WALKING IN SICILY


PART 4(12/27)

タリアは郵便事情が悪いけれど、ヴァチカン郵便局だけは別、と聞いていた。なるほど、切手収入が財源になっているだけあって、あちらこちらに郵便局がある。切手好きの友人に絵ハガキでも出そうと入ってみた。ゆっくり手紙を書くための椅子と机も用意されていて、至れりつくせり。

さて、ここでハタ!と困ったことに気づいたのだ。

今回の旅行に際して、イタリア男に関するコメントと同じくらいに言われ古した言葉が「イタリアは危ない」だった。

いわく
「ジプシーを見たら逃げろ」
「南イタリアでは、かっぱらいどころではなく、強盗・山賊のたぐいが出る」
「バッグは見えるところにかけていると、バイクでかっぱわれるついでに引きずられて死ぬ」

ここまで言われて旅行する気になる私も私だが、さすがに警戒心は異常に高まった。旅行用品の店に行って、シークレットベルトなるものを購入(店のお姉さんに「お客様がなさるんですか?」と不思議そうに聞かれた)。これは、白いメッシュ(蒸れないように!)の布でできている腹巻のようなもので、ジーンズの下に着けるようになってなっている。ここに帰りの航空券と日本円。それから自分でハンカチを縫い合わせて作った袋にパスポートを入れて、これを首からさげた。もうひとつ、木綿の巾着袋に現金(金額の大きなイタリア・リラ)とクレジットカードを入れ、ひもをベルト通しに結びつけ、袋はジーンズの内側に。

で、バッグを斜め掛けした上にコートを着て、前のジッパーを首まであげた私の姿は、歩くダルマだ、はっきり言って。旅行の時は帰りに捨ててもいい服しか持って行かないので(とはいっても捨ててきたことはない)、どう見ても貧乏人。

というようなわけで、お金を払う段になっておおあわて。回りを見回したら、やはり同じようにスウェットパンツの下から巾着袋をずるずると引っ張り出しているアメリカ人の男の子がいた。

さて、外に出ると、ちょうど広場にバチカン博物館行きのバスが。これに乗ると、ふつうでは入れない修道院の中庭が見られるというので、す かさず乗りこむ。

とても整然とした庭で、ときどき修道士が長い衣を翻して歩いている姿は映画の1シーンのよう。が、庭の掃除をしている人たちが、黒人、アジア人など有色人種ばかり。

私が卒業した学校の修道院でも、入るときに多額の寄付をしたシスターはお祈りだけしていればよくて、なにもできなかったシスターは下働きをするんだ、という噂があったなあ。

博物館はとにかく広いので、1時間で回れるコースを選んだ。コースといっても、ガイドがついたりするわけではなくて、それぞれの色の 線にくっついていくと、そのくらいの時間で見られますよ、というもの。

システィーナ礼拝堂に降りる階段を降りかけたところで、いきなり男性のしめやかな日本語が・・・。思わずあたりを見回す。「礼拝堂の中ではお静かに・・・」というご注意で、各国語ヴァージョンが順番に流されているのだが、あまりにタイミングがよかったもので、TVカメラかなにかで通る人間をチェックしていて、その人向きの言葉でアナウンスを流すのかと思ってしまった。

システィーナ礼拝堂のフレスコ画はとにかく見応えがある。なにしろ四方の壁と天井がすべて埋めつくされているんだから。ひとつひとつ創世紀のストーリーを思い出しながら見ていると、首が痛くなってくる。私は旅行の時、紙でできた簡易オペラグラスをバッグの中に入れておくのだが、こういうときにはとっても便利。あと、建物の装飾を見たり、見知らぬ鳥を観察したりするときにも活躍する。

「最後の審判」は、修復中で見られなかった。ガイドブックには91年春現在修復中とあったので、もう終っているだろうと思っていたのだが、甘かった。幕の上に複製画がかけてあるのを見てきた。あれって、いつか終わるときが来るのだろうか。

コースからは外れていたが、ラファエロの間はしっかりチェック。私の好きなロックバンドが、「アテネの学堂」をアルバムジャケットに使っているのだ(正確には、絵の一部をニューヨークのデザイナー、コスタビがアレンジしたものを)。


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