4、【訪問記】

4−1、総合的な学習を視野に入れた視察

   2002年に施行される学習指導要領では、「総合的な学習の時間」が設定され、学習活動の例として、「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」が挙げられています。
   正直なところ、断片的に聞こえてくる情報をとらえて、「コンピューター、コンピューターと言うけれど、どう使うの?それより使ったことが無いよ」「自分が分からないのに、英語教えるのなんて、無理だよ」というのが、自分を含めた小学校現場での感じ方だと思います。

今回、海外教育視察の募集に際して、総合的な学習を視野に入れながら、「英語を母国語としない国から来た子どもたちに英語をどう教えているのだろうか?」「コンピューターを学校現場ではどう利用しているのだろうか?」「学習内容として、『総合的な学習』あるいは『それに近いもの』があるのだろうか」などを目的として応募をしました。
   現地での3日間の視察の中で、「あれもこれも」と欲張ったために、1つ1つを突き詰めて学べたとは言えませんが、聞いたこと、見たことを報告したいと思います。

@学校におけるコンピューターの利用
    コンピュータを学校で活用することを考えた時、大きく2つの活用法があると思います。1つは、「学習活動としての利用」であり、もう1つは「事務処理としての活用」ですが、ここでは、学習活動の中でコンピューターをどう活用していたかについて報告します。

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  上の写真は、学習活動の中でのコンピューター利用ですが、調べたものをレポートにする活動(1)、コンピューターソフトを利用しての調べる活動(2・3)、VTELと呼ばれるテレビ電話的な双方向の伝達機能を持った装置による交流活動(4)、インターネットを使った活動(5)、技術習得の活動(6)を、今回、見ることができました。

   1〜3は、違うクラス(学校)ですが、ラミラダの小・中学校には各クラスに少なくとも3台(すべてマッキントッシュ)の本体と1台のカラープリンターが配置されており、子どもたちは、低学年から思いのままに楽しそうに使いこなしていました。ソフトは、辞典・図鑑、お絵描き、音楽などでしたが、画面が動き、音が出る。何度も書き直しや書き足しが出来る。などが子どもたちを引き付ける要因になっていることを実感しました。4の設備はグローバルスタディーの実践校に配置されていたものですが、市内の学校間だけでなく、オーストラリアなど海外の学校とも交流をしたとのことでした。また、5のような外とのつながり(インターネット接続)は、現在のところ学校の中でも数台にしかなされていないが、近い将来に全てのコンピューターを接続するとのことで、その準備7が進められていました。
   さて、ここまで学校現場にコンピューターが根づいているのは、子どもたちの興味・関心を受け止めることのできる、機械とソフト、そして教師がいたからに他ならないでしょう。とはいえ、全ての教師がコンピューターをもともと扱えたわけではなく、当然のことながら、研修をつんでの結果です。その教師をトレーニングするのが、教育事務所にある教師トレーニング室のコンピューター担当者とコンピューターたち8です。

A教科の枠にとらわれない学習
    「総合的な学習」「総合学習」についての視察が今回の大きな柱でしたが、このことを尋ねる時に、「general」という言葉を使って尋ねたのですが、意味が通じませんでした。そこで、内容に関わることを話して「それを何と言うのか」をたずねたところ、「クロスカリキュラム」という言葉が返ってきたのです。(日本でいえば「教科横断」「合科授業」のどちらかが訳としては近いのだと思います)
   この「クロスカリキュラム」の授業について、「どういう形で、あるいは場合に、これがなされるのか」をある小学校の先生に質問したところ、「Eveytime」という答えが返ってきました。授業を組み立てる時には、1つの教科だけでなく複数の教科が入れられないかを、常に考えなければならないそうです。そして、このことはラ・ミラダの小学校に採用された時に、「最初に言われた」ということでした。実際、見学のために教室に入ってすぐに「○○の授業」と分かることは、ほとんど無かったと記憶しています(ただし、時間割は教科の名前で組まれていた)。
  カリキュラム(指導内容)」についてふれると、「カリフォルニア州のカリキュラム」があり「ノーウォーク・ラミラダ教育事務所のカリキュラム」があり「その学校のカリキュラム」がありました。ガーデンヒル小学校1年生のカリキュラムを見せていただきながら話を聞いたのですが(別刷り資料参照)、「その学校(学年)のカリキュラム」は該当学年の先生たちが、年度初めの休業中に集まり作ったそうです。そして、週に1度、そのカリキュラムの遂行状況について、学年でチェックをしているとのことでした(1)。

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   見学した授業の(2)は、その学年の1年生と5年生が一緒に授業をしているところです。毎週金曜日に行っているそうですが、学年の初めに組んだペアーで、調べ学習をしたり、本を読んだりしているとのことでした。1年生は知る(教えてもらう)喜びを持ち、5年生は、してあげられる喜びを持てるそうです。ペアーをBUDDYと呼んでいましたが、組む際は個々の性格などを十分に検討した上でだそうです。(3)は、自分たちが調べたことを発表のためにまとめているところです。教室の中にいろいろなコーナーが設けられ、コンピューターで文を作ったり、絵を描いたり、紙を切ったり張ったり、などをして、自分たちの発表にふさわしい表現方法を検討していました。
   こう見ると、「クロスカリキュラム」というのは難しく考えなくて、日本でもこれまでの授業実践の中でかなりの部分やってきたと言っても過言ではないでしょう。

B英語が母国語でない子どものための英語教育
   「総合的な学習」では例として、「国際理解」ということが挙げられ、その中で、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるようにする必要があると述べられています。「1番身近な外国語は?」と尋ねられると、多くの人が(自分を含めて)「英語」を頭に思い浮かべるでしょう。つまり、「体験的な英語の学習活動」が真っ先に考えられることは想像に難くありません。そこで、移民の国であるアメリカ合衆国のラ・ミラダで、英語を母国語としない子どもたちにどのように英語の指導がなされているのかを尋ねてきました。これが、小学校で英語に親しむことに結び付けられると考えたからです。
   英語を話すことが出来ない子どもたちには、ELD(English Language Direction) プログラムが与えられ、このプログラムにそって1日に1〜3時間授業がされなければならず、その指導にはELDのトレーニングを受けた教師があたるのだそうです(ちなみに、もしそのトレーニングが伊勢原の教師に必要ならば、いつでもトレーナーを派遣すると言って下さいました)。   指導は、物を指で触ったり簡単な歌や本を使ったりしながら、5〜7年をかけて指導をするそうです。

C地域社会との結びつき
   総合的な学習とは直接関係が無いのですが、今回の視察で地域社会と学校が強く結ばれているのを感じたので、何かの参考になるのではと思い、報告します。

<なわとびによる募金集め>
   市内の小学校で、ユニークな方法で(日本人からすると)心臓疾患がある子どもたちを救うための募金集めをしていました。どういった方法かというと、子どもがなわとびをすることを条件に、家族や地域の人から寄付をしてもらうのです。例えば、「僕は毎日50回なわとびをするので、それに対して5ドルを寄付して下さい。」と言って、家族や地域の人でその条件でお金を出してくれる人を探すのです。なわとびは、休み時間に全校一斉でおこない、その日の結果を自己申告で寄付者に伝え、お金を受け取り、翌日学校に持って来るのです。ガーデンヒル小学校では、学校としての目標金額をはるかに越えた額が集まったので、朝会の時に、校長先生がその喜びを、パフォーマンスで表していました。(1)
<朝会を通して地域に発信>
   上記のガーデンヒル小学校の朝会(1)ですが、この朝会は、だれが来てもいいそうです。見学の日は特別だったのですが、普段の朝会は、校長先生が、次の1週間学校でどんな行事があるか、学校をどう運営して行くかについてなどを述べるそうです。つまり、学校で何があるのかを地域の人たちが知りたければ、朝会の時に来ればいいのです。地域の中の学校の1つの例といえるでしょう。

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<ボランティア>
   上の写真(2)の左から2番目の女性は、この学校の保護者で、日本からご主人の仕事の関係で来られた方です。どうして、この場にいらしたかというと、学校から「日本から先生が来るので、ボランティアの通訳をしていただけないか」というお願いがあったのだそうです。また、スペシャルデイクラスに介助のボランティアの方が来ていた学校もありました(3)。

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