「犬との別れ/その他」創作ノート4

2004年06月〜

03月04月05月 06月 07月


06/01
本日も公用なし。ひたすら仕事。NPOの第3号の原稿完了。ようやく「犬」に戻れる。

06/02
文藝家協会で打ち合わせ。NPO文藝著作権センターの総会のための準備。スタッフ3人が動いてくれているので、何とか進みそうだ。終わってスタッフと軽く飲む。

06/03
昨日の衆議院文部科学委員会で、貸与権の法案が通過。本日の本会議で通過するようだ。文化庁の法制問題委員会で法律の改正に関わってきたので、法律が変わるということに手応えがある。同時期に改正となるレコードの逆輸入禁止措置の法案に反対意見があったので、長引くことが予想されていたのだが、民主党も最後には賛成に回ったようだ。ありがたいことである。レコードの逆輸入禁止については、アジア諸国に廉価に日本の音楽を提供するために不可欠な措置である。反対している人が心配するアメリカやヨーロッパからの輸入が禁止されるわけではない。
私学・塾関係者と打ち合わせ。この方面には困難な課題がいくつかある。貸与権の方は法律改正がうまくいったが、教育関係の方は法律が中途半端な状態なので判断が難しい。

06/04
文藝家協会理事会。今回は理事選挙後の最初の理事会なので、新しいメンバーが加わっていた。新しい人がいると、最初から説明しなければならない項目があって大変だったが、可能な限りコンパクトに語った。必要はことは話せた。しかしわたしが話し始めた時にウナギを食べ始めた人々は、わたしが話し終えるとすでに食べ終えていた。それくらいの間は、一人でしゃべり続けていたことになる。

06/05
一昨日のノートに、レコードの逆輸入禁止について、賛成するようなことを書いたら、反対の人から抗議のメールが届いた。わたしは書籍の貸与権の確立とセットになった著作権法改正案が通過したことを喜んだだけで、この輸入禁止案に全面的に賛成しているわけではない。しかし、文化庁の著作権分科会や法制問題小委員会でこの問題が審議されていた場に同席していて、反対意見を述べたわけでもないので、結果としては賛成したことになる。確かに今回の法律改正で、レコード業界が法律をタテにとって欧米からの輸入をストップさせる可能性はあるが、そんなことはしないとレコード業界が言っている。それは消費者に言っているだけでなく、役人や政治家にも言っているので、そういうところで嘘をつくと業界そのものが信用されなくなる。法律はパーフェクトなものではなく、いいかげんなところが残ってしまう。逆に何もかもを法律で決めてしまおうとすると、法律は膨大なものになるし、人も企業もがんじがらめになってしまう。今回の法律改正は、アジア諸国の民衆の所得水準に合致した安価なレコードを提供するためのもので、その趣旨にわたしは同意したということである。そのことと、国内のレコードがほとんど同じ値段で売られていて、何となく高い感じがするということとは話が別で、わたしもレコードを買う時にそう思う。それは著作権法の問題ではない。この問題についてこれ以上、議論をするつもりはない。抗議をした人にはさらに反論があるだろうが、このノートはここまでとする。

06/06
本日は日曜日。雨が激しいので散歩にも行かず。NPO総会の案内の文章を事務局に送る。けっこう手がかかる。あとは「犬」に集中。少し調子が出てきた。

06/07
勉誠出版の「ジャイロス」の取材。女帝について。毎月連載しているのだが、今回は特集のインタビュー。毎号の特集が面白く、いまいちばんレベルの高い雑誌ではないかと思っていたのだが、訪ねてきたのが若い人だったので驚いた。レベルの高い若い編集者というのが存在するのだ。

06/08
参議院議員宿舎から近くのソバ屋に移動して打ち合わせ。いつもこちらから陳情する某議員だが、今回は向こうの方からのお誘いで、別の議員に紹介していただいた。帰りにカモのいる緑道を通る。先週、四国の取材から帰ってカモの様子を見ると、一週間の間にヒナが大きくなったのでびっくりしたが、今回、そうではなかったことが判明した。カモの家族は2組あったのだ。生まれた時期が違うので、一方はかなり大きくなっている。もう一方はまだ小さい。さらに今日、駅よりの水路にももう1組、カモの家族がいることがわかった。このヒナは生まれたばかりみたいに小さい。ヒナが4羽しかいないので、ネコに食べられたのではないかと心配。地元の人が水路の脇の手すりの下にヨシズをはりつけていた。ヒナが通路に出ないようにしているのか。人々の愛と熱意が感じられる。

06/09
運転免許の更新に行く。世田谷警察署。三軒茶屋の少し先で、散歩の範囲内。ゴールド免許の優良ドライバーである。都内では運転しないので違反をすることはない。三ヶ日の片側一車線の道しか走らないので、スピードも出ない。帰りは遠回りしてカモのヒナを見て帰る。1家族しか目撃できなかった。昼寝か。今日は冷たい風が吹いているのに汗ばむへんな感じの天気だ。湿度が高いのだろう。「桓武天皇」の見本届く。桓武天皇の絵が入った立派な装丁である。買ってください。今年は小説はこれ一冊である。

06/10
中国新聞のインタビュー。団塊の世代について。ちょうど来月「団塊老人」を出すので、本の宣伝になる。「犬」は進んでいる。かなり深い小説になりそうなので、あまり沈まないように制御する。スケジュールが遅れている以外は順調に進んでいる。妻とカルガモを見に行く。本日は3家族のすべてが見られた。北沢川と烏山川の分岐点のあたりにいるヒナはいちばん先に生まれたようで体がかなり大きくなっている。川の底に、小さなアジがいっぱい沈んでいた。近所の人がまいたのだろうが、食べ残すと川の水が汚れるのではと妻と話し合っていた。だが、寝ていたヒナたちが川に飛び込むと、ものすごい勢いで食べ始めた。潜水できる。あっというまにアジはきれいになくなってしまった。少し先のヒナはまだ小さい。最初見た時8羽いたのに、5羽になってしまった。目黒川の駅に近いところにいるのは最初から4羽しかいない。ネコにやられたと近所の人が話していた。それでも、徒歩数分の距離に3家族もカルガモがいるのは楽しい。通りがかりの人も立ち止まってカモを見ていく。近所の老人たちは、これが生き甲斐だというふうに、ウォッチングを続けている。深夜や早朝にも見回りをして、ネコを排除しているそうだ。

06/11
新潮新書「団塊老人」の編集部より電話で最高のチェック。細かい字句の修正をした。3回くらい書き直したこの本も、ようやく著者の手を離れる。7月20日前後の発売。世の中に対して問題提起になる本だと思うし、単なる老人の愚痴ではなく、建設的な提言も入っている。役に立つ本だと思う。
さて、本日は、日本メンデルスゾーン協会の理事会。何でそんなものに入っているのかといわれるかもしれないが、浮世の義理である。この理事会はもしかしたら文藝家協会の理事会より平均年齢が高いのではないかと思われるが、さまざまな人と言葉を交わせるのは、この世に生きていることの喜びである。大学の先生や学識経験者が多いので、わがNPOの機関などを配って著作権問題について宣伝する。会場は田園調布。わが三宿からバス一本で往復できる。今週もハードな日々であった。

06/12
土曜日。下北沢の方に散歩に行く。アンコ屋公園の手前の北沢川にもカモがいたのでどうなっているかと思ったら、ヒナが5羽、生まれていた。タマゴからかえったばかりといった小さなサイズだが、もうすごいスピードで泳いでいた。これから当分は、こちらの方向でもカルガモウォッチングを続けないといけない。

06/13
日曜日。昨日、車を定期点検に出したら、部品の取り替えが必要だといわれた。かなり高い金額を請求されたが、これは買い換えろという販売店の策略だろう。確かに8年ものの車なので、今後は維持費がかかりそうだ。で、販売店の策略に乗って買い換えることにした。バブルの頃に買った3リットルの車は燃費がかかりすぎる。貧乏になったのでダウンサイジングを試みた。8年乗った車には思い出がある。息子たちが運転するようになって共同で使った。亡き犬の思い出もある。息子たちも犬も去って、いまは妻と二人きりになった。突然だが、『野性時代』から原稿の注文が来た。どうやら、ベテラン作家の珠玉の名作といったものを期待されているらしい。そんな年になったのかと呆然とする。とにかく締切が近づいてきたので書かんといかん。

06/14
著作権情報センター理事会。いつのまにかこんなものの理事になっている。初台は近いので散歩だと思って出かけていく。帰りに北沢川のカモを見る。ヒナが3羽しかいない。このあたりはネコが多い。ネコ嫌いになりそうだ。

06/15
スペインにいる長男からメールで写真を送ってきた。奥さんのお兄さんのところに男の子が生まれた。その赤ん坊をわが孫が抱いている写真。まだ2歳になったばかりだから、膝の上に無理に赤ん坊を乗せられて困惑している表情が可愛い。本日は私学関係の人々と打ち合わせ。道のりは長い。一歩ずつ進むしかない。暑い日だった。カルガモのヒナは順調に育っている。いちばん駅に近いところの一家が、その次の一家のいる水路に引っ越したようだ。地元の人の解説によると、引っ越した方は両親が揃っている。もといた方は、ヒナは大きいのだが、母子家庭のようで、小さい方のヒナがいばって泳ぎ回っているらしい。

06/16
文藝家協会で教材出版社の代表と協議。出版社の団体がいくつもあるので、一つと協定を結んでも、別の団体が違うことをやると不公平になる。そのため最初から経緯を説明したり、懇願したり、いろいろと大変だ。こういうものには時間がかかる。今日は半歩前進。

06/17
『野性時代』編集部から電話がかかってきた。「締切はいつ?」ときくと、「15日です」それは一昨日ではないか。数日前から書き始めていたのだが、毎日雑用があったのと、「犬」と並行して書いているので、まだ完成していない。本日はこれから宴会がある。気分よく飲みたいので、宴会に出かける時間をタイムリミットにして一気に仕上げた。こういうものは、気合いで書くしかない。文豪が書く名作という感じにはならなかったが、かなり重い話にはなった。メールで送って、本日は楽しく飲めそうだ。

06/18
日経エンタの取材。小説の構造について。構造を構成するのは簡単だが、ディテイルを書くのが難しい。しかし小説について分析的に考えることは大切であるといった話をした。「深くておいしい小説の書き方」(集英社文庫)に書いてあるようなやや難しいことを話した。本日はわが誕生日。嬉しくもないが妻と三軒茶屋のイタリア料理店で祝う。

06/19
山口県の宇部へ。次男の結婚に先だって、「結納」を渡すため。長男の時は相手がスペイン人で、留学先のブリュッセルで先方の両親と会った。今回は近いところだし、言葉が通じる相手なので何の問題もない。

06/20
本日は次男の運転でレンタカーでドライブ。壇ノ浦に行き、トンネルで徒歩で九州に渡る。下関の市場で食事。父の日なので男性は生ビール一杯という店だったので、次男にも注文させ2杯飲む。三宿に戻る。少し疲れた。台風が来なくてよかった。山口県は快晴で暑かった。

06/21
本日は休み。台風の接近で風強し。昨日飛行機に乗って帰ってきたので、台風がゆっくり進んだことを改めて感謝する。「犬」。警察犬訓練所に入れた時のエピソード。それから雪が落ちて犬小屋がつぶれて室内犬になるところ。室内犬になってから、いよいよ話が盛り上がってくるはずだ。「桓武天皇」を送付した人から届いたというハガキが届きつつある。読んだという人はまだあまりいないが、最後まで読んだ人もいるようなので、とにかく最後まで読める作品にはなっているようだ。漢字が難しいという苦情あり。まあ、歴史小説だから仕方がない面もあるが、ルビを増やすべきであったか。

06/22
台風一過、ものすごく暑い。著作権情報センターの総会に出席。この組織の理事になって間がないが、やたらと会議がある。川村湊さんの受賞を祝う会までの間、時間があったので、神田のあたりを歩いたが、汗が流れた。パーティー会場に入ると、置いてあったビールを一人で一本、一気のみした。最近はふつうの新人賞のパーティーで文壇関係者と会うことも少なくなっていたのだが、この会は個人的な関係で人が集まっているので、知人が多く、久しぶりで会う人もいて、楽しい会だった。中途半端な知人がたくさんいると挨拶するので疲れるのだが、この会は本当に親しい人が多くて、充実していた。川村湊さんとは、彼がこのペンネームを使う前からの知り合いで、交際範囲も重なる部分が多い。

06/23
レンタル店関係者との話し合い。金を払う側と取る側という関係なので最初は緊張感があったが、書籍のレンタルによって文芸文化の発展を目指すというコンセプトを伝えたので、ご理解いただけたと思う。敵対しては話が進まない。共通の目標を設定すれば歩み寄れる。
熱心なサッカーファンではないが、ヨーロッパで予選リーグをやっていることは知っている。長男がスペインにいて親戚もたくさんいるし、キーパーのカシージャスとか、モナコのモリエンテスとか、好きな選手もいるのでスペインを応援したのだが、予選で敗退した。ギリシャと引き分けたのが致命的だ。スペインは州ごとが一つの国という意識をもっている。例えば長男がいるのはアラゴン州で、アラゴンの人にとって、マドリッドのあるカスティリアや、バルセロナのあるカタルーニャは、スペイン語圏の外国という感じで、アルゼンチンやメキシコと同じような感覚だ。だから各都市のサッカーチームは応援するが、スペインという国の代表チームはそれほど応援しない。スペインが負けても、スペイン人は比較的に冷静だと思う。ところで、この大会ではイタリア、ドイツも敗退した。残っている優勝候補はフランスと、地元のポルトガルだろう。チェコも強い。イングランドもルーニーが活躍している。しかしポルトガルとイングランドがトーナメントの第一線で当たるので、準決勝はポルトガル(またはイングランド)対オランダ、フランス対チェコだろう。フランスはジダンが疲れたら危ない。結局、オランダ対チェコで、チェコが優勝すると思う。

06/24
本日は公用はないはずだったが、文藝家協会の前の書記局長だった勝田量之さんの通夜に出向く。わたしが評議員や理事として文藝家協会に関わるようになった頃から書記局は勝田さんで、とくに常務理事として仕事をするようになってから、勝田さんとともに行動することが多くなった。とくにNPOの設立についてはお世話になった。というか、NPOの設立は、新しい組織の設立を勝田さんが構想し、一緒に弁護士と相談している過程で、NPOという案が出てきたものだ。そういえば、わたしが著作権管理の責任者になったのも、元理事長の江藤淳さんと勝田さんで決めたもので、その二人がいなくなったいま、わたし一人でこの仕事をさらに続けるのかという気分にもなるが、いま著作権問題は山場に差し掛かっているので(山場は長く続くことになるが)、あとしばらくは続けることになるだろう。

06/25
文藝家協会で打ち合わせ。その後、NPOの職員と飲み会。本日は総会のための資料を揃える会議で、うまく揃ったので、とりあえず祝杯である。NPOについてはわからないことも多く、手探りで仕事を続けている。とにかく前進していることは間違いない。NPO第3号できる。第1、第2号は好評なので、増刷することにした。出版物が増刷されるというのは、昨今ではめずらしいことである。ギリシャがフランスに勝った。予想外の展開である。

06/26
「犬」進む。来月中には完成させたい。オランダ対スウェーデン。PK戦でオランダの勝ち。0−0だったが、背の高い人々がものすごいスピードで走り回る姿は感動的だった。チョコマカしたラテン系のサッカーとは別の美しさがあった。残りはチェコ対デンマークなので、ラテン系で4強に残ったのはポルトガルだけだ。ギリシャはゲルマン人でもラテン人でもないが(インド・イラン系だろう)、体格もよく、監督がドイツ人だから、ゲルマン系のサッカーをする。

06/27
黙々と仕事。連載エッセーを送付。「犬」も進む。

06/28
暑い日が続く。家の浴室の改修工事のために、このところシャワーしか使えないのだが、それで充分だ。

06/29
私立関係者の集まりで講演。教育機関における著作権の諸問題について。講演のあとで懇親会があったが、さまざまな人と名刺交換し、質問に答えていたので、酒を飲むひまもなかった。

06/30
浴室の改修がようやく終わった。タイルをはりかえたのできれいになった。築18年の家なので、他にも補修が必要な箇所がいくつかある。


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