冠詞が示すもの
中学で習う英語で、最初に出てくる文章の一つは以下のようなものではないでしょうか
This is a pen.
そして、この訳として「これは一本のペンです。」と習います。
私も中学でこれを習い、「何故一本のなんて言うんだろう」と思ったものです。多分誰もがそう思ったのではないでしょうか。また、こんな表現を通常の会話で使ったりするんだろうかとも思いました。でも、その疑問を特に質問するでもなく、ただそのまま通り過ぎていってしまいました。もしその疑問を先生にぶつけていたら、先生も困っただろうと今では思います。日本人の英語理解の中でも特に典型的な冠詞に関わる疑問だからです。
今の私がちゃんと冠詞を理解できているかも怪しいものですが、一つ言えることは英語は日本語と比べて曖昧な表現がずっと少ないということです。冠詞に THE を使うか A を使うかということは、その違いが分かって使い分けているということだからです。
これは単数形、複数形の使い分けについても同様に言えると思います。指している対象のものがただ一つのものなのか二つ以上あるものなのかをはっきりさせておくということを、英語人種は常日頃から行っていると言えます。
The は一言でまとめてしまうと「発言者(と聞き手)が特定できるもの」につく冠詞と説明されます。わかるようなわからないような説明ですが、例えば次のような文章では冠詞の違いがどのような意味の違いになるでしょうか?
1)
I am in the hospital.
2) I am in a hospital.
1)の場合は特定の病院施設に入っている、すなわち入院しているという意味になります。この文章から
the を省略して in hospital としても入院しているという意味です。これは
hospital が医療の為の施設であるという認識から、その
hospital にいるということはつまり入院しているという訳です。
では2)の場合はどうでしょうか。in a hospital となると医療施設ではあるが特定の場所ではない「とある病院の中」となります(これも100%適切な訳ではないと思いますが)。これは医療施設という意味合いよりも病院であるところの建物の中にいる、という意味になります。つまりただ単純に病院の建物の中に入っているというだけで、薬をもらいに来ただけかもしれないし、ただ間違えて病院の中に入ってしまっただけかもしれないのです。
もう一つ別の例を挙げると
3) Is there Mr. Smith ?
4) Is there a Mr. Smith ?
3)の場合には話し手がスミスさんを既に知っていて「(私の知っている)スミスさんはいますか?」と尋ねているのに対し、4)ではスミスさんの名前以外には確たる情報を持っていないということが
冠詞 a によりわかります。つまり「スミスさんという人はいますか?」 と尋ねていることになります。
私の父親の言葉を借りれば「モノの前に冠詞がつくんじゃない。まず冠詞があり、名詞が続くんだ。the
なら ある特定の対象を指す言葉としてまず the
があり、それを説明するために名詞が後に来るんだ」ということなのです。
冠詞は英語と日本語の考え方の違いが現れる典型のひとつでもあります。この程度の文章で説明しきれるものでもありません。なにしろ冠詞の説明だけで本ができてしまうのですから。
それでも私なりに思うことの一つは、冠詞を正しく使うには
まず話す対象に対して日本語の場合のような曖昧さを排除しなくてはならないということです。とても一朝一夕にはできませんが。
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