
WALKING IN RUSSIA
PART 7
「ねえ、地下鉄の駅ってどこにあるのかなあ」
「あ、あそこに地下に降りる階段がある」
喜んで降りて行くと、そこはただの地下道で、結局1ブロック先に出てしまうだけ。それにしても、どうしてこんなに地下道だらけなんだろう。冬に雪が降ったときのためかしら。おかげで、いろんな種類のストリートミュージシャンを見ることができた。ロックは、まあふつうかな。ジャズはすごい。ちゃんとウッドベースまでいる! 運んでくるだけでも大変よねえ。究めつけは、ひとりでフルートを吹く少女。12、3歳だと思うけど、音楽学校の生徒かなにかが、アルバイトでやってるのかしら。それにしても、こんなに若い(というより幼い)ストリートミュージシャンは初めて。デキシーランドジャズっぽいのに合わせて踊り出しちゃう、浮浪者のおばあさんもいた。
ようやく見つけた地下鉄の駅。
「え〜〜〜、これが駅〜ぃ?」
古い大きなビルにしか見えないじゃない。てっぺんにMのマークがついてるのが目印だったのね。マクドナルドかと思ってた。自動販売機で地下鉄用のコインを買う。全線同じ料金(1ルーブル)だから、料金表とかはなくて簡単。
わ〜い、念願の地下鉄だ〜。車両は割合にきれい。つり皮がなくて、高いところにバーがあるだけなのが、背の低い私にはちと困る。けっこう揺れるから、バーにつかまっていないと転んでしまいそう。ここでハタ!とふたりは考え込んだ。
「ここはどこ?」
電車の中に地下鉄路線図があるのだが、なにしろロシア文字。ぜ〜んぜん読めない。駅につくたびに駅名を覚えようとするが、読めない文字を覚えるほど難しいことはないのだ。第一、駅名が長い!
しかたなく、そばに座っていたおじさんの肩をポンとたたいた。
「すみません」(日本語だ)
次に地下鉄路線図を指差す。
「今、どこを走っているんですか?」
「☆●◇■△▼※@#♂」
おじさんは、山手線の内側を走る線の中ほどを指さす。
「で、どっちに向かってるんでしょう?」
「★○◎◇□▲▽§*♀」
どうやら北に向かっているらしい。そのまま行くと、郊外のほうに出てしまいそうなので、次で降りて引き返すことにした。ほんとうは、あと1駅先まで行けば、超豪華なコムソモーリスカヤ駅が見られたのだけど、そのときの私たちには知るよしもなかった。
最初に乗った駅がわからなくなったので、適当なところで降りた。外に出てみればなんとかなると思ったのだが、う〜む、なんともならない。 でも、はるか遠くにクレムリンが見える。確かホテルはあの裏だから、歩いて歩けないことはないか、と決断。
しつこいベルト売りの少年たちにつきまとわれた。2人組みの一方が「HE'S MY FRIEND」と言ってもう1人を指してから「HE'S HUNGRY」と続ける。だからベルトを買えというのだ。でも、ぜーんぜんひもじそうなんかじゃない。「WE ARE HUNGRY, TOO」と言って無視した。それでもどこまでもしつこくついてくる。こちらが女2人だから、根負けすると思ったのね。ハバロフスクの少年たちには可愛らしさがあったけど、モスクワの少年はただの不良だ。でも、東京で鍛えてる私たちは負けなかった。なにしろしつこいアンケートやら「お祈りさせてください」に、毎日のようにさらされているんだもの。