「犬との別れ/その他」創作ノート3

2004年05月〜

03月04月 05月06月 07月


05/01
この家を建ててくれた大工さんが来て、浜名湖側の斜面の松をチェーンソーで伐ってくれた。仕事場は崖の稜線の上にある。西側は別荘地内に面しているのだが、反対側はドライブウェイの測道に接している。そちら側の斜面の松が伸びると、浜名湖が見えなくなる。育ちすぎた松を伐ってもらったので見通しがよくなった。

05/02
ひたすら仕事。調子が出てきた。まだ犬が来た直後の話なので、先は長い。

05/03
妻と義父母が、浜名湖花博を見に行った。こちらは一人で仕事。真夏のように暑い日が続いていたが、今日は少し涼しくなった。毎日、湖岸を散歩している。昨日はアオサギを見た。今日はコサギがいた。仕事場からは浜名湖が見える。トンビが飛んでいる。ところが、今度ここへ来て気づいたのだが、時々、トンビの様子がおかしい。よく見ると、カラスと併走して飛んでいる。どうやらカラスにいじめられているようだ。トンビがカラスのヒナを襲うのかもしれないが、わたしが見ている限りでは、カラスは面白がってトンビをいじめているようだ。トンビは翼を水平に広げて滑空するのが得意だが、カラスはバタバタと飛ぶ。そのぶん小回りがきくようで、カラスにちょっかいを出されると、トンビは困惑した様子で逃げ回っている。大きさはトンビの方がはるかに大きし、顔つきも立派なのだが。

05/04
朝から雨。東京では強い風が吹いているらしが、浜名湖の無風。雨が一時やんだすきに散歩。本日はコサギとカイツブリを目撃。カラスとスズメとカモ以外の鳥に出会うと嬉しい。

05/05
ひたすら仕事。犬が猪鼻湖で泳ぐシーン。ここは前半の山場だと思う。

05/06
義父母が帰るというので、妻が送っていく。義父は八十歳をすぎている。今回は体調がよくなかったようだ。妻は米原まで車を運転し、そこで大阪から来た妹とバトンタッチ。快速電車で帰ってきた。鷲津まで迎えに行く。三ヶ日の仕事場から鷲津まで車で三十分かかる。快適なドライブ。東京の都心と違って、このあたりの道路は運転するのが楽しい。

05/07
三ヶ日の散歩も今回は今日が最後。昨日、昼間は一人きりだったので、散歩の時にコンビニへ行った。車で行っても十分くらいかかる。昨日は道に迷って遠回りをした。今回は最短距離を確認した。徒歩二十五分で行ける。ということは三宿の自宅から下北沢へ行く感じだ。下北沢まで行けば駅もあるし、三省堂書店もあるし、ビデオショップもある。石丸電気もある。ここはコンビニが一軒あるだけだ。だが、帰りは湖岸をのんびりと歩く。猪鼻湖の周囲には新緑の山がある。湖岸に沿って歩くにつれて角度が変わるので、景色の色合いが変わって見える。この風景を、かつては犬とともに眺めていた。その犬の話をいま書いている。

05/08
早朝に起きて散歩。三宿に戻る。郵便物がたまっている。何とか夜型に切り替えたい。

05/09
日本図書館協会の理事2名と、ペンクラブ広報室長松本侑子さんというメンバーで、公共貸与権についての共同声明準備会の第1回会合を開く。意見を交換し、引き続き議論を重ねて、文案をまとめることで合意。この共同声明が実現すれば、図書館と著作者の対立は解消される。会合が終わったのが5時前、西八王子で女声合唱団との合同練習が5時半から始まるので、急ぎ足で中央線に乗る。実にタイミングよく特別快速が来る。駅前からタクシーに乗り、6時前に練習の会場に着く。一曲が終わったところだったので、練習の大半に参加できた。終わったあと、団員の車に同乗して、めじろ台で飲む。

05/10
新潮社でゲラを受け取る。5ページほど短くしないといけないが、小説ではないから、それほど難しくはない。来週の初めまで。とにかく当面はこの仕事に集中しないといけない。

05/11
上智大学の3回目。前回は何人かの学生と飲み会をやったので、親しみがわく。大学の講義は、話が途中で終わっても続きは来週といって終われるが、今日は最終回なので、きっちりと終わらないといけない。必要な話はできた。最後に著作権の話をするつもりでいたが、文学の話に熱が入ったので、公共貸与権の話を少ししただけに終わった。著作権に興味のある方は、このホームページのインデックスページに出ている「日本文藝著作権センター」のホームページを見ていただきたい。そこに出ている表示や機関誌のバックナンバーは、すべてわたしが書いたものである。
昨日、「団塊老人」のゲラをもらってきたのだが、まだ見ていない。気力が充実しない。雑用が一件あるので、ゲラのチェックは明日からになる。『文学界』は新人賞の号だが、選考委員の島田、奥泉らの選評を見ているうちに(いいことをいっている)、こういう言葉は当の作家自身にはねかえってくると思った。自分の作品についても考慮しないといけない。書きかけの「犬との別れ」の文体についても、最初からチェックをする必要がある。ここまでいい感じで進んできているのだが、「団塊」の校正が終わったら、最初から読み返して文体をチェックしたい。

05/12
久しぶりにコンサートを聴く。金管中心の面白いプログラムで、ちょっと感動した。音楽というのはいいものだ。

05/13
三ヶ日に移動。妻が明日、浜名湖で用があるというので付き合う。いつもより早めに出発したので午後の早い時間に仕事場に着く。妻が運転するので、車の中でゲラを読み始めた。揺れるので書き込みは難しいが、読むだけならできる。ワープロの文字データを使っているので誤植はないはずだが、けっこうミスがある。2回書き直したので、チェックはできていると思っていたが、2回目の書き直しで追加した部分は読み返してないので、タイプミスもある。しかし校正者がしっかりしている感じなので、校正者のチェックのあるところだけ見ればいいだろう。あとは5ページ削れという編集者からの指示があるが、これは章の扉の前のページにはみ出ている数行を削れば1ページ削れる部分があるので、それほど無理をしなくていい。小説ではないので細かい表現にこだわる必要はないが、論理の流れがそがれないように、削るポイントは慎重に見極めたい。

05/14
この仕事場を建ててくれた大工さんが浜名湖花博に出展していて、本日が撤収の日だというので、妻が手伝いにいった。こちらはコンビニまで散歩して弁当を買う。往復で1時間。ちょうどいい散歩だ。連休の時に大工さんが高い松をチェーンソーで切ってくれたのだが、小さい松は残っていて、新芽が出ている。これを枝切り挟みで刈り込んだら、両手がふるえるようになった。アル中みたいだ。ゲラの校正は半分まで進む。明日はまた三宿に戻るしコーラスの練習があるので、後半は日曜日に集中してやる。ほぼ予定どおりに作業が進んでいる。

05/15
浜名湖から三宿へ移動。郵便物の整理などしてから、めじろ台男声合唱団の練習に参加。

05/16
新潮新書の校正。5ページ、無事削れた。明日届ける。

05/17
雨は止んだがものすごく蒸し暑い。妻の運転で書協へ。著作権についての協議。貸与権の問題や、教育関係の二次利用、出版契約書など、さまざまなテーマがあったが、段取りよく話を進めることができたので、必要な話は概ねできた。ゲラを新潮社に届ける。書協から新潮社までは徒歩で数分。神田の三省堂で空海に関する資料を買う。重かった。

05/18
光文社と編集長、担当者と、表参道で打ち上げ。担当者とは三宿で飲むことが多いのだが、今回はスポンサー付き。やっぱり表参道は、町並みに上品さがある。プラダのカプセルみたいなビルに遭遇。三宿にはこんなものはないと思う。

05/19
上智大学の新聞学科の講師の先生方の懇親会。まとめ役の田島先生の他は、すべて初対面の人々であったが、知らない人と話をするのもまた楽しい。次男が六年間通った大学なので、何となく親しみがある。上智会館別館などというところも、こんなところかと見識を得た。

05/20
文芸家協会の総会と懇親会。総会の前に常務理事会があるので、長い一日であった。総会では知的所有権に関して、さまざまな報告をしなければならなかったが、必要なことはすべて話せた。懇親会に参加したNPO関連のスタッフと、二次会を設定して会議をしたので、本当に長い一日だった。しかし、NPOのスタッフが元気に仕事に取り組んでいることがわかって嬉しかった。懇親会にさまざまな人が参加してくれたこともありがたい。ふだんは論争することの多い人とも、なごやかに歓談できた。

05/21
久しぶりの快晴。妻とご近所を散歩。今週はハードなスケジュールだった。「犬」は最初から読み返して文体のチェックをやっている。作業の進行は遅れているが、いいものになりつつある。

05/22
男声合唱団と女声合唱団の合同コンサート。夫婦で参加しているカップル2組あり。橋本の杜のホール。橋本は乗り換えたことはあるが、駅の外に出るのは初めて。駅前の市の施設らしい立派なビルの中に図書館とホールがあった。音響のよい立派なホールだった。男声合唱については、とりあえず止まらずに最後まで歌えた。自分の声の調子も、わるくはなかった。終わってから二次会には参加せずに、電車で新宿へ。飯田橋の出版クラブで、日本児童文学者協会の授賞式と懇親会。乾杯の前の来賓挨拶で、著作権問題について長く論じたので申し訳なかったが、必要な情報を誠実にお伝えできたと思う。これが本日の仕事。一歩ずつだが、こうしたことの積み重ねで、よい方向に進んでいけると思う。

05/23
本日は日曜。公用はない。雑用2件。それとNPOの原稿をそろそろ書かないといけない。「犬」についても考える。いろいろと忙しい。

05/24
月曜。本日も公用なし。三軒茶屋まで散歩。ひたすら仕事。

05/25
図書館についての協議会に出席。今回からよりフォーマルなものにするということで、その運営についての議論だけで終わってしまった。帰りに池尻大橋駅から目黒川の暗渠の上の人工の水路のわきを通ると、カルガモがヒナを連れて泳いでいた。超カワイイ。午後、妻を誘ってまた見に行く。何度見てもカワイイ。

05/26
妻の実家(兵庫県川西氏)に移動。明日から、「空海」の取材のため生地の善通寺と修行の地の室戸を訪ねるため。

05/27
妻の運転で、しまなみ海道を通って今治へ。

05/28
善通寺を訪ねる。暗闇の中を進む戒壇巡りは善光寺でも体験したが、ここのは距離が長い。空海の母が描いたといわれる一文字ずつに仏像が描かれた法華経序品は、写真では知っていたが、本物を見て感動を深めた。来年、「空海」という作品を書く。この法華経はできればファーストショットに使いたい。高知に移動。妻の親戚を訪ねる。

05/29
室戸。足摺には行ったことがあるがここは初めて。足摺が断崖絶壁なのに対し、こちらは緑におおわれた丘の下に、石の浜が広がっている。浜づたいに移動することができる。空海が修行したと伝えられる洞窟の中に入ってみた。確かに洞窟の中から外を見ると、空と海しか見えない。空海という名はここから生じたのか。この洞窟で修行中に、明星が口の中に飛び込むという幻想を見る。明星というだけでは明けの明星か宵の明星か(どちらも金星だが)わからなかった。しかしこの洞窟は東に面しているので、明けの明星に違いない。宵の明星はこの洞窟からは見えない。

05/30
三宿に戻る。暑い。真夏だ。シャワーを浴びてから水道橋へ。次男が横浜戦の切符を手に入れたので一緒に観ようと誘ってくれた。次男が小さかった頃はよく野球を観た。社会人になって茨城県に住んでいるので、めったに顔を見ることもない。次男と野球を観るのはわたしにとって至福の時間であった。もう二度とそういう幸福な時はないと思っていたが、次男が声をかけてくれて、思いがけない時間がめぐってきた。もちろん巨人が負ければ幸福ではないのだが、ホームランが4本も出て快勝した。レフトの外野に近い席で、4本ともレフトスタンドだったので、ホームランのボールの軌跡がよく見えた。

05/31
本日は公用なし。ひたすら自分の仕事。もっともNPOの機関誌のための原稿を書いているのだが。


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