WALKING IN TUNISIA


PART 37(1/1)
ルタゴは、今では高級住宅街になっているそうで、ビュルサの丘にバスが上がって行く途中の道には、私たちのような小汚い観光客など目の端にも止めなさそうな豪邸が並んでいる。街の向こう端の丘の上には大統領官邸があり、「決してカメラを向けないでください」と釘を刺されている。

「このへんの家はいくらくらいで買えるんですか?」

いきなりセンセが質問した。

モグラ氏が英訳してラサドに聞くが、彼には答えられない。

「日本人は家に困窮している人種なので、家を見るとすぐにいくらかと考えますが、こっちの人たちは、実際に家を買うことになって初めて、値段のことを考える人種なんですね」

バスが止まったのはカトリック教会らしき建物の前。ここから歩いて遺跡に向かうのだが、ラサドはこの教会をカルタゴ時代のものだと言う。

んなばかなぁ?

モグラ氏もさすがに変だと思ったのか、

「私にもこれがカルタゴ時代のものだとはとても信じられません。でも、ラサドは絶対にそうだと言い張ってますから、あとでもっと権威のある人に調べてもらいましょう。権威があるったって運転手さんなんですけど」

結局、運転手のタヒルが遺跡の前の土産物屋で売っていたガイドブックをチェックしたところ、礎石自体はカルタゴ時代のものではあるけれど、建物はローマ人が建て、後にフランス人がカトリック教会として建て代えたものらしい。

そんなことがあったせいもあり、フェニキア人の住居跡という場所に案内されたときも、センセが、「これが本当にフェニキア人の住居跡だという証拠でもあるんですか?」と聞いた。確かに『歩き方』には、カルタゴ時代の遺跡は墓地しか残っていない、とある。

しかし、モグラ氏は「証拠と言われたって、考古学者がそう推定してるんですからね」とニベもない。

う〜む、きょうはこのふたりの死闘が見られそうだぞ。

カルタゴ(1)








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