱり魅力あるなぁ……。生き物の名前が即答できないとカッコ悪いかも。

 「歩く図鑑」にはなれないけど,「歩く図書館」(要するに,図鑑をたくさん持ち歩く)にはなれるので,とりあえず,調べ物は対応出来るのだが……。

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