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22.3652 23.仙台ぐらし 24.PK 25.夜の国のクーパー 26.残り全部バケーション 27.ガソリン生活 28.死神の浮力 29.首折り男のための協奏曲 |
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終末のフール、陽気なギャングの日常と襲撃、フィッシュストーリー、絆のはなし、ゴールデンスランバー、モダンタイムス、あるキング、SOSの猿、オー!ファーザー、バイバイブラックバード |
キャプテンサンダーボルト、火星に住むつもりかい?、ジャイロスコープ、陽気なギャングは三つ数えろ、サブマリン、AX、ホワイトラビット、クリスマスを探偵と、フーガはユーガ、シーソーモンスター |
クジラアタマの王様、逆ソクラテス、ペッパーズ・ゴースト、マイクロスパイ・アンサンブル、777、楽園の楽園 |
●「マリアビートル MARIABEETLE」● ★★ |
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2013年09年
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「グラスホッパー」に続く、殺し屋たちの狂想曲。 今回の舞台は、東京発・盛岡行の東北新幹線<はやて>の車中。 どういう訳か殺し屋たちが何人もこの<はやて>に乗り合わせます。 なお、新幹線車内と言っても、殺し屋たちと王子以外の、普通の乗客の姿は殆ど見受けられません。あくまで殺し屋たち+αだけという虚構世界に軸足を置いたストーリィ。その意味で、本書もまた伊坂ワールド。 |
※ 映画化 → 「ブレット・トレイン」
●「3652−伊坂幸太郎エッセイ集−」● ★★ |
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2015年06月
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伊坂さん、初のエッセイ集。 作家デビューの2000年から2010年まで、3652日間に書いたエッセイを集めた一冊(365x10年+うるう年2回)。 また、下段の、伊坂さん自らによる脚注も楽しい。 ちょうど、伊坂さんがよく仕事をしに行ったカフェで、心置きなく作品のことについておしゃべりし合う、といった雰囲気あるエッセイ本。 |
●「仙台ぐらし」● ★★ |
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2015年06月
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地域誌「仙台学」に2005年06月から11年04月まで連載されたエッセイ11篇+4篇に書下ろし短篇小説1篇を加えた一冊。 伊坂さん、かなりの心配性(私以上)だということが本書で判りました。 最後の短篇小説、実際に復興支援のため移動図書館、ボランティア活動をしている2人の男性がモデルだそうなのですが、その一人が実は掏摸という設定は、伊坂さんらしい登場人物が顔を覗かせているという印象です。 タクシーが多すぎる/見知らぬ知人が多すぎるT/消えるお店が多すぎる/機械まかせが多すぎる/ずうずうしい猫が多すぎる/見知らぬ知人が多すぎるU/心配事が多すぎるT/心配事が多すぎるU/映画化が多すぎる/多すぎる、を振り返る/峩々温泉で温泉仙人にあう/いずれまた/震災のあと/震災のこと |
●「PK」● ★☆ |
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2014年11月
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「PK」「超人」「密使」からなる“未来三部作”。 実を言うと、本書についてどう言ったら良いのか、判らないのです。 まず頑張ってみること、そうすれば誰かが共に手を携えてくれるかもしれない。 PK/超人/密使 |
25. | |
●「夜の国のクーパー」● ★☆ |
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2015年03月 2012/07/04 amazon.co.jp |
戦争に負けて敵方=鉄国兵士の進駐を受けることになった“我が国”。 ところが、伊坂マジックと言ったらいいのか、後半タネが明かされ一気に真相が明らかになっていくと、視界不良を招いていた霧が一斉に晴れて見事な景色が急に眼前に広がったような爽快さが感じられるのですから、やはり伊坂作品は読み始め時の印象からだけではとても推し量れません。 最後は、あーっ納得と思っていた隙を突かれたようにええっと驚く、2方向からのダブル仕掛け。 |
26. | |
「残り全部バケーション」 ★★ |
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2015年12月
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ちょっと変わり者の恐喝下請け屋、どこかピントがずれている溝口と、見事なくらいに淡々とした岡田のコンビを中心とした、連作小説5篇。 表題の「残り全部バケーション」は冒頭篇の題名ですが、登場人物がこれで人生は実質終わり、後の人生はもうバケーションのようなものだ、と言い放つところから。 この溝口と岡田、要は善人からすれば憎むべき犯罪者なのですが(でも彼らにハメられて被害者となった者たち、本当に善人なのだろうか?)、犯罪者らしからぬところが多分にあって、そこに味わいがあります。 ストーリィが連鎖して繋がっていくところ、本書に登場する犯罪者たちのキャラクターと展開の面白さ、いかにも伊坂さんらしい連作短篇集。 1.残り全部バケーション/2.タキオン作戦/3.検問/4.小さな兵隊/5.飛べても8分 |
27. | |
「ガソリン生活」 ★★ |
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2016年03月
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免許取り立てという大学生=望月良夫と小学生の弟=亨が乗っていたデミオに突然乗り込んできた女性は、10年前に女優を引退したというのに今もなお芸能雑誌の話題となっている荒木翠。 本作品のユニークな点は、望月家の愛車=デミオが語り手となっていること。したがって物語はデミオが目撃した範囲という限定がありますが、それで十分にストーリィが回っていくのですから面白い。 本作品においては、デミオと車たちが繰り広げる饒舌に格別の楽しさがあります。彼らのおしゃべりから事件の糸口が推測されるのですが、当然にして車同士の会話は人間に通じることはなく、両方を知ることができるのは読者の特典という訳で、その点は伊坂さんの心憎い仕業です。 ※ダイアナ妃の事故から、D・ウィーバー主演の映画「激突」、S・キング作品までと、車たちの饒舌はすこぶる楽しき哉。 Low/Drive/Parking/エピローグ |
28. | |
「死神の浮力 BUOYANCY OF DEATH」 ★★☆ |
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2016年07月
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「死神の精度」の続編。前作が連作短篇形式でいろいろなパターンを楽しめる趣向であったのに対し、今回は長編。ですから死神=千葉のズレまくりの会話がたっぷり楽しめます(笑)。 ストーリィは、少女殺害容疑で裁判にかけられていた本城崇に無罪判決が下されたところから始まります。それを待ち受けていたのは、愛する幼い娘を非道にも本城に殺害された山野辺遼と美樹の夫婦。自分たちで本城に復讐しようという決意。2人がいざ計画を実行に移そうとしたその時、幼稚園の同級生だと言って突然訪ねてきたのが「千葉」と名乗る男。そこから、復讐劇の歯車が少々傾きつつ回り始めます。 本作品の面白さは何と言っても、ズレまくりで珍妙な千葉との会話、やりとり、その行動に尽きます。 被害者家族側の復讐計画、それを超える犯罪者側の冷酷非道な反撃。本来スリリングで陰惨な展開となる筈のところが、どこか突拍子もない千葉の言動に呆れる山野辺に、思わず吹き出してしまう妻の美樹と、からりと乾いたユーモアが広がってしまうところに頁を繰るのが勿体なくなる程の面白さがあります。 相手の周到で悪知恵を極めた反撃を易々と千葉がクリアしてしまうところは、痛快と言って良いかもしれません。 そんなストーリィの底にあるのは、愛する者が先に死んでしまうという悲しさ、恐ろしさ。そしてそんな悲しみの中でも人は面白いことがあれば笑うことができるというのは、人間の性の哀しさかもしれませんし、立ち直ることもできるという可能性あっての救いなのでしょうか。絶妙の面白さの中に結構シリアスな問題も内包しています。 いずれにせよ、すこぶる面白く、たっぷり楽しめる一冊。 ただし、どんなに頼りになっても千葉は所詮死神であり、何の為に山野辺夫妻の傍らに付き添っているのか、をお忘れませんように。 なお、結末は予想もできない驚天動地のもの。お楽しみに。 |
29. | |
「首折り男のための協奏曲 a concerto」 ★★ |
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2016年12月
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伊坂さんには珍しい、連作風短編集7編。 短編ネタに困り、長編小説用にプールしておいたネタまで惜しみなく使い込んで仕上げた連作集だそうです。 どの篇も伊坂さんならではの展開、それが7篇も集まっているのですから伊坂さんらしさ横溢、ファンとしては楽しいことこのうえない一冊となっています。 短編集ではなく一応“連作集”と評されている所以は、共通して登場する人物がいるため。 一人は、相手の首を折るという方法の殺し屋=“首折り男”、2篇+αに登場します。もう一人は「ラッシュライフ」と「フィッシュストーリー」に登場した空き巣稼業の黒澤、3篇+αに登場です。その他、クワガタを飼育している小説家が2篇に登場。 「首折り男の周辺」は可笑し味があって面白かったなぁ。 「僕の舟」、意外や意外もここまで来ればもう唖然のみ(笑) 「人間らしく」はいかにも伊坂作品、ですよねぇ。 「月曜日から逃げろ」には、そう来るか! 少々頭を使います。 「合コンの話」、あちこちで小説中の題材に使われていても不思議ないものですが、伊坂さんならではのひねくりようが愉快。 楽しみたっぷりの連作集。是非お楽しみください。 首折り男の周辺/濡れ衣の話/僕の舟/人間らしく/月曜日から逃げろ/相談役の話/合コンの話 |
30. | |
「アイネクライネナハトムジーク Eine kleine Nachtmusik」 ★★ |
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2017年08月
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冒頭は、男女が知り合うきっかけを題材にしたストーリィ。 独特の世界観を感じさせる作品の多い伊坂さんとしては、軽いスケッチ風の連作小説という印象。 全6篇からなる連作小説ですが、時間軸を自在に前後し、楽々と二世代に亘り、いつの間にか複数の登場人物が入り乱れるようにして繋がっているところが、楽しくて堪えられない次第。 小説の楽しさ、面白さは、人と人との出逢い、そして人と人が繋がり合ってひとつのストーリィを紡ぎ出すところにあると思います。 妻子に突然出て行かれて落ち込むサラリーマン、紹介された後に電話だけで繋がりあった恋人、男女高校生と担任教師が演じるヒトコマ、日本初のヘビー級ボクシングチャンピオンを巡るストーリィ等々。 そんな中、やはり伊坂さんらしいと感じさせられるのは、ハチャメチャ風な登場人物に、ユニークな脅し文句が登場すること。 日常的な連作ストーリィも、伊坂さんらしい味付けがなされれば、充分楽しめる、というものです。 アイネクライネ/ライトヘビー/ドクメンタ/ルックスライク/メイクアップ/ナハトムジーク |
※ 映画化 → 「アイネクライネナハトムジーク」
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