
GOING TO BELGIUM
7月31日の(3)
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などとくだらないことを考えていたら、ようやくバスが来た。乗るときにやはりメモ用紙に NIDRUM ( HOTEL AU PRINTEMPS )と書いたものを見せ、切符を買う。ついでにフランス語で「着いたら教えてください」と頼んだ(旅行用フランス語会話集の文章を暗記しておいた)。こっちのバスは車内アナウンスなどなく、自分が降りる所の近くになったらブザーを鳴らす仕組みだから、初めて行く人はこうでもしなければ目的地で降りられるはずもない。 バスの客は少なく、私、ティーンエージャーの女の子2人、それにおばあさんが1人だけだった。このあたりでは車がないと身動きできないから、働き盛りの大人はみんな乗用車で移動し、免許のない子供と運転できなくなったお年寄りだけがバスを利用するのだろう。あ、あと車が運転できない旅行者ね(・_・)。 街は5分も走ったら終わりで、あとは両側を緑に囲まれた田舎道だ。緑と花と牛。それだけが延々と続く。ときたま店が2〜3軒並ぶ村らしいところが現れるが、すぐに通り過ぎてしまう。う〜ん、やっぱり相当な田舎に向かってるんだなあ。でも、夏のヨーロッパの田舎というのは本当にきれいで、もし万が一フェスティバルが中止になったとしても、こういう所で3日くらいのんびりするのもいいかもしれない。←ほんとか(^^;)? 40分くらい走ったところでバスは止まり、エンジンを切ってしまった。終点でもないのに?と不審に思ったが、小さな駅があるところを見ると、電車の時間に合わせてここで時間調整をするらしい。運転手は入り口のドアを開け、隣りに止まったバスの運転手と大声でおしゃべりを始める。聞いているとフラマン語のようだ。来る前に観光局のサイトで調べたときは、このあたりはアルデンヌ地方で、フランス語圏ということだった。が、NIDRUM や BUTGENBACH といった地名がフランス語っぽくないので不思議に思っていたのだ。どうやらドイツの国境近くになるとフラマン語圏になるようだ。ただし、住民はフランス語も話せるのだろう。複雑だなあ。 10分くらいたって、ようやくエンジン始動。再び走り始めた。と思ったら10分くらいで止まり、運転手さんが「ここだよ」と教えてくれた。客は私だけになっていた。どうやらバスはバス停じゃないところで止まってくれたらしい。「この道をまっすぐ歩いていった右側だよ」フランス語だが、なんとなく意味はつかめる。「わかったわ。ありがとう」「ほんとにわかった? 大丈夫?」心配そうに聞く運転手さんに「うん。ありがとう。さようなら」と手を降り、歩き出した。
道の両側には民家がポツポツと建っているが、ほかには何もない。言われた通りまっすぐ行って右側に注意していると、あった、あった、AU PRINTEMPS と書かれた建物が。窓辺には花がいっぱいの石作りのきれいな家だ。ホテルの入り口がわからなかったのでレストランと書かれた所から入っていく。中はテーブル席がいくつかと奥にカウンターのある作りになっていて、誰もいない。 「こんにちわ」と声をかけると、横のドアから客らしい老人夫婦2人を見送るような形でエプロンをした中年のおばさんが出てきた。客を送り出すのを待って、「あの〜ホテルはどこでしょう?」「ここよ」「予約をしてるんですが」「予約? ちょっと待ってね」ここまでの会話はすべて私は英語、彼女はフラマン語だ。お互いに相手の言ったことの中の単語ひとつくらいずつしかわからないが、なんとか通じている。 少しすると若い女性が出てきた。彼女もほとんど英語は話せない。FAXを送ってくれた人はいないのだろうか? 予約表らしきものを見て、おばさんが「これでしょ?」と見せるが、そこに書かれていたのは、とても人間の名前とは思えない、まるでパスワードのようなアルファベットの羅列だった。電話で予約したんだったら、こういうふうに間違って書かれる可能性もあるが、私はFAXで予約したんだから。
念のために持ってきていた先方からのFAXを見せて、ようやく通じた。若いほうの女性が鍵を持って案内してくれる。2階の3号室だった。部屋はけっこう広く(10畳くらい)ベッドはダブルサイズ、浴槽はなくてシャワーだけだがトイレなどは新しくてとてもきれいだ。タオルもたくさん用意してある。満足満足。 案内してくれた女性は、鍵を渡すと行ってしまった。あれ? 記帳とかしなくていいの? FAXで予約したときも特にクレジットカードのナンバーは書かなかった。請求されたら送ればいいやと思っていたが、何も言われなかったのでそのままにしてしまった。う〜む。これじゃあ泊まり逃げされても追求できないじゃないか。のんきだなあ。
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