
苦難はさらに続く。
タオルミナの駅は小さくて古いけれど、とてもすてきな建物だ。待合室など、モザイクの壁や天井にアンティークなランプや机が置かれ、駅とは思えない造り。
ただし、駅前は閑散としている。
イタリアに行ったことがある方ならご存知だろうが、イタリアの街はみんな丘や山の上に作られている。で、鉄道というのは近年になって作られたものだから、当然平野部を走っているわけで、ほとんどの街は、鉄道の駅から車で上がっていかなければならない。
客待ちの怪しげなタクシーが1〜2台いたが、時刻表によればあと20分くらいでバスが来るはずなので、寒風の中で待った。ほかに待っているのは、大きなリュックを背負った若い男と、大きなジャーマンシェパード(口輪をはめているのがいかにも狂暴そうで怖い)を連れたドイツ人と、地元民らしきイタリア人。
このイタリア人がわけのわからないヤツだった。初めは白タクに乗らないかと声をかけてきたくせに(運転手が友人だという)、断ると今度は一緒にバスを待ち始め、40分くらいの間(バスが遅れた!)すごいハチャメチャ英語でず〜っと喋り続けるのだ。
「日本から来たんでしょ。どこから? トーキョー? 僕はマツヤマに行ったことがあるんだよ。ドーゴオンセン、知ってる? 昔、日本から来た女の子と知り合って、しばらくつきあっていたんだけど、彼女が日本に帰っちゃって、それで訪ねていったんだ」
(ふん、ふん、よく聞く話ね)「9歳になる息子にも会ったんだ。うれしかったなあ」
(なんなんだ、そりゃあ)ほんの時たまWが相槌を打つだけなのに、そんなことおかまいなしに喋り続ける根性には、ほんと、驚いた。熱で朦朧としながらも、映画「ダウン・バイ・ロウ」のイタリア人の喋りを思い出してしまった私。
さて、ようやくバスが来て、丘の上のタオルミナの街に着くと、あたりはすでに薄暗い。すぐにでもホテルに行って休みたかったが、Wは先にインフォメーションに行って、地図やホテルリストをもらおうと言って、歩き出した。黙って、暗〜い雰囲気でついていく私。
このバス停から街中までがまた、遠い!
かばんを引きずるように歩いていると、でかい犬が5〜6匹徒党を組んで歩き回っている。さっきドイツ人が連れていたのと似たようなタイプだ。ひょっとして、長期滞在の観光客が飼っていた犬を、帰国の際に捨てていったものがノラ化してるのかしらん。どうぞ、エサが足りてますように。