山口町の南端の里山に船坂がある。戸数200戸余り、人口740人余りの小さな街である。今、この街が元気だ。2009年10月25日(日)から約1ヶ月に渡って”里山芸術祭”ともいうべき「西宮船坂ビエンナーレ2009」が開催されている。15人の造形作家たちが、この里山の様々なスペースを舞台に作品を展示している。それらを順番に芸術の香りを味わいながら見て回りながら里山散策も愉しめるという趣向である。さくらやまなみバスに乗車して散策してきた。以下はその散策紀行である。 |
船坂橋バス停に到着する。下車してすぐ目につくのは船坂交差点にかかる電光掲示板の「西宮船坂ビエンナーレ2009」の文字だった。こんなところにまでイベント案内をアナウンスしてしまう住民パワーに圧倒される。船坂の氏神・山王神社の先を右に折れるとすぐにJA船坂がある。ここがアート散策コースの出発点となる。11時20分、散策マップをもらって出発する。19のオブジェを巡る散策コースは「棚田エリア」と「湯山古道エリア」に分かれている。 |
JA前の道を進み、右斜めの坂道を入ると最初のポイント・古民家再生(ポイント@)がある。武庫川女子大の学生ボランティアが江戸末期の茅葺き古民家を美山町の職人さんの指導で修復中の民家である。今日も女子学生たちがお茶接待を買って出ている。盤滝トンネルに通じる西宮北道路の高架の側道に沿って左に折れる。 |
高架沿いに坂道を登ると左手には船坂の棚田の広々した展望が開ける。道順のポイント毎にビエンナーレの赤い幟が立っている。幟を左折し街道に入りUターンするとすぐに最初の作品Place/armAがある。古い小屋の土間に丸い穴が掘られている。外には掘られた土石が山盛りされている。それだけ・・・。アートは不可解!?
右に折れて棚田の畦道に入る。正面のトタン板の小屋に無数の木片が飾られている作品旅するものについてBが見える。小屋の周囲を守るように青竹が斜めに突き刺さっている。 |
3番ポイントを右折れして進むと正面に黄色いメガホン状の物体が見える。このメガメガホンCの口元には測定器がついて大声を出すよう指示がある。思わず「ワオ〜ッツ」。そのすぐ横にはチッチャなトタン小屋一畳茶屋Dが建っている。側面には「にじり口」が、正面には棚付き窓が付いている。中には真新しい一畳の畳が敷かれている。外観のみすぼらしさと畳の新しさのアンバランスがなんとも不思議な雰囲気を醸している。アートの心に少し触れた気がする。 |
ここから左折れして棚田を下る。すぐ下に錆びた骨組みだけのビニールハウスがある。中の地面に刺された鮮やかなだいだい色の多数の小さな円盤が行儀よく並んでいる(MOSQUITO COILSE)。下り坂の先に竹組みの三角錐状の造作物が見える。船坂城Fと名付けられた遊び心たっぷりの作品だ。土台部分に何故か古びたミニバンの廃車が陣取っている。竹の階段が三層の天守への登城を促す。登ってみた。竹壁の間から船坂小学校の風情を残す全貌が見える。今は見ることの少ない屋根のついたモルタル造りの校舎だ。 |
畦道の突当りを左に折れて両側の棚田の空気を愉しみながら西に進む。船坂公園を通り抜けると大きな五線譜の譜面が空間に描かれている(さあ!Let's sing a songG)。五線も音符も全て竹で作られている。作者の膨大で気の遠くなるような労力が偲ばれる。そのすぐ下の刈入れを終えた田圃に船坂の子供たちが作成したというオブジェ思い出Hがある。案山子風の女の子が稲藁に囲まれて立っている。傍にある案内看板が、この田が小学生たちの稲作体験教室の田であることを告げている。 |
以上の九つのオブジェがビエンナーレの棚田エリアの作品群である。この地方の有数の広大な棚田の素晴らしい風景のキャンバスに描かれたのアートの世界だった。日曜日のイベント初日の畦道で大勢の人びととすれ違った。深秋の肌寒い曇り空の下の丘陵地の絶好のコースを汗を滲ませながら40分の散策を満喫した。 |