GOING TO BELGIUM


Roots Rock Festival.Nidrum,Belgium,1998 Summer

8月3日の(2)

VERVIERS に着き、20分くらい待っただけで電車に乗れた。今度は中央駅で降りる。飛行機が出るのが夜の8時過ぎなので、ちょっとグランプラスに寄っていくつもりなのだ。

駅のコインロッカーに荷物を預ける。荷物を入れて扉を閉めると自然に鍵が閉まってしまう。それからお金を入れると開けるための暗証番号が書かれた紙が出てくるのだが、このシステムが最初のうちわからなかった。使用説明は6か国語を選べるようになっていて日本語もあるのだが、それを見てもさっぱりわからない。このロッカーを使うには荷物を入れてください」「扉を閉めてください。ありがとうございましたこれでわかるわけがないよねえ。直訳してるんだろうけど、肝心の部分が抜けてる。多分他の言語でもきっと同じなのだろう。ロッカーはほとんど空いているのに、みんな混んだ一時預かり所の列に並んでいる。

グランプラスは10年ほど昔に1回だけ来たことがあったのだが、ヨーロッパのほとんどの街の例に漏れず、何も変わっていなかった。違いと言えば、前は修復中で足場が一面にかかっていた市庁舎がきれいになっていたくらいだ。それでもまだ建物前面に飾られている彫像をはずして洗っている最中らしく、とりはずしてきれいにした彫像を、クレーン車を使って吊り上げてセットしている最中だった。これがまたなかなかはかどらない。暇な観光客が見上げて時間をつぶすのにちょうどいい余興になっている。あるいはそれを意図して、わざとゆっくりやっ ているのか。

きのうまでいた田舎町と違って、さすが観光客のメッカ、グランプラス。狭い広場に人がひしめいていた。日本人も山のようにいる。特にワッフル屋の前で行列しているのは、日本人女性が圧倒的だ。そこらじゅうで聞こえる日本語に不思議な気がした。

とりあえずは気になってしかたがないフィルムを1時間現像の店に出す。焼き増しが1枚45円と高いけど、大事なフィルムを持ったまま、またX線の関門をドキドキしながら通るのはごめんんだ。それにこっちのプリントって大きいから見て楽しいし。

4時に仕上がるというので、それまでビールでも飲んで時間をつぶすことにした。なにしろビール王国に来たというのに、きのうまではトイレが心配でほとんど飲めなかったのだ。とはいえ店をあちこち探す余裕はないので、地球の歩き方に出ていた「棺桶」という店に入ってみた。

おどろおどろしいイラストが描かれた狭い通路(ちょっとお茶の水ユニオンのエントランスみたい)を通ってドアを開けると、中は真っ暗。陽光燦燦の戸外から入ると何も見えない。ほとんど手探りで中に進み、なんとかカウンターの椅子をみつけて座り込んだ。店の人がなににしますか?と聞くのでビールと言ってからこっちではそういう言い方は通用しないのだと思い出し、この店の特製のをと言ってみた。ベルギーというのはビールが何百種類もあって、みんなそれぞれお気に入りがあり、そのビールごとにグラスも決まっているのだ。日本みたいに「トリアエズビール」「マズビール」しかない国とは事情が違う。

出てきたものは髑髏の形のジョッキに入った液体だった。「地球」によると、色が赤いビールらしいが、この暗さじゃ色なんて見えない。まあ、赤いと想像しながら飲んでみた。味はまあまあかな。

暗さに目が慣れてくると店内の様子がだんだんわかってきた。なるほど、あっちとこっちにあるテーブルは棺桶の形をしている、壁には葬式に飾るような鮮やかな花が飾られ、青いガラスの中で点る蝋燭だけが照明になっている。どこかヨーロッパの奥のほうにあるドラキュラ伯爵でも住む古城のイメージか。しかし、それだったらゴシックメタルとかかかっていると雰囲気満点なのだが、さすがブリュッセル。ピアノを弾きながら歌うフランス人歌手のライブテープがかかっていて、店の人がそれにあわせてハミングしている。う〜む、違和感

BEFORE I NEXT
INDEX

All Words and Photos (C)SHOH