上信国境の入山峠に残る古道跡2 地図はこちら

左の写真は道跡の残る尾根に入山峠への旧町道が合流した付近ですが、写真の道は旧町道ではありません。旧町道の合流点から北側の沢に向かって緩やかにカーブしながら下っていく道になっています。写真の道はこの下の沢を渡る付近で判然としなくなります。この道は感じの良い切通道ですが方向性から考えると古道ではないように思われます。

尾根上に上がってきた旧町道は右写真のような舗装部分と未舗装部分が入り交じる道となり峠へと上って行きます。4月後半頃のこの辺りの山は広葉樹の葉も出始めたばかりで視界も明るく、付近の特徴ある妙義の山容を望むことができます。

ここで入山峠に向かう道を整理して起きます。
碓氷バイパス・・現在の国道18号線の車道
旧町道・・・・・・バイパス開通以前の峠道
古道(道跡)・・本来の入山峠道

旧町道の南側の尾根を注意深く観察すると、かっての道跡と思われる凹地状の地形が幾筋も見られます。尾根全体に並行した数条の道跡が確認できるのは、昔は相当な交通量があったことを物語ります。
入山峠の道は古代東山道のルートとも考えられていますが、その後の時代も断続的に使用されていたと思われます。鎌倉・室町時代の中世にも峠越えの道として機能していたといってもよいのではないかと思います。

入山峠古道とその道沿いには古代末期から中世頃までの考古学的資料や伝承などは決して多くはありません。この古道が鎌倉街道と呼べるのかは大いに疑問があると私自身も思っています。しかし右の写真のような掘割道は鎌倉街道などの中世古道の道跡の特徴を感じさせてくれます。古道探索には恰好の資料が残された峠越えの道だと思うのです。

左の写真に見える白いガードの橋の下には碓氷バイパスの道路が通っています。橋のところでは旧町道の通る尾根をバイパスが横断し、深く大きく切通しされた車道があるわけなのです。上の写真に見られる旧町道に沿うように残る古道跡も、橋のところで切通され、橋を渡った向こう側の切通上にも同じように続いているのでした。

碓氷バイパスを橋で渡った後はまたしばらく右の写真のような旧町道を進むことになります。旧町道も完全な未舗装となり林道のような道が続いています。この先、進行方向左手に再び碓氷バイパスの道路が並行して通るところに出ますが、碓氷バイパスはカーブしているために旧町道とすぐに離れて行きます。旧町道は山の中へ真っ直ぐ進んで向かっています。

左の写真は入山峠に上って行く旧町道ですが、この写真の右側のガードを跨いで峠への古道が旧町道と分かれて上って行っています。ただその入口はほとんどわかりません。旧町道はこの辺りから南に大きく蛇行するように峠へと向かうのですが、古道はここから急登で峠へと上がって行くのです。私はここからの古道の入口が初めて来たときにわからず旧町道で峠まで上って、逆コースで峠から古道跡を辿ってここまで下りてきました。しかし古道の説明は便宜上ここから上って行くことにします。

上の写真の右手の山林の中へと藪こぎで入って行くと一本の沢に出ます。沢に出たところからは峠に上るのにはどう進んだらよいものか全くわからなくなります。私は一度、旧町道で峠まで上り、踏跡を頼りに何とかここまで下りてきたので、おおよそのルートは把握することができました。沢に出たところからの道筋としては、沢沿いを遡るものと、沢の北側の尾根にしばらく上り途中からトラバースして行くコースが考えられそうです。右の写真は沢沿いに残る掘割道の跡と思われるところを撮影したものです。

それにしても入山峠古道がこんなに廃道化してしまっているとは私個人は複雑な思いでありました。今この峠道は人が通れるところではありません。このホームページをご覧になって、ここの古道を尋ねてみたいと思われた方が居られた場合、その方が相当山登りに熟知している方である場合以外は入山をお薦めできません。ハッキリ言ってかなり危険なところです。
左の写真は道跡が沢から尾根に移っていく付近のものですが、明らかに、かっての道の跡であることが窺えます。

実はこの峠道を尋ねるにあたって、気掛かりなことがあったのです。私が山岳会に明け暮れていた15年以上も前の軽井沢近辺のハイキングマップには、峠への古道はハイキングルートとして記されていたのですが、最近購入したハイキングマップには入山峠への道としては、碓氷バイパスと旧町道の道しか記されていなかったのです。もしかして、この古道はハイカーからも見捨てられてしまっているのではないかという予感で、現在では果たして道があるのだろうかという不安でした。

その不安が見事に適中してしまったのでした。それにしても、この現在人から見捨てられた峠道の姿は、哀れというか、悲しいというか、私自身どう表現したらよいものか戸惑いを感じてしまいました。ただ何と言いましょうか、耳を済ませていると、どこか歴史の彼方から悲痛な叫びの如く囁きのようなものが聞こえて来るような、そんな気がしないでもありませんでした。

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