Visionsのプレリリース版ブースターというものがありまして、それの袋にはTerese Nielsenの「Undo」が描かれておりました。正式発売品にはTeferi's Puzzlebox(別名ルービックキューブ。ヘルレイザーとか言い出すと究極の快楽と称して身体八つ裂きにされちゃうので注意)が印刷されていましたのでこれはこれで結構気に入ってる絵だから良かったんですが、Undoの湯煙ねーちゃんでも良かったなぁと思いました。Magicでは比較的新参に属する彼女ですが、既に「あのもわもわした綺麗なイラスト」はその存在感を蜃気楼の向こうに漂わせているのでした。そんな彼女について、WotC社は素敵なコラムを4本も用意してくれております。他の絵師にもそうしてくれればいいのに。ぶつぶつ
Terese Nielsen・・・・・
出生地:ネブラスカ州Aurora
故郷:カリフォルニア州Temple City
好きな飲み物:絞りたてのジュース類なんでも
持ち車:1961年型、クリーム色のRambler
好みの音楽:クラシック系/バッハ・ベートーベン・モーツァルト、クラシックロック、ニューエイジ系
画材:アクリル「あたし、飽きっぽいからあれこれ試しているのよ」
ペット:Jazminという名のrottweiler
影響を受けた画家:「あたしは1900年〜20年のイラストが好き。グスタフ・クリムトにJ.C.LeyendeckerにMaxfield Parrish、N.C.Wyeth、そしてアルフォンゾ・ミュシャ」
彼女はWizardsの絵師たちの中では比較的新参に属する。最初の作品はAlliancesとAncient Heartsに見られる。この業界に入るのこそ最近ではあるが、彼女はコミックの分野では定評のある画家である。短期大学を出てすぐにイラストで生計を立てはじめ、現在に至るまで多くの作品を手がけている。
Terese Nielsenのイラストには明らかな2極の特色が見て取れる。暗く陰鬱な雰囲気、そして輝き、渦巻く雰囲気。
「暗いイメージを表現するのは楽しかったわ。でもそればかり何年もやってきたから。例えば、MirageのBad Riverは純粋に風景を描くつもりで描いたの、風景画にありがちな手法を使ってね。十分暗くて、おどろおどろしい雰囲気を出せたと思うわ。でも今はそういうの、弟のRon Spencerに跡目譲ってるんだけどね」
成功したアーティストなら誰でも、ファンがどんな絵を望んでいるかを承知しているものだし、あるいはどんな風に批評されているかも知っているものだ。その一方で、自分の描いた絵で一番のひいきはと聞かれたときに即答できるアーティストは少ない。たいがい「描き終えたばかりの作品」とかいう答え方になるものだ。
しかしTerese Nielsenは違う。「AllianceのForesightで描いたマーメイドが一番好き。結晶体から放射されている光を表現できて嬉しいわ。水底の光景を描写できたし、尻尾の形も描けたし。でも一番好きなのはやっぱり、光を描けたこと。ずっと暗くてどろどろしたのばかりやってきたから、ぱあっとした絵を描いていて本当に楽しかった」
PortalのMoon SpriteはTereseにとって、今までと異なるアプローチをかけた出発点の意味合いを帯びている。まず第一に、一目見て分かることだが、その垂直方向の構図だ。上下が切れているように見えるがこれは印刷ミスではなく、TereseがWotC社から依頼されたイラストの一部分なのだ。これによって彼女は、新しいことをする機会を得た。「花からまさに産まれ出でたばかりの精霊を描きたかったの、非在の門を抜けてくる神秘的な誕生の瞬間を」
作品の出来が作者の思惑以上のものになることもある。「羽はもっともっと色鮮やかにできたんだけど、あたしは少しやりすぎてしまったの。色調を落ち着かせるのにとても苦労したわ」・・・このイラスト1枚に、彼女の様々な画材に対する愛着というものが集約されているようだ。金色に輝く羽、そして絵の左側を占める装飾的な枠にそれは顕著に現れている。また、金色の使い方は彼女が影響を受けたと語っている画家、グスタフ・クリムトに共通するものがある。
Tereseはあたかも、光と闇の2つの領域の間で絶妙なバランスを保っているようにも見える。彼女の絵はけばけばしい気取ったものにも堕せず、重苦しいだけのただ暗いだけの暗さにも陥っていないのだから。
アーティストの進む道が常に順風だとは限らない。ものごとが計画通り進むかと思えば、なにもかもがおじゃんになることもあるのだ。
Duelist誌12号の表紙のイラスト、あれはTereseによるAllianceの超使えるカウンター呪文、Force of Willのイラストの再解釈バージョンである。ことの発端はごく些細な仕様の違いであった。WotC社のMagicアートディレクターであるSue Ann Harkeyに依頼を受けたとき、それは「Stop Spell」と呼ばれる赤呪文であった。青でなく。Tereseはごく妥当なイメージとしてその絵を炎のモチーフで満たし、際だったポーズを人物に取らせた。まぁ、赤呪文ならそれくらいするだろう。
イラストの原画がアートディレクターの元に送られてから、カード名が「Force of Will」に変更されたと知らせが届いた。「それはいいの、でも呪文の色を赤から青に変更してきたのよ、おまけに同じカードで女性バージョンも描けって言ってきたの。それは易しいことじゃないわ。青呪文に変更になったばっかりに、一から描き直さなければならなくなったの。もうあんなのはご免ね。つらい要請だったわ」辛い仕事は十分に報われた。最終イメージはDuelist誌の歴史とともに残ることになったのだ。
アーティストが自分の仕事を没にされる理由はたくさんある。Tereseの手がけたDivine Offeringは危うくその仲間入りをするところだった。「今まで一度も没にされたことはないんだけど、あのときはもう少しでそうなるところだったわ。Sue Annに送ったスケッチが、同じカードの以前のバージョンと酷似しているっていうの。ねえ、誓って言うけど前のバージョンのカードを目にしたことはないの。でも誰が見てもそっくりよね」幸運なことに、結局そのスケッチは採用され、Mirage版のDivine Offeringが無事できあがったのだ。
この偶然によって、ある流行が定着した。今後のエキスパンションで再録されるカードは、そのイラストが意図的に以前のものに似せて描かれることになるだろう、とWotC社のアート部門からの見解が発表されている。ちょうど、どのメーカーから出ているタロットカードにも描かれる意匠に共通点があるように。Tereseの一件が、偶然ながらその流れを産み出したことになる。
特定の分野のイラストだけを描き続けるアーティストも多い。野性動物や風景、人物画など。Terese Nielsenの場合はごく最近、新しい分野に挑んで非常に刺激を受けているところらしい。「WotC社で働く前は、ほとんど野性動物なんか描いたことはなかったわ。だからこういう絵をかくのはとても楽しいの」
Tereseが最初に手がけた猫系のイラストはMirageの「Stalking Tiger」である。それが最後にもならなかったし、一番上手く描けたものでもないようだ。VisionsのKing CheetahとNatural Order、第5版の「命の川」、そしてPortalの「Raging Couger」と続く。
全く未知の領域の仕事をするというのはどんな気分なのだろうか?「そうね、描く猫族ぜんぶをよく観察したわけじゃないんだけど、猫は好きよ。写真の資料をたくさん使う方だけど、いつもそれを一ひねりして使うようにしてるわ」
King Cheetahなどは非常に成功した作品の一つに数えられると思う。Visionsというエキスパンションのひねたイメージを醸し出す代表的なカードになったし、Visions: The Oracle online Contestでも原画が第一等になった。原画はテキサス州Springに住むWade Hendersonが競り落とした。というわけでこの絵は、Tereseが手放した数少ない原画となった。ほとんどの原画は額装され、自宅やスタジオに飾られている。なぜもっと原画を売りに出さないのだろう?「その絵を懐かしがらないように、あたしに余分に払ってくれないとね」と彼女は言うのだ。
第5版の「命の川」はTereseがMagicで描いたものの中でも第一級の傑作であろう。本人にとってもお気に入りらしく、原画は寝室に置かれているようだ。Foresightの時と同じモデル(一番の親友であるDawn Manwring)を起用したがForesightの時とがらりと異なる素朴な衣装を用いた。しかし別に猫と一緒に水を飲むイベントなど用意されていないのに、なんで山猫みたいなのがおねえちゃんの脇にはべっているんだろう?「猫には9の命があるんだぜ、だから緑使いを20ダメージで倒せると思うなよ」という裏の意味でもあるんだろうか?まぁ真実とは往々にして単純なものである。Dawn嬢が猫好きで、山猫と一緒に描いてくれきゃヤダとだだをこねたのだ。モデルについての打ち合わせと素早い写真資料漁りの後、彼女は念願の山猫ツーショットイラストをプロの絵師に描かせることに成功したのだった。故にあのイラストをプリクラと同列にみなしても良い。ラヴラブぅ、とかマーカーで書かれていないのが不思議なくらいである。
ある種のイラストが他のものより大きな反響を呼ぶことはまぁあることである。ファンの熱烈な反応により、ここに「Terese Nielsen一番メジャーなイラスト大賞」にAllianceの「Elvish Ranger(女性バージョン)」を一方的に決定する。おめでとう。
特に名を伏せておくが、あるElvish Ranger(ただし女バージョンのみ)大好きっ子はこともあろうに人生の目的を「このカードの市場流通分をぜんぶ独占するっち!」と決めてしまった。親が聞いたら泣き伏しそうな話だが、誰にとっても不幸なことにElvish Rangerはコモンカードであった。いくら彼がその時点で28000枚持っていようと、ざっと見積もってあと472000枚はゲットしなければならない勘定である。
こいつは浴室をElvish Rangerで埋めてしまった。クローゼットも埋まってしまったので、専用のレンタルスペースを借りたそうだ。我々としては彼の前途にほんのちょっと不安を感じずにはいられないが、まぁいっか、ブースター売れるしね。あなた、Elvish Ranger何枚持ってます?
しかしながら、Terese Nielsen自身にとってElvish Rangerは「機会があったら描き直したい絵」の一つなんだそうだ。もっとも、女性バージョンの方ではなく--そんなことしたら全員「怒れる群衆」になるだろうが--男性バージョンのほうだとか。「あたしは男性というものを、女性と同じくらいセクシーに描きたいの」ひょっとしてひょっとすれば、第6版でElvish Rangerが再録されることになれば、彼女の望みもかなうだろう。そしたら兄貴ラブな連中の取り込みもできるしな。
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久しぶりに翻訳の方もかっとばしてみましたがいかがでしょうか。直球翻訳のQuinton Hooverの後だとこういうのがいい気分転換になります。しかしまさか兄妹だったとは。油断も隙もありませんね(意味不明)。