第1話 吹奏楽との出会い

 私が初めて吹奏楽で使われる楽器を目の前にしたのが、小学生の頃でした。実家の裏に住んでいた中学生が庭でアルトホルン(今では吹奏楽ではあまり使われていない楽器で当時はホルンの代役として活躍していた)を吹いているのです。巧みに楽器を操るその姿を見て、中学生になったら私も楽器を吹くぞと意気込みました。小学生のときは鼓笛隊(いわゆる、たて笛、打楽器、ベルリラの編成)で中太鼓を叩いたことぐらいでしょうか。鼓笛隊で太鼓を叩くにはオーディションを通らなければいけないのですね(音楽の道は厳しい!)。自分としては、小太鼓をやりたかったのですが、「ウン、タタ、タンタン、ウン、タタ、タンタン」のリズムがすぐには叩けず、それよりリズムが簡単な中太鼓にまわされたのです。でも、その時の経験は今でも忘れません。
 中学に入るとすぐブラバン(ブラスバンドの略。その当時は、吹奏楽のことをそう呼んでいた。厳密に言うと金管合奏団の意味だが、横文字の好きな日本人にとっては、ハイカラに聞こえたのでしょう。)部の門を叩きました。めざすは、アルトホルン、輝かしいトランペットもいい。当時、ニニロッソの「夜空のトランペット」や星飛雄馬が登場するアニメ「巨人の星」の主題歌が流行っていたので、トランペットに心は向いていた。さて、楽器を決める段。今も同じようなことをやっている部が多いとは思いますが、楽器を決める時には、一応全部の楽器を吹いて、後は先生が決めるというスタイル。フルートは、息の音だけで、あの美しく澄んだ音は出ない。とにかく息が足りない。目の前真っ暗って感じ。フルートのマウスピースをアクアラングのようにくわえていた人もいたね。金管も唇を振動させてと先輩から説明を受けるがニニロッソのようにはいかない。かえるのように頬を膨らます人も(でもそのスタイルで演奏するプロもいることを後で知る)。クラリネットは息苦しい。そんな時、3年生が吹いている楽器(3年はもうすぐ引退なので)に出くわしました。指使いもリコーダーと同じ。その楽器はクラリネットのように息苦しくないし、それでいて、トランペットのように輝いている。「う〜ん」これはいけると自分自身で決めていました。その名は…。(つづく)

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