図書館員のコンピュータ基礎講座
画像データここでは、電子図書館を構築するための基礎知識として、静止画の画像データを取り上げます。 写真、印刷機とプリンタ【2010-07-04更新】
コンピュータで扱う画像の話をする前に、写真や印刷技術の話を簡単にしておきます。 写真話を単純にするためにモノクロ写真を例にすると、真っ白から真っ黒までの連続するグレーの濃淡の違い(連続階調)によって物を表現します。通常、写真はネガフィルムなどに非常に細かい銀の素粒子を並べた形で記録され、それを印画紙に焼き付けて作成されます。この銀の素粒子の密度によってグレーの濃淡を表現しているのです。 印刷印刷機(Printing Machine)、プリンタなどは、網点(Halftone Dot)と呼ばれる網状の小さな点によってグレー階調を表現します。階調とは、色や明るさの濃淡の段階数のことです。通常はひとつひとつの点に濃淡をつけることはできません。そこで、網点の大きさや密度を変えることにより、目の錯覚を利用して濃淡の違いを表現します。これを、ディザ法(Dither Method = 誤差拡散法、別名:ディザ、ディザリング)と呼びます。ディザ法には、主に次に紹介する二つの方法があります。
カラー印刷カラー印刷はCMYK(シーエムワイケー;Cyan-Magenta-Yellow-Key tone)と呼ばれる、シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、黄色(Yellow)、黒(Key tone)の四色の網点を使って色を表現します。減法混色(Subtractive Mixture of Color Stimuli)と言い、インクの色は混ぜると明るさが下がります。シアンとマゼンタが混ざれば青になり、マゼンタと黄色が混ざると赤、黄色とシアンでは緑になり、三色が混ざれば黒になります。しかし、三色が混ざると黒になるのは理論上のことで、実際には濃い茶色になってしまうため、三色に黒を加えます。 印刷の際には四色インクを混色して印刷するのではなく、四色の網点を重ならないように角度を変えて印刷します。すると、目の錯覚により色が混ざっているように見えます。
モアレ網点が適正な角度で配置された印刷物に近づいてみると、ロゼット・パターン(Rosette Pattern)と呼ばれる亀甲模様が見えます。一方で、網点が適正な角度で配置されないと、モアレ(Moire = 干渉縞)という現象が発生します。モアレとは、規則正しい模様が重なったときに発生する縞模様のことです。 適正な角度で配置された網点にはモアレが発生せず、ロゼット・パターンが見えます。 不適正な角度で配置された網点にはモアレが見えます。 ポイント
スキャニングした画像をそのまま見ていると分からないこともありますが、画像を拡大/縮小して表示すると現れることがあります。次の画像では25%でモアレが顕著に出現しています。
モアレの除去(目立たないようにする)には、次の方法が有効であると言われています。
ビットマップとベクタ【2010-05-29更新】
コンピュータで表現できる静止画像データには、ビットマップ・データ(Bitmap Data)とベクタ・データ(Vector Data)の2種類があります。ビットマップ・データは、ラスタ・データ(Raster Data)やペイント・データ(Paint Data)とも呼ばれ、方眼紙のひとつひとつの桝目に色を塗るような感じで、様々な色や濃淡の正方形を目で見ることがほとんどできないほど細かく網目状に並べて表現されます。 上記は、クラリスワークス(現在はAppleWorks)というソフトウェアを用いた作画のイメージ図です。図の左半分のように個々のオブジェクト(パーツ)を作成し、右の雪だるまのように組み合わせます。各オブジェクトは、作成後も自由に大きさや色や重なり具合を変えることができます。 ピクセル(画素)コンピュータで扱われるほとんどの画像ファイルはペイント・データです。ペイント系の画像は、コンピュータのモニタ上ではピクセル(Pixel = 画素)という様々な色や濃淡の正方形をタイル画のように並べて表現します。「ピクセル」という言葉はモニタの表示できる画像の最小単位としても用いられます。
解像度【2009-08-02更新】
解像度(Resolution)は、モニタやプリンタ、スキャナなどの表現力を示す尺度です。解像度という用語は二つの異なる概念に対して用いられます。ひとつは縦横のピクセルの数、つまり、画像のサイズを示すために用いられ、もうひとつは、ある長さにいくつのピクセルが入るか、つまり、画像の密度を示すために用いられます。前者を絶対解像度(Absolute Resolution)、後者を相対解像度(Relative Resolution)と呼びます。方眼紙の例で言うと、方眼紙自体のサイズを示す解像度と、方眼紙のメモリの大きさを示す解像度があるのです。
画像解像度(密度)の単位電子画像の解像度(密度)は、通常1インチの中に何ピクセル並ぶかで表現し、ppi(ピーピーアイ;pixels per inch)という単位で表します。300 ppiの画像は100 ppiの画像より高解像度な画像です。スキャナやモニタなどのピクセルで画像を表現する電子機器の解像度の単位はppiで表します。
これに対し、プリンタなどの出力機器は小さなドット(点)を使って出力しますので、dpi(ディーピーアイ;dots per inch)という単位で表します。一般的なレーザー・プリンタは300~800 dpiで、商用プリンタでは1,200~4,000 dpiでの出力が可能です。 ポイント ポイント
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※Photoshopでバイキュービック法により補間して作成した。 モノクロとグレースケール【2005-09-13更新】
主な色階調(色数)をご紹介します。 また、グレースケール(Gray Scale)と呼ばれる灰色を含んだ画像を表現する方法もあります。自然なグレーの濃淡を表現するためには、真っ白から真っ黒まで256通り(8ビット)のグレー色調があれば十分で、グレースケールは通常256階調で表現されます。 ポイント
カラー【2011-09-12更新】
カラー(Color)を扱う上で必要な知識として色の三要素があります。色の三要素とは色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Brightness又はLuminance)のことです。色相は何色かということ、つまり、赤だどか青だとかを意味し、彩度は色の鮮やかさ、またはくすみを意味し、明度は色の明るさ、つまり色の中の白や黒の量を意味します。
モニタに表示する場合、カラーは通常、RGB(アールジービー;Red-Green-Blue color model)と呼ばれる、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の三色を混色して表されます。加法混色(Additive Mixture of Color)と言い、モニタの色はインクと違って発光しているので、色を混ぜると明度が上がります。また、赤と緑が混ざれば黄色(Yellow)になり、緑と青が混ざるとシアン(Cyan)、青と赤ではマゼンタ(Magenta)になり、三色が混ざれば白(White)になります。 カラーの画像を表現するには多くの色が必要です。色階調としては主に次のものが用いられています。
256色では中間色を表現できないため、グラデーションを表現する場合、ディザ法で表示します。
色空間とカラー・マネジメント表現可能な色領域のことを色空間(Color Space = カラー・スペース)と呼びます。色空間には、次のようなものがあります。 Adobe RGBAdobe RGB(アドビアールジービー)は、Adobe Systems社が1998年に発表した色空間で、sRGBやCMYKよりも色再現領域が広く、DTPなどに多く用いられています。 CIE L*a*b*CIE L*a*b*(シーアイイーエルスターアイスタービースター、シーラブ = CIE Lab、正式にはCIE 1976 L*a*b*)は、国際照明委員会(Commission International d'Eclairage = CIE)が1976年に定めた色空間で、人間の可視領域内の全ての色を表すことができます。同委員会が1931年に発表したL*a*b*(またはLab)を改定したものです。L*は明度、a*は赤~緑の色相、b*は黄~青の色相を意味します。 CMYKCMYKは、商業印刷で標準的に用いられる色空間で、色再現領域は概ねRGBより少し狭いです。 sRGBsRGB(エスアールジービー;standard RGB)は、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission = IEC)が1998年に策定した国際標準規格(sRGB IEC61966-2.1)です。色再現領域は狭いですが、一般的なモニタ、プリンタ、デジタル・カメラなどが準拠しています。 YCbCrYCbCr(ワイシービーシーアール)は、ビデオ信号などに用いられることが多い色空間で、色情報を「輝度(Y)」、「青と輝度の色差(Cb)」、「赤と輝度の色差(Cr)」の3つの要素の組合せで表します。輝度は明暗の度合い(明るさ)を意味します。色の変化よりも明るさの変化に敏感であるという人間の目の特性を利用し、輝度に多くの情報を割り当てることにより、少ないデータ量で色を表現します。 同じ画像も、色空間が異なれば異なる色で表現されます。また、機器によって色空間特性が異なるため、モニタで表示した画像の色とそれをプリントアウトしたものの色が異なるなどの事象が発生することがあります。これを防ぐために、異なる機器間で表示色の統一を図る仕組みをカラー・マネジメント(システム)(Color Management (System) = CMS)と言います。 ポイント
ファイル形式とサイズ【2010-05-29更新】
画像データを保存するためのファイル形式には様々なものがありますが、よく用いられるものを紹介します。 ファイル形式※下記表のビット数に関しては、「モノクロとグレースケール」および「カラー」の項目を参照してください。 BMP/DIBBMP/DIB(ビットマップ、ビーエムピー;Microsoft Windows Device Independent Bitmap)はMicrosoft社が開発したWindowsの標準的な画像形式で、拡張子は.bmpや.dibです。DIBという画像形式もほぼ同じ構造です。RLE(アールエルイー;Run Length Encoding)という可逆圧縮方式を採用しています。最大ビット数は24ビットです。 EPSEPS(イーピーエス;Encapsulated PostScript File)は、ポストスクリプト・プリンタと呼ばれる高品位プリンタを対象にした画像形式で、拡張子は.epsです。最大ビット数は24ビットです。 GIFGIF(ジフ、ギフ;Graphics Interchange Format)は、アメリカのCompuServeというパソコン通信で開発された形式で、拡張子は.gifです。様々な機種のコンピュータで扱うことができ、小さいファイルサイズで保存できるため、データ転送などの通信用に適しており、ウェブサイト作成で標準的に用いられる形式のひとつです。最大ビット数が8ビットであるため、高画質な写真等ではなく、アイコンやイラスト等に用いられることが多いです。
LZW(エルゼットダブリュー;Lempel Ziv Welch)という圧縮方法により1/3程度までの圧縮が可能です。 JPEG/JFIFJPEG/JFIF(ジェーペグ;Joint Photographic Experts Group File Interchange Format)は、JPEGという組織が開発し1994年にISO/IEC10918として標準化された形式で、拡張子は.jpgです。非可逆圧縮方式を採用しており、1/5~1/30までの非常に高い圧縮が可能です。10分の1程度の圧縮率で保存すると人間の目では劣化が識別できないと言われています。これもウェブサイト作成で標準的に用いられる形式のひとつです。最大ビット数は24ビット(各色8ビット)です。 JPEG 2000JPEG 2000(ジェイペグニセン)は、JPEGの後継技術として開発されている次世代の画像形式ですが、JPEGとの互換性はありません。拡張子は.jp2などです。機能ごとにパートに分けて規格化されており、2001年1月に基本仕様であるPart 1がISOの規格になったのをはじめ、いくつかの仕様がISOやJISとして規格化されています。最大ビット数は48ビット(各色8~12ビット)です。 主な特徴は、下記のとおりです。
JPEG XRJPEG XR(ジェイペグエックスアール;Joint Photographic Experts Group eXtended Range)は、マイクロソフトが開発したHD Photo(エイチディーフォト、旧Windows Media Photo)を基に、2009年6月にISO/IEC 29199-2:2009として国際規格になったものです。拡張子は.hdp、.wdp、.jxrです。Windows Vista以降のWindowsに標準搭載されています。 JPEGやJPEG 2000と比較し、下記のような主な特徴があります。
PICTPICT(ピクト;QuickDraw Picture)は、Apple Computer社が開発したMacintoshの標準形式で、一般的な拡張子は.pctです。ビットマップイメージだけでなくベクタイメージも保存できます。最大ビット数は32ビットです。 PNGPNG(ピング;Portable Network Graphics)は、W3Cが推奨する画像形式で、拡張子は.pngです。GIFに替わるインターネット標準画像形式として今後使用されて行くと言われています。JPEGのように非可逆圧縮ではなく、256色しか発色できないGIFとは異なり、フルカラーをサポートしています。また、GIFと同じく透過やインターレースをサポートしています。最大ビット数は48ビットです。 主な特徴は、下記のとおりです。
SVGSVG(エスヴイジー;Scalable Vector Graphics)は、W3Cが作成したベクタ形式の画像を作成するためのXML言語、または、SVGで記述された画像形式で、拡張子は.svgまたは.svgz(gzip圧縮)です。携帯端末用のSVG Tiny(エスヴイジータイニー;Scalable Vector Graphics Tiny)という規格もあります。 TIFFTIFF(ティフ;Tag Image File Format)は、Aldus社が開発した(現在はAdobe社が管理している)形式で、一般的な拡張子は.tifです。DTPでよく用いられ、印刷に出す画像に使用することが多い形式です。TIFFには様々なバージョンがあり、読み書きすることが困難なのが欠点でしたが、1992年に「TIFF Revision 6.0」という形式が発表され、これが現在の標準形式になっています。1つのファイルに複数の画像をまとめて格納すること(マルチ・ページ)も可能です。最大ビット数は48ビットです。 WebPWebP(ウェッピー)は、2010年にGoogleが開発したオープン標準の画像形式で、拡張子は.webpです。ウェブサイトの読み込み時間の短縮などを目的として開発され、ウェブサイトで標準的に用いられているJPEG、GIF、PNGの置き換えを意図しています。PNGやJPEGよりも小さい容量で同画質の画像を作成でき、可逆圧縮されたWebP画像の容量は同画質のJPEGやPNGより25%程度小さくなるとされています。WebPは、可逆圧縮と非可逆圧縮の選択が可能で、透過やアニメーションをサポートしています。プログレッシブまたはインターレース表示はサポートしていません。最大ビット数は24ビット(各色8ビット)、最大サイズは16,384×16,384ピクセルです。 ポイント ポイント ファイルサイズ画像のファイルサイズは使用されているピクセル数と各ピクセルのビット数で決まります。例えば800×600ピクセルの大きさ(A4サイズぐらい)の24ビットカラーの画像は800×600×24=11,520,000ビット=約1.4MBにもなります。通信で画像ファイルをやりとりするためには、できるだけファイルサイズを小さくするべきです。画像ファイルはそれ自体、通常1/2から1/4程度の圧縮機能を備えていますが、画像の大きさを抑えたり、色階層を低くする方法も有効です。先ほどの800×600ピクセルの画像を8ビットカラーにするだけで1/3の大きさ(800×600×8=3,840,000ビット=480KB)になります。 ポイント IIIFIIIF(トリプルアイエフ;International Image Interoperability Framework)は、世界中で提供されている画像リポジトリの相互運用性の向上などを目指している国際的な枠組みです。2015年6月には国立図書館、大学図書館などによりコンソーシアムが設立されました。次のような仕様を公開しています。
IIIFのAPI仕様は、アーカイブ機関によって異なる画像の操作方法(領域、サイズ、回転、品質特性の指定など)を標準化し、APIで扱えるようにするものです。それにより、1つのビューアーで複数のアーカイブ機関が提供する画像を扱うことができ、異なるアーカイブ機関の画像を比較するために並べて表示したり、画像にアノテーション(解題、コメント、フル・テキスト)を付与することもできます。このビューアは、誰でも開発することができ、既に無料・有料のものが複数存在しています。
参照・参考文献
CyberLibrarian : tips on computer for librarians, 1998-
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