
WALKING IN TUNISIA
PART 40(1/2)
朝食のテーブルで、長老が誰にともなくつぶやいた。
「12月26日は私の誕生日だったんですよ。その近辺は大物の誕生日が多いんです。天皇が23日、キリストが25日、毛沢東が27日、マレーネ・ディートリヒが28日。そして私です」
(*^.^*)
このおじいさん、一見するとボケてるのかなあ、と思うけど、話しているとなかなか鋭い。パーキンソン氏病だそうで動作が鈍いのだが、その分みんなに迷惑をかけまいと、先へ先へと準備しているから、決して集合に遅れたりしない。77歳だそうだ。50歳で退職してから海外旅行を始め、今回の旅行がちょうど50回目だというからすごいペースだ。道理でホテルでも飛行機の中でも勝手がわかっている。
「ボケが始まってるので、月に1回病院に行って、ボケが進まない薬を飲んでるんですよ。あと何回旅行できるかわかりませんが、ドクターストップがかかるまでは行くつもりです」
うんうん、がんばってくださいね!
隣りのテーブルでは、若いウェイターが3人娘に日本語を教わっている。「I LOVE YOU」は何というかと聞かれ、3人がいっせいに
「好っきゃねん!」
するといきなり「好っきゃねん」と姉娘に迫るウェイター。なかなかやるな。
「こいつ、なんとかしてほしいわぁ。会ったばかりやでぇ」
みんなの食事が終わる頃、センセがあたふたと食堂に入ってきた。寝ぼうしたらしい。ひとり部屋はこういうとき危ない。もう出発時間だ。バスの中で待っていると、ポリ袋にしっかりパンとおかずを詰めてもらったセンセが乗りこんできた。なんとポットにお茶まで詰めてもらっている。
さあ、ドゥッガの遺跡に向かって出発だ!