WALKING IN TUNISIA


PART 15(12/28)
物屋の店先にぶらさがっている錫のカップに目が止まった。底の部分にお魚のレリーフが彫ってあって、すごくかわいい。いびつな形も素朴だし。

店番のおじさんに「いくら?」と聞いた。おじさん、フランス語しかできないらしく、ちょうど油を売りに来ていた近所の人に通訳させる。

「3ディナール」

なにしろ、かのモグラ氏から
「ここでは値切るのが当たり前です。値切るやりとりまでもが買物の楽しみのひとつですから、がんばってください」
と言われているので、
「2ディナールにならない?」
と言ってみた。ところが、あっさり
「だめだね。これは手づくりなんだから」

ありゃあ(^〜^;)ゞ

それじゃしかたがない。 「3ディナールで売ってくださいm(__)m」とすごすご引き下がる。

こういうところが、東京人の根性のないところかも。別に見栄を張ってるわけではないのだが、だめと言われてしまうと、それ以上どう粘ればいいのかわからないのだ。よく考えてみたら、「手づくりだから」なんて、東京でならともかく、ここチュニジアでは特にありがたいことでもなんでもないじゃない。

少しいじけて歩いていると、リヤカーの後ろに大きな鍋をのせ、歌うような売り声を発しながら歩いてくる物売りが登場。声を聞きつけて地元の人たちがわ〜っと集まって、新聞紙で作った紙袋に1杯ずつ買っている。なんだろう、と覗いていると、近くにいた少年が「ほれ」とひとつくれた。

そら豆だ!

やわらかくゆでてある。そのまま口に入れようとすると、「ちがうちがう」と言って、皮をむいて見せてくれた。ほんのり塩味がついていて、日本で食べるのとほとんど変わらない。むしろこちらのほうがくさみが少ないかも。

「おいしいね」と顔で言うと、「フール」と呼ぶのだと教えてくれた。でも、これって夏のものでは? 暖かめとはいえチュニジアも冬。そら豆が穫れるのかしらん。

謎はすぐに解ける。すぐそばの店先に干したそら豆が山盛りになっていた。

スーク(2)








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