非文学的歌詠み


(2017年秋冬)


 あこがれの君を思うてみるときは、忘我の時か回顧の時か


 お祭りに人の集いて賑やかに 日常忘れ遊ぶはいつも


 屋台波 美味し匂いに導かれ 腹の欲望抑え難くに


 信号に早く行けとば急かされて 疲れし足は休む間もなく


 ひなたぼこ朝の冷たさ行き惑い光を求め温もり求め


 きれいとはほめ言葉でなくとりあえず言ってみただけ心にもなく


 屋根に積む白雪寒し冬の朝 防寒対策出かけし吾は



(2017年冬春)


 暖弱く部屋の中でも厚着する 冬の準備はいつまでもせず


 鼻すする美女の憧れ失われ 色気も消えし花粉症では


 落葉掃き きれいを喜ぶ心根と 人世の汚れも流してしまえ


 ドア閉める音も猛々乱暴に 女らしさのかけらも見えず



(2016年夏〜冬)


 掛詞 伝統文化も今様は、単なる駄洒落 オヤジギャグなり


 この命あと何年は生きれるか、悔いを残して置き去りにして


 憧れは一人勝手に思うだけ、思われもせず記憶から消え


 無為に過ぐ朝の空気の嬉しさよ 何も持たない贅沢さかも


 パズルするカレンダーへの予定はめ 義務と好みの日程調整


 ひもじさも慣れればいつか愉しきと 逞しくあれ遊楽なれと


 聞く耳を持たぬ男に語りかけ 答え求めぬ質問ばかりを


 雨後の日の霞たなびく山裾の まばらな人家静かに時過ぐ


 見てくれを気にするほどでないけれど 鏡の自分 年老いわびし


 裏路地を曲がった先に幻想の記憶現れ我に何問う


 見上げれば木立の精気 陽をさして 悲観な想い孤独に耐えて



(2016年冬春)


 朝靄に浮かぶ自然の冷たさよ、慎独我に行く末見えぬ


 ナビの出すこっちが近いと指図する、反骨心が従い難し


 考える余裕のないとき指図され 無為に過ごすは日常茶飯


 人生の残り時間に読む本は、駄文ばかりで無為に過ぎ行く


 花育て 飾る努力は羨まし、その心根も美しくあれ



(2015年秋)


 水遣れば生気漲る草木の健気な姿 我を励ます


 憧れは短き言葉で表せし 内に秘めたる熱き純情


 納得は真実以外で得られると 訳知り顔の年寄り言わん


 近道と思う錯覚 距離延ばし いつも人生 遠回りしつ


 さざ波は風の紋様 木洩れ日は陽の恵みなり 落葉踏みしめ


 仕事のみスカスカ人生何残る 偉ぶる人に教訓生きず


 同情は爲にならないことありて 優しさだけで生きて居れない


 中空に月のかかりて橋渡る 今日の成果も夢と消え行く


 菊並び 明けの明星 出迎えし 冷えた空気の日差し待つかは


 小銭寄付 小さな力 寄せあえば 共存共栄 小我を越えて


 世の中の主役は女性 男子には 生かされながら何の意義ある


 雲けぶる山の手前の白帯が街を覆いて汚れを隠し



(2015年春夏)


 いいなあと羨む気持ち失せにけり、生きる楽しみその他に求め


 枕辺に積りし本の読みきれず、時間はあれど残り少なし


 待ち時間 効率悪く遣り過ごし 無為に浸るも楽しからずや


 延び上がる草木の強きしなやかさ わが精気の衰え寂し


 奇をてらう流行りに名を馳せ驕る人 陰徳陽報 我はこの道


 財産を持たぬ残さぬ子どもには自分で働き食いぶちつなげ


 雨の中 鳩が啄ばむ餌探し 雨宿りし蚊に刺されつつ


 葉が落ちて また蘇生する大木の 命は人も同じものかな


 枕辺に積ぐねし本の嬉しさよ 生き永らえる糧を得しかな


 親願う 世間並とは 笑えかし 人の目気にして生きては行かぬ



(2014-2015年冬)


 腰曲げて歩く姿は痛々し、明日の我が身を映すが如く


 誰がいま人の道説く偉そうに、生老病死の途さえ知らず


 暗き朝 ヘッドライトに照らされて、寝ぼけ眼は夢をも出でず


 底冷えの家を飛び出し今日もまた、さすらう訳は誰にも知れず


 朝市の人波湧き出で行列が好きで賑わう騒がし人らは


 思うごと 腹のたつことばかりあり 我が家の伝統 築けぬままに



(2014年夏秋)


 かまびすし小鳥囀ずる窓の外、気象予報か世情不安か


 雑草の強き意欲に見習いて、我も生きたや負けじ魂


 朝日浴び 深き緑に懐かれて 虫に遊びし風に歌いし


 束の間の唄に癒され振り返る過去はいつでも美しくある


 落ち葉舞う 風強き日の朝ぼらけ、木々はざわめき 鳥は喚きて


 秋の日にロングスカート翻し、何を夢見る乙女の朝は


 軽やかに靴音鳴らし通り過ぐ、ビジネスウーマン肩肘張って


 釣り銭の小銭集めて使うのみ、寄附する気持ち あってもなくても


 慰みに 書を読み音に戯れし、今日を忘れて 明日を夢見ず


 聞こえしは胸の鼓動の打ち続く、我が寿命のはかなきを泣く



(2014年春)


 成果なく疲れし後の反省をいつものように繰り返すのみ


 自堕落か貧乏性か節約か、環境配慮も只のケチかな


 川柳は羨ましいと思えども、蛇足ながらも言葉継ぎ足し


 大木を見つめ続けて抱かれる、浮世の時は風に流れて


 来ぬ人の出会い求めて待ち飽きて、今日また生きた明日また続く


 雨上がり 空晴れ渡り 草は立ち 水は急ぎて 風強きかな


 新緑の 朝の陽向に誘われて 山に向かいし一人ドライブ


 サワサワとポプラ並木は風を食み、泰然自若と夏の陽浴びて


 美意識にこだわり持ちて人知れず、唯我独尊 楽しく生きる


 眠られず 立ち上がれずに 曲流し、のらりのらりと 浮世嫌いて


 顔の肉 口角上げて 笑み作り 見てくれ直す 大人の心得


 流行の噂話に逆らいて、人は移ろい時も移ろう


 暑き夜に本を読めども眠られず、子守唄さえ誘えもせずに


 夢を買う、安心を買う、涙買う、価値あることに金は注ぎて



(2014年冬)


 グズグズと風邪の鬼神に押しきられ、体調管理の甘き自分は


 眠られぬ夜を数えて今日もまた、若き過ち 今さら悔ゆる


 うかうかと 1年過ぎて 居場所なく 映画・音楽に 読書・講演と


 こだわりの安物買いを自慢する、病気自慢と同種の歪み


 寒き夜に 暖房器具で 暖める 生身の肌の 恋しからずや


 雨の日の姫な可愛さ忘られず、愛しき時を思い出しつつ


 文字に飽き 音にも飽きて 寝れもせず 風に脅され 月に笑われ



(2013年夏秋)


 うるさくも夜明け前から蝉の音に 呼び起こされし夏の始めに


 暑き夜の浅き眠りの朝迎え 汗疹爛れし掻くも耐えれず


 月欠けて 受け口人の俯きし 帰りたくなき 寄る辺方なく


 グズグズとヤル気・意欲を先のばし、貴重な時間 無駄遣いせし


 スズメ鳴く 目覚めのときに遊びたる、今日の予定を思い出しつつ


 機械音 腹をたてても 始まらぬ、便利を得ても 人情見えず


 肌合わぬ 化学繊維に 静電気 温もり持たぬ 時代の中に


 野良猫の愛想笑いに付き合いし、小春日和の悩めし日には


 水鳥の水紋広げ行く先は、憩っているの 頑張っているの


 女ども 嬌声高らか 賑やかし 家族の平和 寛ぎのとき


 祈れども 不安ばかりが 増して来る 強き心は 望むべかりし


 洗濯し 何か楽しげ 鼻唄を 諳ず妻の 朝の日課は


 一枚のLPレコードで 我一人 今日一日を生きつなぎゆく



(2013年春)


 緩やかに時は過ぎ行き、悲しみは癒える間もなく襲いかかりし


 うす寒き 春先雨の濡れた道、時を待てども 開花はまだ来ぬ


 春の雨 うつらうつらとラジオ聞きながらうとうと 至福の時を


 このクシャミ 花粉症なの 風邪なのか。誰も知らねど 辛きことかは


 寒き身を 自ら抱きて 侘びしけれ、温もり求め 住処恋しき


 虚か実か 昔のことは夢うつつ 忘れたいのか無かったことか


 子らが舞う 夕暮れ時の公園で 家路に向かう家族連れらは


 晴れた日の 鳥の舞い飛ぶ水辺にて 嬉しささえも 忘れし夏に


 一人飯 母の手料理 忘れたが 愛なき妻の出来合い料理


 ポリポリと関節まわし解せども、気分も晴れず、凝りも取れずに


 しとど降る 雨に愁いは なけれども、急き立てられて 振り返られず。


 降り続く 予定なき日の つれなさよ、コールすれども 逢えもせぬとは



(2013年冬)


 物言わず 姿も見せず 影法師 汝いつから 魂抜けし


 君見ずや ハウスダストの堆く 辺り一面 ゴミの屋敷か


 ゆるゆると人生見つめ歩を進め、今日の洗濯、明日の片付け


 打ち震え 蒲団の綿の抜けし身は、部屋の寒さが肩から凍え


 凍てつきし朝満月の悲しさよ 家族の愛情 姿に見えず


 息切れし わずかの運動 日常の 悲しき現実 覚悟の足らず


 指先の冷たき朝の通勤は、いつまで続く 春はまだ先


 愛しくも貧しき胸の人なれば 欲情時は途切れ途切れに


 霙降る 冷たき朝に備えしは、形ばかりで思い至らず


 何気なく 爪先立ちて筋肉痛、損な生き方 自責に甘い


 夜明けても 今日も一人の旅路では、予定のあるは最初の方しか


 枕辺の読書の癖は苦になりて、五十肩には勝負にならず


 強張りし身体の老化 詮無くて、柔軟性は過去の栄光


 死生感 射精するたび身に滲みて、我が心臓はいつまで耐えしか


 排泄の臭い充満 年寄りは、忌み嫌えども いつか自分も


 毛玉取る 人は無かりし 気付かずに、見てくれ気にす 歳でもなくて


 湿りける布団の上の感触は、寂しい限り 諦めて寝る


 歳により時のスピード違ってる、悲しいけれど待てない性分


 エロ話 文字読むだけで 欲情す、男の性はカワイイものさ


 妻がいつ 離婚切り出す 退職後 そっと窺う 夕餉の準備



(2012年冬)


 しまい込む 大切にする 無駄にして 執着心は アダなものかは


 冬来たり 鼻水すすり くしゃみして 足から冷える しんまで冷える


 街灯に夜明の遅い冬の朝、今日も生きてる 働きに行く


 信号の青の点滅 急かされて、気ばかり急いて 体伴わず



(2012年秋)


 行き過ぎて裾風薫る夏の朝、今日の元気を明日の憩いを


 道ばたの花の名前は知らねども、可憐な姿 物思う時


 スマイルでつなぎし絆 永遠に、誓いし記念 文化の日には


 花畑 眺めし人の背に向けて、呼び掛けてみし秋晴れの日に


 朝まだき、駅へと急ぐ夜明け前、雨降る路上、夜かの如く



(2012年春)


 いとおしく妻を抱くとき夢想する、吉永小百合 思わば思え


 毛クズ取る気づかいもなき女と共に、暮らす限りは諦めるのみ


 義務果たせ、忙しいのは誰でもよ、人の迷惑 考えるべし


 大切なこともしばしば忘れしは、仕方ないねと諦めること


 汗ばみて熱弁ふるう政治家の言葉は空虚ならざりしかな



(2012年冬)


 ハッピーバースディ♪歌ってくれるは携帯のみ、一人で過ごす誕生日には


 寝間にまで冷気の横暴忍び込み、独りの寒気心まで凍え


 薄闇の街灯照らす裏道に落とす無念の昨日の作為


 明けきらぬ夜の帳に思うほど今日の勤めもまた哀しかり


 大寒の人肌恋し冬の夜の、怖き夢見て眠りにつけず


 推し測る他人の嫌悪気が付かず、言わずもがなの指摘し過ぎて


 脂粉の香 タオルに染みて気づく日の、幼き憶え母の匂いか


 春偲び寒さに耐えて過ごす日の思い出抱き生きるものなり


 小雨降る 来ぬ人待つは長けれど、老いさらばえて夢にも逢えず


 おぼろ月 なぜに今宵は顔見せぬ、いとしき人の姿隠して


 触れもせで 唇近く 感じれど、こころ遠くに あなた人妻


 丸くいて 艶けき瞳 見つめられ、虜になりて 忘れられずに


 寒き夜に 一人で過ごす わびしさよ、どこにも行けず 誰にも会えず


 新聞の文字の多さにウンザリし、政治に怒り 事故に涙す


 行くだけの男の性は余裕なく、愛情などは なきかの如く



(2011年冬)


 喫茶店(サテン)にてモーニング食す兄妹の親の事情は何するものぞ


 喫茶店 ヒソヒソ話 アベックは怪しからずや昨夜はどこに


 喫茶(この)店のゆで卵 殻むきにくき、失敗だった この店やめた


 朝まだき一人新聞読みうつつ、あさげの仕度なき食卓に


 底冷えの冬の外出哀しけれ家族の団欒見出だせもせず


 冬の陽の蜜柑と過ごすまだろきも、時の流れはゆるりゆるりかな



(2011年秋)


 月影に交わしくちづけ夢のごと、追い求めどもはかなく消えし


 深夜起き、風呂入り直し、また、い寝ず。疲れの残滓、行方知らざり


 憂き雨に遣らずの恋の亡き跡を、想い暮らすも忘れしものを



(2011年夏)


 むせ返る揚げ物の匂い漂いし、新開地では今も昔も


 やり残し、夏の終わりは悲しけれ、宿題にしろ遊興にしろ



(2011年春)


 温き日の川面に浮かぶ水鳥の可憐な姿、はかなきものを


 朝寝して夜の入眠ままならず、哀しみ癒えずも希望を抱きて


 主なき庭に栄える新緑の育ちゆくのも命なりけり


 座して待つ、指導力なきリーダーの迷惑千万、部下は悲しや


 花も見ず歌も唄わず行く春の床にい寝もす愁いを抱きて



(2011年冬)


 マスクして、曇りし眼鏡に吹きかけし、寒き朝の通勤時に


 逢いたくも永き空閑耐え難し、残り香求め枕濡らして


 仕事では生産性を追求し、休みの日には浪費ばかりを


 他に望む前に自ら反省し、動き出せたら苦労はしない


 声に出し言ってみれどもこの空気、嵐のあとの静けさの如



(2010年秋)


 蕎麦啜る胸のリボンの淑やかさ、背筋伸ばして育ちの良さは


 掌握も予測も出来ぬ綱渡り、指揮をも取れず、不甲斐なきかな



(2010年盛夏)


 羞じらいて化粧で隠す汗くささ、好悪超えて生きてる限り


 黒き衣に隠し通せず目立ちおり、女らしさの匂い立つ陽は


 日傘差し白きかいなに隠し持つ、角か刃物か静かに深く


 認知症、学ぶ自分も遠くなく、老人避けて世事に追われつ


 家事休み、家守るとは何をせん。今夜も一人過ごし行く日は


 埃積み、人のせいではあらねども、誰が働き誰が無作為


 労働は時間ばかりで測れまじ。辛きことのみ多かりきぞよ



(2010年初夏)


 夜の雨、涙に濡れて哀しけり、遠く離れた人を慕いて


 切なさを作り笑いで隠しても、ぎこちないままハニカミ残し


 港から潮風に乗り流れ来る、恋は何処へ向かうものやら


 おしゃべりがむなしく聞こえ、応えなく、想いは彼方に流れ漂う


 橋を越え、行き着く先のレストラン、若き喧騒語るを得ずも


 歩くだに汗が吹き出てくたびれり、都会に雨は降らざりしかな


 情熱は失せて久しき齢なり、盛夏の記憶、彼方の海に


 雨の日の忘れた頃のアンニュイに、意思に反した体の重さよ


 来てみれど、女らしさのかけらなく、行く末の先、救い難きや


 抱きたくもつかめぬ心速く過ぎ、目にも留まらず、行方分からず



(2010年春)


 春のあめ、しず心なく流れ行き、うつつの涙は苦かりしのみ


 うららかな薄紅色の花吹雪、いずこに在りや、吾の来し方


 朝なぎの岸辺に寄する波少し、語るを得ずも、小鳥さえずりし


 寄り難き眠りし君のほつれ髪、こもれ陽のごと眩しき時間


 不眠さえ枕のせいと理由付け、夢想に耽る夜のしじまに


 春のあめ窓に水滴あと残し、恋しき想いつめあといずこ


 ネトゲなる流行の遊び挑みてし、過ぎ行く時のもったいなかりし


 鏡見入る君の眼差しあどけなく、ときめく想い押さえ難きに


 花薫る笑顔の園の傍にいて、待つともなしに物思いけり


 寄り添えど乙女の涙触れもせで、笑ってごらん古傷放ち








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