WALKING IN SICILY


PART 23(1/1)

ンナだ。

駅前には人っ子ひとりいない。のら犬が1匹、ボロボロの毛布の上で昼寝しているだけ。時刻表によると10分後にはバスが来るはずなので、一応待ってみようということになり、駅の待合室に。駅員もいない。張り紙によると、電話をすればタクシーが来るらしい。そのうちに私たちが乗ってきた電車の発車時間になり、山の上から1台のタクシーが降りてきた。客の迎えかな、と思ったが、車掌からクリーニング屋の袋に入ったスーツを受け取っているところを見ると、個人的な用みたいだ。それにしても、エンナにはクリーニング屋がないのだろうか?

運転手にバスは運行しているのか聞いてみたところ、休みだと答える。ウソかもしれないが、こんなところでいつまでも待っていたってしかたがないので、タクシーに乗ってしまう。

タオルミナから電話で予約したホテルは、いわゆるアメリカ式の味もそっけもない所だったが、なにしろここしか開いていないのだから、文句は言えない。元々2〜3軒しかないので、シーズンオフは小さいところは閉めてしまうらしい。

荷物を置いてすぐに出、バスターミナルを探しに行く。カターニャの失敗にこりて、とにかくアグリジェント行きバスのダイヤを確かめようというのだ。事務所は閉っているだろうが、時刻表くらいは出ているだろうと思った。が、これが甘かった。さんざん歩いて、ようやくたどりついたものの、なんの表示もない。やはりバスはあきらめるしかないようだ。エンナ〜アグリジェント間は景色がきれいだと書いてあったので、楽しみにしていたのだが。

さて。

エンナというのはシチリアの真ん中、標高948mの山頂にある街だ。別名「シチリアの展望台」というくらいで、とにかく見晴らしがよい! 街を囲むようにぐるっと車道が通っていて、その道を歩いていると、シチリアが360度見渡せてしまう。実にもうユーダイな風景なのだ。

街はずれまで来たとき、近くの丘の上に別の街が見えた。が、それがどうも、遠近感が変になったのかと思うような小ささ。

「あれってそんなに遠くないよね」
「うん。ちっちゃく見えるね」

Wが例のオペラグラスでじ〜っと観察する。

「ひえ〜っ! 見て見て」
「が〜〜〜ん! 信じられない」

その丘全体が墓地だった。それも、こちらの街をそのまま縮小した形に作ってあるように見える。この街の人が亡くなると、生前住んでいたのと同じ場所、同じ家に葬られるのだろうか。でも、それって、街の人々がどこにも行かず、どこからも引っ越してこないからこそできるのではないだろうか? 建物も未来永劫あり続けるわけで・・・東京みたいに、きのうあった家が今日はもうないなんて都市では、絶対無理だろう。ものの考え方に違いが出てくるはずだよなあ。


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