WALKING IN RUSSIA


PART 25

テルでの夕食は

  • コールドミート+トマト+きゅうり
  • グリルドチキン(ポテト添え)
  • にんじん、キャベツ、ピーマンのサラダ
  • ナン
  • バタークリームのケーキ
  • 紅茶
  • 食事の途中で、ターニャさんと狐川さんが大きな袋を配って歩く。テーブルの上がいっぱいになってしまうほどの大荷物。またまた翌日用のおべんとうですって。

    これがまた、この前よりもさらにすごかった!

  • ナン
  • 白パンの間にチーズをはさんだもの
  • 白パンの間にチキンと1センチ厚さの牛肉をはさんだもの
  • (でかい)きゅうり2本
  • トマト1個
  • ネクタリン1個
  • ゆで卵2個
  • ひとりの人間がこれを1度に食べると言うのだろうか?

    夕食の後で、希望者だけコンサートに行けることが急に決まった。いわゆるオプショナルね。10ドル。蛇本夫妻と猪木さん以外は全員希望。 山羊田さんも初めは「疲れているから」と言っていたのに、集合時間にはしっかりドレスアップしてご登場。

    昼間見た劇場に行くのかと思っていたら、地下鉄に乗って次の駅まで。この駅がとてつもなく美しい。

    アールヌーボー風の装飾が施された壁、天井、そして灯り。モスクワでもすてきな駅を見たけれど、立派というかいかつい感じだった。ここはもっとずうっと芸術的。博物館で見たアクセサリーの意匠とも通じる、繊細な感覚がこの土地にはあるのかもしれない。ただ、写真を撮っていたらすぐに駅員が来て、止められてしまった。モスクワではそんなことなかったのに、なぜだろう?

    駅を出て5分ほど歩き、小道の奥の小さな一軒家に着いた。

    「えっ?ここ?」

    そこは、アナトーリさんという画家のアトリエ兼自宅で、ここでホームコンサートが開かれるのだという。お客は私たちと、アナトーリさんの友人数人だけという、ぜいたくなセッティングだ。

    トタン板を並べたような粗末な塀と小さな門だけを見ると、やたら貧しげな風情だが、1歩中に入ると、いかにも芸術家の住まいらしく整えられていて、すてきな家だあった。

    小さな池のある庭が特に印象的で、池のまわりに丈の高い砂糖きびや麦、朝顔がジャングルのように植えられている。

    アトリエの作品をざっと見たあたりで弦楽四重奏が始まった。女性ひとり、男性3人はいずれも若くて、音楽学校の学生か楽団員のアルバ イトといったところかな。いわゆるコンサートと違い、きちんと席に着いている必要はなく、居間のソファで、庭のベンチで、アトリエを歩きながらと、思い思いの形で聴けたのがなかなかだった。途中でシャンパンと紅茶が出され、さらにくつろいだ気分に。

    アナトーリさんの友人も3人ほど来ていたのだが、あまり英語が話せないせいか、日本人の団体が怖かったのか、私たちのほうには近づいてこない。それでも、こちらから近づいて

    「すてきなお庭ですね」と声をかけたら、
    「私が作りました」との返事。
    「え〜っ!庭師なの?」
    「生物学者です」
    彼によるとこの庭は「アフリカと東洋の雰囲気をとりいれて、画家の作品とのハーモニーを奏でている」んだそう。ふ〜む、奥が深い。

    ここで、急に山羊田さんがアナトーリさんに自画像を描いてもらうという話になり、半分の人は先に帰った。私たちは、ひさしぶりにゆったりした夜がうれしくて残り、山羊田さんを待つことにする。

    アナトーリさんの奥さんは美術学校の教師をしているそうで、きょう訪ねた博物館にあった作品を作っているアーティストとも知り合いらしい。秘蔵の伝統アクセサリーとそのレプリカを見せてもらったりした。実は気に入った絵があって、買おうかとも思ったのだが、すでに売約済。買い手はなんとパキスタン人。地理的には確かに近いものね。パキスタン人のお金持ちはちょくちょくタシケントに来ると行っていた。

    日本人も買ってくれたんですよ、と言って、うれしそうにボロボロの名刺を2枚見せてくれたのだが、1枚はどこかの宗教団体の地方支部役員だった。美術館でも作るのだろうか。

    さて、自画像のできあがりは?

    他人である私から見ると、すばらしい出来、だと思った。山羊田さんの意思の強い、誇り高い性格が出ていて、それでいて気品があって、「へえ!」と驚くほどの仕上りだったのだ。

    でもでも、やっぱりご本人には気に入らなかったみたい。

    「25分で描けるというから頼んだのに、1時間以上もかかるもんだから、待っていただいて悪いと思ってイライラした表情がそのまま出てるじゃない。ヘボ絵かきなのよ」とえらくおかんむりだ。

    でもまあ、みんなが口を揃えて
    「あら〜、すごくいいじゃない、ねぇ」
    と褒めたもので、結局は大事に巻いて持ち帰ったのだけれど。

    タシケントのホテルの浴室にはバスタブがあった! でもこれが、日本の団地みたいに真四角でちっちゃい。人ひとりがしゃがんだらぎっしりという感じ。お湯もぬるかったので、シャワーだけにした。TVもラジオもエアコンもついていて、ああ、やっぱり近代都市なんだわあ と実感。


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