
WALKING IN RUSSIA
PART 23
さて次はパフラワン・マフムド廟。ヒワの大臣で詩人でもあった人のお墓だ。ここで今回の旅で初めて靴を脱いだ。来る前には、イスラムの国ということで肌を見せない服を用意し、多分どこに行っても裸足になるんだろうな、と思っていたのだが、モスクに入れなかったためか、今までそれらしい体験を全くしていなかったので、妙にうれしかった。お墓といっても青いタイルが散りばめられた、とても美しいもの。地元の人にも敬愛されているらしく、観光客ではない参詣者がたくさんいた。みな、静かにそれぞれの祈りを捧げているので、異教徒としては邪魔にならないように足音を忍ばせ、そうっと見せてもらう。
次に行ったタシュ・ハウリ(汗の宮殿)のハーレムはすごかった! 中庭に面して163もの部屋があるのだが、その壁がそれぞれ違うモザイ ク模様で飾られていて、想像を絶する美しさ。青だけでなく赤、オレンジ、ピンクなど、さすがハーレムという華やかな色彩があふれていて、この模様をひとつずつ写真に撮るだけで1日つぶれてしまいそう。もっとも使い捨てカメラの私は、はなからあきらめて写そうともしなかったが。だって、どうせこの色は出ないんだもん。
ここのトイレは奇跡的に臭くない、とみんな喜んでいた。
ヒワでいちばん印象的だったのはジュマ寺院、別名「金曜日のモスク」。10世紀に建てられたと聞いた、涼しくうす暗い寺院の内部には213 本の木の柱が林立している。この中の数本は、当時からのものだというのだ。柱1本1本に細かく彫られた模様がすばらしくて、時の立つのも忘れて見入ってしまう。30年も旅をしている山羊田さんが言うには、インドのヒンドゥー教の寺院(ミーナクシー寺院?)の1室と造りがまったく同じだそうだ。さっき見たハーレムはスペインのアルハンブラ宮殿のものと同形だったそうだし、「イスラムはスペインにも南インドにも14〜15世紀頃には勢力を持っていたということよね!」と興奮していた。
次のキャラバン・サライに向かう道で見かけた、伝統衣装を着たおじいさん2人。背筋がピシッと伸びていて、とてもかっこいい。
「写真撮ってもいいですか?」と手真似で尋ねたら、しっかり胸を張ってポーズをとってくれた。そのうえ、一緒に撮ろうと、かぶっていたチュベチェーカ(小さな帽子)を私にかぶせてくれ、肩を組む。あとから写真を見たら、この2人、瓜ふたつ。ふたごだったのかな。でも、なんだか似ている人が多いのよえ、このあたり。しかも、それぞれの民族の特徴がはっきり出ている顔立ちで。
キャラバン・サライの中は、今ではスーパーマーケットになっている。こっちに来て初めて見るスーパー形式のお店だったが、やはりレジは閉まっていて、買うときにはバザール方式と変わらなかった。94ルーブルのスカーフを買ったら、おつりをクーポンでもいいか、と聞か れた。なんだかよくわからなかったので、「ニエット」と言っちゃったら、すごく苦労しておつりをかき集めてくれたみたいで、なんだか悪いことしちゃったなあ。たいした金額じゃないんだから、クーポンでもらって記念にすればよかったのよね。
外に出ると野外のバザールがあった。ここでも自由時間がちょっとしかもらえなくて、アイスクリーム(こればっかり!)を買っただけで終わっちゃった。猫間さんが果物を買って、みんなにわけてくれた。土地のガイドさんは喜んで食べていたが、モスクワっ子のターニャさん は、警戒して食べなかった。私はもちろんいただいたが、あとから考えると、これがいけなかったかもしれない。