第2話 サックスとの出会い

 その名は、テナーサックス。
 意外と簡単に音が出たのがこの楽器を吹きはじめた一番のきっかけでしょうか。指使いもリコーダー(たて笛)と同じようだし・・・。やってみると「ドレミファソラシド」と音が出る。左親指にあるキーはオクターブ・キーかな?わからない指使いは、教則本を見て・・・等など、この楽器の操作性の良さにとりつかれてしまいました。
 しかし、実は、トランペットの格好良さが忘れられずに、ニッカンのトランペットを親に買ってもらい(サクソフォーンは高価で買えなかったのが本当かな?)、「夜空のトランペット」や「巨人の星のテーマ」を田園風景に向かって吹いていました。なんとも気持ちのいいものでした。実際にでてきた音はすごい音をしていたのでしょうが、本人は最高の気分の中で吹いていました。ところで、ブラバンでは、「海兵隊」をはじめての曲として練習したように記憶しています。「タッタカタ、タッタカタ、・・・」今、考えてみても恐ろしい音と和音の洪水だったでしょう。
 中学校では、全日本吹奏楽コンクールのレコードも忘れ難い出会いのひとつです。ソニーレコード(現在のソニー・ミュージック・エンターテインメント)からそのレコードは出ていました。そのなかでも豊島十中(東京都)の「シェエラザード」(リムスキー・コルサコフ作曲)の演奏が二十年以上経った今でも甦ってきます。原曲のオーケストラでは、ソロ・バイオリンが演奏する「シェエラザードの主題」を2本のアルトサクソフォーンが巧みに吹くのです。その魅力的で、攻撃的で、しかし一糸乱れぬ息の入れ方と深いビブラートは、私にとってはあまりにもセンセーショナルなものでした。その当時、何度も聴いた覚えがあります。このほかにも、このレコードには名演がいくつもありました。秋田・三王中の「幻想交響曲」(ベルリオーズ)、浜松工業高「マスク」(マクベス)等など。さすがに全国大会に出てくるところは「すごい!」のひとことでした。中学・高校と吹奏楽を通して音楽に親しんだ私には、また新たな出会いが待っていました。(つづく)

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