
泣きそうになりながら、道端で地図を見ていると、近くのバールの入口にいたおじさんが 「どうしたんだ?」(と言ったんだと思う)と聞いてくれた。
「ホテルがみつからないんです。できれば神殿に近い、きれいなところがいいんですけど」
と、この期におよんでもぜいたく言うのを忘れない私たち。おじさんはバールに入っていくと、電話帳を借り、店の人とああでもない、こうでもないと相談しながら探してくれた。
ところでこのバール、お菓子の種類がものすごく多く、日本だったらケーキ屋さんといってもいいくらいの品ぞろえ。食べたかったけど、いくらなんでも人にホテル探しを頼んでおいて、自分だけお菓子を食べているわけにもいかない。今でも心残りになっていることのひとつだ。
さて、協議の結果いくつかのホテルの電話番号をメモしてくれた。それぞれの特徴を教えられた私たちは、お礼を言って、電話ボックスへと急ぐ。1軒目。あまり英語が話せない人が出て、こりゃだめだとあきらめる。2軒目。きちんとした応対で、場所も神殿の谷の近くらしいので、ここに決めた。ああ、よかった。
駅に戻ってバスに乗り、神殿の谷に向かう。運転手にホテルの名前を言ったので、もよりの停留所で教えてくれるかと思いきや、すっかり忘れられてしまった。が、聞いていた乗客のおじいさん、おばあさんたちが口々にワァワァ言ってくれ、わけがわからないままにあわてて降りたら、1停留所過ぎてしまったところ。暗くなってしまった道を、荷物を抱えてとぼとぼ歩いて行くと、なにもなさそうな道端にホテルの看板が。矢印通りに曲がって、車寄せの道を歩いていくと、
おおおっ!
今まで泊まったどこよりもすてきな、こじんまりした建物がそこにはあった。しかも、建物の向こうに見えるのは神殿ではないか。そう、このホテルは神殿の真正面に建っていたのだ。