GOING TO BELGIUM


Roots Rock Festival.Nidrum,Belgium,1998 Summer

8月1日の(7)

私の右隣りで見ていたジェローンは、なにしろ初めて見る生鮫なものだから、もう夢中。何度も私を振り返っては信じられないというように首を振って見せる。見ている私までとてもうれしくなってしまった。ジェローンの友達が肩を叩くので何かと思って見ると、腰をかがめて肩に乗れと言っている。え〜っ? 肩車〜(^^;)?ライブビデオなどで見たことはあるが、自分がしてもらるなんて考えたこともなかった。が、どうしても乗れといって聞かないので、じゃあ、ちょっとだけ失礼しますって感じで乗ってみた。

が、私の足をつかんで彼が立ち上がった瞬間

「ひ、ひ、ひえ〜〜っ、高い〜、怖い〜」

経験のある方ならうなずかれるでしょうが、あれって実際にやってみると、もうものすごく怖い。地面からはるか離れた所に、すごく不安定な状態で浮かんでる感じで、今にも後ろにど〜んと倒れてしまうんじゃないかと思えるのだ。相手がプロレスラーみたいにがっちりしてればいいけれど、ジェローンの友達は背ばかり高くてひょろひょろに痩せたタイプ。とてもじゃないけど、命を預ける気にはなれない。

というわけで、せっかくの好意を無にしないよう、ある程度肩の上でステージに向かって手など振ってみてから、もういいわ。ありがとうと降ろしてもらった。ああ、無事に地面が踏めてよかった。

すでに周囲は真っ暗だ。雨は相変わらず激しく降り続けているが、もはや誰も気にする人はなく、色とりどりのライトに照らされる幻想的な彼らのステージに魔法にかけられたように惹き込まれていた。私もとっくにフードなんてはずして、びちゃびちゃになりながら頭を振っていた。彼らのパフォーマンスって、派手な部分はないが、バンドとしてのまとまりというか、その存在そのものの強烈さでオーディエンスをがっ ちりつかんで離さない。曲のひとつひとつにメンバーひとりひとりの魅力が重なり合い、浮かび上がってくる。

多いに盛り上がった ONCE BITTEN でいったんメンバーが引っ込むと、間をおかずに聴衆から大きな「 WE WANT MORE!」コールが。おかしかったのは、日本と違ってスタッフが一応機材を片づけるフリをしていたこと。でも、このほうが本物のアンコールぽくていいな。日本だと、完全に「また出てきますよ」っていうのが見え見えで、そのせいかアンコールの声や拍手も少な目だもの。ひどいときは拍手もしないで突っ立ってるだけとか。ひょっとしたら出てこないかもしれない、と思わせたほうが絶対にいいと思う。でもって、コールが少なかったらほんとにやめちゃうとかね。

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