
WALKING IN TUNISIA
PART 55(1/6)
あっという間に出発時間となる。別れを惜しむ時間もあらばこそ、押されるようにバスに乗る。
「全員そろいましたね。では出発します」
バスが走り出した。友人に手を振ろうと振り返ると・・・あれ?走ってくるあの人影は・・・。
「待って! 止めて! ゲンジと母娘が乗ってない〜!」
バスが急停車すると、息をきらせて3人が乗り込んできた。まったく、いくらあせってるからって、客の数くらい確認してよねぇ。
空港に着くともうぎりぎりの時間。なのにJALの職員は、私たちの荷物がスルーで通ってないという。
「エールフランスでの手続きはきちんとしていましたから、JALの職員の勘違いだとは思いますが、最悪の場合、成田でスーツケースが出てこないかもしれません」
ああ、もう勘弁してほしい。夜の9時過ぎに成田について、それからクレーム処理してたんじゃあ、とても明日会社になんて行けやしない。
おまけにトイレの鍵は閉まらないし。←なんの因果関係もないけど(・_・)
背に腹は替えられないので、足のつま先で扉の下部を引っ掛けて「存在証明」をしながら使用してしまった。恥じらいなんて、どこかに忘れてきてしまったわ。
さすがにもうこれ以上はかわいそうだと神様も哀れんでくれたのか、成田には予定通り到着し、荷物も無事現われた。
あまりの疲れに、みんな挨拶もそこそこに散っていく。モグラ氏に別れの挨拶をする人は、ひとりもいなかった。
飛行機を降りる前、長老がみんなにひとことずつ声をかけていたのが印象的だった。
ゲンジには「大晦日に踊ったことは一生忘れませんよ」
私には「ネフタでは犠牲的精神を発揮してくれてありがとう」
なんだか恥ずかしかった。