WALKING IN RUSSIA


PART 24

ろ髪を引かれる思いでヒワを後にし、ウルゲンチの空港に向かった。12時30分の飛行機でタシケントに向かうのだ。ふるぼけた空港の2階には、さびれた感じのバーがあった。カウンターの棚に並ぶ洋酒のびんは、どれもとても飲めそうにないくらい古いものばかり。コーヒーを頼んだら、インスタントコーヒー程度の味のものが出てきた。

「あ〜あ、もう帰り道なんだわ」とせつない気持ちでコーヒーを飲んでいると、いきなりラジオから聴き慣れた調べが・・・

おおおっ! 「天国への階段」だ!

場所といい、雰囲気といい、この曲を聴くのにこれほどぴったりしたところがあるだろうか。目を閉じてひとり陶酔する私。

さて、搭乗した。せっかく狐川さんが例によって座席番号を書いてくれていたのに、いざ乗ってみたら押すな押すなの混雑で、早いもの勝ちの自由席になってしまっていた。飛行機には立ち席はないのだけれど、なぜか新幹線の200%混雑時のような雰囲気。これって多分、乗客と乗員ひとりひとりが太っているせいだと思う。アエロの座席って、小柄な日本人にも狭く感じられるんだけど、あちらの人が座ると、まさに埋まり込むって感じだ。その上、子連れが多いので、ひとつの座席に頭が2つも3つも見えたりする。ああ、息が苦しい・・・気がする。 1時間後、無事にタシケントに着いた。

ホテルでの昼食は

  • コールドミート+トマト+きゅうり
  • ボルシチ
  • ?・・・フライドポテトの上に牛肉を煮たものがのっている
  • ナン+黒パン・・・ロシアに近づいてきたということだろうか
  • ぶどう
  • バタークリームのケーキ
  • 紅茶
  • ごはんのあとはタシケントの観光。といっても、タシケントは近代都市で、遺跡などはないから、ほんとは自由にぶらぶら歩いたほうがいいくらいなのだ。案の定、連れていかれたのは劇場と公園と市庁舎。噴水を2つも見せられてしまった。でもまあ、こちらの人にしてみれば、盛大に水を噴き上げる噴水は、豊かさや幸せのシンボルなのかもしれない。

    そのあとのウズベク民芸博物館には興奮した。展示物自体はそれほど多くはなく、すぐに見終わってしまうのだが、ここの売店がすばらしい。 ウズベキスタンの伝統的な織物や刺しゅう、アクセサリーを現代の作家が作ったものを販売している。テーブルクロスとかの布類に弱い私にとって、これはもう猫にマタタビ。恍惚状態でヨダレを垂らしながら、ひとりで山積みの布をひっくり返し、ためつすがめつ、ああでもない、こうでもないと迷って、みんなの足をひっぱってしまった。帰ってからも、「ああ、あれも買えばよかった」と後悔し、今でもあそこに 飛んで行きたい気持ちになる。

    そろそろハバロフスクの税関が気になり出した。お土産は山ほど買ったのにレシートがない!という人のために、狐川さんがベリョースカへ案内してくれた。ここで適当なものをいくつか買ってレシートをもらえば、他のものもまぎれこませることができるという魂胆だ。それにしても、こういうところで売っているものは、どうしてこんなに魅力がないのだろう。店の人も全然やる気がなくて、買物をしてもすべてがぐずぐずしている。

    「ちょっとこれを見せてください」店員同士話に興じていて知らんぷり。
    「これを見せてください!」強く言う。と、ようやくぐずぐずと近づいてくる。
    品物を包むのも、料金を計算するのもぐずぐずぐずぐず。で、お金を払う段になって「レシートをください」と言うと、「そんな安い ものにはレシートなんか必要ない」と言って、ガンとしてくれません。じゃあ、なんのためにこんな店で買物なんかしたのよ!

    思えば、さっきの博物館の売店は、若い人たちが自主経営しているようで、すべてがてきぱきしていたなあ。なんてったって、私が今回の旅行のために買った電卓付きの時計を、敵もしていたほど。買い手と売り手の両方で、腕時計をピコピコ押してドル換算をしている風景はなかなかすさまじいものがあったけど。


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