WALKING IN SEOUL

慶州 (2001年3月5日)

(写真の上にカーソルを置くと説明が読めます)

ひととおりチェックがすんだので友人たちの部屋に行ってみる。廊下の踊り場には給水器が置かれていて、冷水が出るようになっている。これを使えば冷蔵庫の有料のミネラルウォーターを買う必要はない。

ドアを開けて驚いた。入口付近は私の部屋と同じだが、その先に黒い革張りのソファと椅子の応接セットがで〜んとある。まるで中小企業の応接室みたいな雰囲気。その奥にダブルベッドとシングルベッドが並んでいる。「ロイヤルスイートだって」 友人が言った。なるほど、だから高かったのか。おまけに妙に暑い。私の部屋はちょっとひんやりするくらいだったのだが。「暖房つけてるの?」 「いや。でもオンドルが効いてるみたい」 部屋の床は絨毯敷きなのだが、その下がオンドルになっているようだ。しかし、いくらなんでも暑すぎるんじゃ? 温度調節器がないので仕方なく窓を開けた。

とりあえず今日はもう何も予定がないので夕食に出ることに。フロントに少しだけ日本語を話す男性がいたので、すぐにラクな道を選ぶ(^^;)。「サンバプを食べたいんですが、おいしい店はどこですか?」 「ちょっと遠いけれど、ここが有名です」 地図で教えてくれる。「歩いていくのは大変だからタクシーで行くといいです」 メモ用紙に店の名前と住所を書いてくれた。目の前でハングルを当たり前の文字としてスラスラと書くさまを見て妙に感動する。「タクシーはどこから乗るんですか?」 「どこでもすぐに拾えます」

ぶらぶらと表に出て歩き出す。電話ボックスがバスルームと同じブルーで印象的だ。こっちの人の好きな色なのかな。日本のより広々している。

「どこでもすぐに拾えます」 と言われたけど、タクシーはあまり走っていない。タクシーを求めて道路の先のほうを見ていると、友人に 「そっち見てても来ないよ。こっちから」 と言われてしまった。韓国は左ハンドル・右側通行なのでちょっと混乱するよね。

やっと来たタクシーに乗り込み、運転手にメモを見せる。こちらが観光客で韓国語が話せないと知ってか、あるいは元々そういうものなのか、返事はない。このあたりは日本と変わらないのね(^^;)。 基本料金は1300ウォン。ほんの5分ほどで着いてしまい、料金は1600ウォンだった。安い! だもの、運転手が無愛想なのも無理ないわ。

タクシーから降りると、玄関の内側にいた男性が出てきて 「いらっしゃいませ(多分)」 と迎えてくれた。入ると広い土間があり、30センチほど高くなった座敷が土間に沿って続いている。襖でいくつかに区切られているが、襖を開け放せば大広間になる作りだ。日本の居酒屋と同じ。ただし畳ではなくてオンドル床。これは慣れないと硬くてちょっと座りにくい。座布団もあるが、オンドルの温かさを楽しむには座布団はないほうが気持ちがいい。

部屋のひとつに案内された。テーブルが2列に並んでいて、反対側には家族連れが楽しそうに食事をしている。

ホテルのバスルームと同じ色の電話ボックス

「口路(クロ)サンバプ」 11:00 - 22:00 慶州市皇南洞106-3 TEL : 054-749-0600

かなり立派な店構え。駐車場も広く、団体の観光客にも対応できるようになっている

さて、どうやって注文しようかと考えているうちに給仕のおばさんが皿を運んできた。「え?」 と思っている間に、数え切れないほどの皿や丼がテーブルに並ぶ。ここはサンバプの専門店なので、黙って坐ればサンバプが出てくる約束になっているらしい。あわててビールを頼む。「メクチュ、ジュセヨ」 通じた。が、友人は焼酎が飲みたいと言う。ガイドブックや会話集で 「焼酎」 を探した。「法酒」 はあるけど 「焼酎」 がなかなかみつからない。思いついて 「マッコリありますか?」 と聞いたら 「ない」。やっとのことでみつけた 「ソジュ」 を頼んで一息。すでにテーブルの上は立錐の余地もないほどの混み具合。大きな丼におばさんが白っぽい液体をついでくれ、飲む真似をする。飲んでみると何かのゆで汁みたいな感じ。特に味はついていない。蕎麦湯みたいなものかな。その他に小鉢に入った味噌汁も出てきた。

サンバプというのは野菜でおかずと甘辛いタレを包んで食べるもので、慶州の名物料理としてガイドブックに紹介されていた。

日本でも焼肉屋でサンチェを頼み、肉を包んで食べたりするが、あれがさらにヘルシーになったような雰囲気。包むための野菜もセンチェだけでなく、春菊やゆでたはくさい、青菜、大きなワカメなどたくさんある。長さが10センチ以上もある青とうがらしもあって、挑戦した友人によると「種を食べなければたいして辛くない」らしい。

中に包むためのものは茸の白あえや青菜のごまあえ、山菜の炒め煮(?)など体によさそうなものばかり。もちろんキムチは白菜、きゅうり、だいこん、それにエゴマや蟹(甲羅付き)と盛りだくさんだ。エゴマのキムチは日本ではなかなかお目にかかれないが、独特の風味があって大好物。

このほかにあさりのパジョン(お好み焼き)やあじくらいの大きさの魚のから揚げまで出てきて、どれからどうやって食べていいのか迷ってしまう。向こう側の家族連れの様子を見ていると、葉っぱにごはんをのせ、そこにおかずとタレをのせて包んでいる人がいれば、おかずをそのまま食べている人もいて、好きなようにすればいいらしい。小皿にとり分けるということもせず、みんな直に箸をつけて口に運んでいる。郷に入れば郷に従え。われわれも直箸で食べ始めた。

初めはそうでもないのだが、食べているうちにだんだんと口の中が辛さで一杯になってきて、これはビールを飲んでも治らない。そういうときのためにさっきの蕎麦湯があるのかも。辛さに弱い私はヒイヒイ言いながらもこの湯の助けを借りて、ひととおり全部の味見をしたのだった。

お腹がいっぱいになったところで気がついた。「写真、撮るの忘れた!」 お腹がすいているところに目の前に一気に並べられたもので、食べるほうに気が行ってしまっていた。まったくもう。

というわけで、これは観光公社でもらったガイドブックに載っていた写真です。実際にはこれよりもっとたくさん出てきて、ひとりたったの600円!

「トイレってなんて言うんだっけかな?」 会話集をチェックしてから土間に降り、誰かに聞こうと思っていたら、誰にでもわかる絵が書いてあった。中に入ると手を洗うところに大きな平べったいザルがあり、その中に炭がたくさん入っている。これがオンドルの燃料になるのかしらん?

個室に入ると大きな屑入れがあり、中に紙がたくさん。ひょっとすると・・・「ねえ、韓国ってトイレに紙流しちゃいけないんだっけ?」 「どうだったかなあ。ホテルはちゃんとした水洗みたいだったけど」 「見た目が水洗でもわからないわよ。ロシアのホテルはすぐ詰まったもの」 「やっぱり個室に屑入れがあるってことは流せないんじゃないの? このあたりは下水の管が細いのかも」 「でも、使った紙を屑入れに入れるのって、わかってはいても抵抗あるわよねえ」 「逆に日本に観光に来た中国人はホテルの屑篭に使用後の紙をみんな入れちゃって騒ぎになることがあるらしいよ」 「国によって常識が違うんだものねえ」

食べ物屋でするべきではない会話が続き、残っている客は私たちだけになってしまったようだ。そろそろ帰ろう。「お勘定ってなんて言うんだ?」 「サインするジェスチャーしてチェックって言えばわかるんじゃないの?」 完全に韓国語から離れてる私。でも実際それで通じてしまった。最初に迎えてくれたおじさんが 「イーマンユッチョンウォン」 と言う。「1万かな」 中国語を少し知ってる友人が言ったが、「待って! 違う! 2万6千ウォンだと思う」 その通りだった。よかった〜。やっと韓国語がわかった〜。感激した。言葉が通じるのってうれしい。ただの数字なんだけどさ。


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