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 Chapter 4 夏休みが終わって…(未定稿)

4−1 夏休み科学作品展


 9月。
 「夏休みシリーズ」の観察会も終わり,小中学校は2学期。博物館の入館者も減り,館内も落ち着いてきた。

 我孫子市では,「夏休み科学作品展」と言うイベントがある。市内の小中学校の,夏休みの自由研究の中から,実験,観察,工作の優秀作品を市民会館で展示するものだ。この夏の観察会を,「夏休みの自由研究対策」も視野に入れて企画してきたので,自由研究では,今,どんなことをやっているのか,いわば「自由研究のトレンドウォッチング」をしておきたいと言う気持ちがあった。私は時間が取れずに見損なってしまったが,斎藤さんに見てきてもらうことが出来た。その話によると,やはり「環境ネタ」が結構見られたり,昆虫採集よりも観察のほうが多かったり。なるほど,「手賀沼」→「水環境」と言う図式が見えたり,時代を反映しているようだ。

 さらに,斎藤さん曰く……

「セミの羽化観察会に参加して,セミの羽化の観察記録をまとめた作品が4つぐらい出ていた」

 ……とのこと。
 我々が教えたことが,自由研究としてまとめられ,しかも4人も「作品展」に選出された,と言うのはすばらしい。これまでの観察会では,こう言うフィードバックがなかなか見えなかったために,企画作りに苦しんだり,なかなか手応えが得られないことが多かったのだが,こう言う,目に見えるフィードバックがあると,十分に観察会の成果があったと実感出来る。今後の観察会作りに弾みがつく。

 この勢いで,次の観察会も,張り切ってやらなくては…。

4−2 博物館と学校を繋ごう

 2002年度から本格的に始まった,「総合的な学習の時間」。この時間は,授業のジャンルを越えた学習,地域とのつながりを学ぶこと,自発的な「しらべ学習」などを中心とした,発展的,総合的な学びの時間となる……と言う計画である。我孫子市の小学校でも,地域学習として,手賀沼をメインテーマにした環境学習や,我孫子の歴史などを調べる学習などが行われている。
 もちろん,鳥の博物館も,学習の場として,大いに活用されることが期待される。
 …がしかし,現実には……
 博物館の学校団体利用は,遠足の途中の見学だったり,市内の学校でも,館内展示の見学が中心。鳥の観察の依頼もあるが,対応可能な博物館スタッフの人手も限られている。さらに,先生が子どもを博物館に連れてきても,行き帰りの世話だけで,見学や学習内容については,博物館に丸投げしてしまうケースも少なくなかった。

 せっかく,地元に自然観察や環境学習の拠点となる博物館があっても,学校が上手に利用していると言えるだろうか?

 「総合学習」に対する,学校の戸惑いも感じる。どんなふうに学習を展開したら良いのか,手探りの部分も大きい。積極的に取り組んでいる先生と,そうでない先生の温度差もある。
 地域の環境学習の場として,鳥の博物館が学校と連携して,積極的に「学び」を提供し,より興味を持った子には,休みの日に博物館のイベントに参加してもらったりして,博物館に遊びに来る子ども達を増やす,と言う展開は出来ないものだろうか。そうすれば,学校にも博物館にもメリットが大きい。そもそも,鳥の博物館は,教育委員会の施設なんだし。

 おもな問題は,博物館のスタッフ不足と,先生が博物館の活用方法を知らないことだ。
 この辺りに,少しずつでも手を出して,博物館と学校を繋ぐような方向に持って行ければ……。

 たまたま,我が家は博物館の地元の小学校に子どもを通わせている。そこで,自分の子どもの学年の総合学習の指導を手伝う,と言う名目で,学校の授業時間内に,自然観察会を持ち込んだ。「総合学習」の中で,「手賀沼の自然しらべ」をするので,その時間に自然解説をする,と言う段取り。子どもたちは,「野鳥」「昆虫」など,いくつかの学習グループに分かれて活動していたので,「野鳥班」「植物班」「昆虫班」の3グループに,観察会を入れた。
 観察案内をするに当たり,いくつか学校にお願いをした。
 ひとつは,観察をする場所について,鳥の博物館主催の観察会のフィールドとダブる部分を持つこと。さらに,より深い興味を持った子向けに,鳥の博物館のイベント案内を入れること。そして,先生にも何らかの形で,ティーチングアシスタント(TA)として協力してもらうこと。
 これにより,子どもたちだけでなく,先生にも,鳥の博物館の観察会を疑似体験してもらい,先生に丸投げさせない雰囲気を作り,子どもと一緒になって遊びながら自然について学ぶことの大切さ,面白さを伝えよう,と言う目論見なのである。TAの役割は,何でもいい。子どもたちをまとめるだけでもいいし,子どもたちと一緒に,観察会の「聞き手」になってもらってもいいし,観察したものを子どもにきちんと伝える「伝令」役でもいい。とにかく,参加してもらって,興味を持ってもらうことが,いちばん重要なのだ。

 結局,この年の2学期は,延べ100人以上の子どもたちに,自然観察を教えた。
 その後,鳥の博物館の観察会の常連さんになってくれた子も現れた。
 効果は十分にあった。

 この経験を生かし,鳥の博物館と学校との連携システムを,あれこれ考えてみた。
 特に市内の学校なら,博物館に来てもらうだけでなく,こちらから環境学習の「出前」をしたりして,より,学校が博物館の人材と知識を利用しやすいようにしてゆくように出来ないものだろうか。そのためにも,ボランティアを含めた,博物館サイドの自然解説スタッフの充実は急務だ。また,先生の意識も変えてゆく必要があるかも知れない。とにかく,丸投げはさせない。TAシステムをしっかり作るようにしたい。また,事前に両者で相談する場を必ず持ち,効果的で適切な学習プログラムを作るようにするべきである。
 こうしたことで,学校と博物館の繋がりを太くして,学習内容に連続性を持たせ,学校では提供しきれない発展学習の場として,博物館に出入りしてくれる子が増えれば,学校にとっても博物館にとっても,メリットが大きいのではないだろうか。

 私が2時間だけ教えた,100人の「卒業生」の今後のためにも,博物館を子どもたちの遊び場として,学びの場として,使いやすいものにしてゆかなくてはいけない。博物館に提案したいことが,また増えた。

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