“シャドウ・オブ・ヘゲモン”
オースン・スコット・カード
(ハヤカワSF)
“エンダーズ・シャドウ”
の続編です。
エンダーは既に去ってしまっているので、
今回はビーンの行動を縛る結界はありません (笑)。
ピーターがやがて『覇者 (ヘゲモン)』になるというのを除いては。
しかし、ビーンにしては考えられないようなミスを犯しますが…。
「バガー戦役」でエンダーの部下として戦った子供たちが何者かに誘拐されます。
皆、誘拐されるなか、ビーンだけは命を狙われます。
そんなことをするのは、そう、アシルしかいない。
ビーンはシスター・カーロッタとともに身を潜め、
何とか外部へメッセージを送った捕らわれのペトラたち、
エンダーの元部下を助け出そうとします。
そのためには、エンダーの兄にして
「ロック」「デモステネス」の名で世論を動かす、
ピーターに協力を求めなければならない…。
タイトルの割には、
「(未来の) ヘゲモン」ピーターはあんまり活躍しません^^;。
話の都合とはいえ、アシルの能力値が高過ぎな気もします。
ビーンとピーターの命運は、かなり危なかったような気が。
終盤まできて「こりゃ話は完全に落ち着きそうにはないな」
と思ったらあと二作ほど続編の予定があるようです。
次編“Shadow Pappets”の原書は既に出ているようです。
(12/15)
“あなたの人生の物語”
テッド・チャン
(ハヤカワSF)
最近のSF界でグレッグ・イーガンとともに注目を集めている
テッド・チャンの短篇集です。
イーガンがアイデンティティの問題を多く取り扱っているのに対して、
こちらは、世界の新たな側面の発見により変容せざるを得ない認識を描く、
という感じでしょうか。
そのせいか、登場人物が何らかの意味で打ちのめされたり、
壊れたりしている話が多い気が^^;。
表題作は、主人公が異なる時間軸の出来事を交互に語っていく不思議な構成ですが、
実はそこに意味があるという見事な作品です。
とある物理の原理に対する理解が少し要りますけど…。
こんな作品
(ややネタばれ注意)
を思い起こさせます。
ある意味では
この作品
の逆ともいえるかも。
理解が要るという点では、
“ゼロで割る”の主人公の一人が感じている絶望感を解るためには、
彼女が証明してしまったことがどれほどの意味を持つのかが感じられる必要があります。
“バビロンの塔”はラスト前でだいたいからくりの予想がついてしまうところが残念ですが、
個人的には日没のシーンだけでも満足です(^_^)。
ちなみに、ものすごーく小さい規模で同じような光景を見たことはあります。
あれだけでもかなり感動的でしたから…。
(10/24)