
テルミニ駅に行き、日本で買っておいたツーリストチケット(9日間で4日分乗れるというもの。これは日本でしか買えない。安全のため1等車用を2万2100円で買ったが、現地に行ってみると割高だ。ただ、時間がないときに混んでいる窓口に並ばなくてもいいので、日程にしばられる旅行者にはやはり便利)の、開始日申請のために窓口に並んだ。
窓口の数はたくさんあるが、なんだかこちらにはわからない担当分けがあるらしくて、せっかく並んでも「外国人はあっち」とか受けつけてくれない。で、そっちの窓口に行ってみると、人がいない。中にはお茶を飲んで、だべっている人がいっぱいいるのに、だれひとり立ち上がろうとしない。なんじゃ、これは。でも、これがふつうなのだから、早く慣れなくちゃ。
トマス・クックで調べておいた時間は8:30発だったのが、ホームに出てみると8:00とあるではないか。イタリアでは電車の発着は当てにならないと聞いていたけど、30分も早いなんて、と青くなって走った、走った。が、すでにホームには電車の姿はなく、あ〜あ、と思ったら、ちゃんと8:30の電車もいた。頭からイタリアの鉄道を疑ってかかっていた、私たちがいけなかったのね。
1等車なのにほとんど満席。しかたなくWとは別々のコンパートメントに。ここで言っておくと、1等車も2等車も車内のようすはまったく変わらない。車両自体が古くて汚いときは、1等車もボロボロ。乗る人たちも、1等の切符がなくたって平気で乗ってくる、客層も変わらない。1等だから安心とかきれいなんてことは、考えないほうがいいだろう。
私のコンパートメントには、若いカップルが1組と老夫婦とその息子らしき中年男。暖房が壊れているのか、効かないのか、ものすごく寒い! コートを着たままでも、すきま風がびゅんびゅん入ってくるので、顔が凍ってしまいそうだ。恥も外聞もなく、マフラーでほっかむりをしてしまい、ただひたすら耐えた私だった。
それにしても、イタリア人の息子というのはほんとうに母親に弱いらしい。40過ぎと思われるおじさんが、のべつまくなし母親に話しかけ、お菓子をすすめ、暖房器の調節をし。まめまめしいというか、うっとうしいというか・・・。
ナポリの駅は怖い、と聞いていたので、かばんをしっかり抱き抱え、走るようにして乗り換えた。確かに急に何人もが走り出したり、どなり声が聞こえたり、人を物色しているような目つきの悪い人たちがいたりしたが、そう思いこんでいるからそう見えるのかもしれない。
チルクムベスビアーナ鉄道の切符を買ってホームに。通勤通学列車らしくて、すごく混んでいたのが、ひと駅ごとにどんどんすいていき、なんだか日本の田舎を旅しているような気分。そして、冬だというのに、窓の外にはたわわになったレモンやオレンジの林が続く。ああいう果実は、ひとつずつもいでいくのかと思っていたのだが、自然に地面に落ちたのを家族総出で拾っている光景を見た。シーズンオフだからかしら? それともイタリアではああいうふうにして収穫するのかな?
日本と違うのは、ジプシーのおばあさんが、混んだ車内を「マンジャーノ、マンジャーノ」と言って、手を差し出しながら物乞いに回っていたこと。カソリックのイタリア人は、こんなときどうするのかな、と興味津々で見ていたけど、なんだ、日本と変わらないじゃない。みんな、そしらぬ顔であらぬかたを眺め、知らんぷりをするのああった。
「日本人観光客だと、しつこくされるかもしれないな」と、びびっていたが、拍子抜けするくらいあっけなく去ってしまった。やっぱりねえ、プロは人を見る目があるわ。
4人掛けの席で私の前と隣に座ったのは小さい男の子を連れた夫婦者なんだけど、この子どものしつけが悪い。全体に(南?)イタリア人って子どもに甘いと思う。顔は天使のように愛らしいのに、小鬼のように行儀の悪い子どもがそこらじゅうにいた。親はぜ〜んぜん叱らない。