WALKING IN RUSSIA


PART 20

中ドライブインで休憩。ドライブインと言っても、車が駐まれるチャイハナと考えたほうが近い。 一応屋根のある食堂のような建物があるんだけど、中にはだれもいない。奥の台所で、ガスレンジの炎が燃えているだけ。火をつけっぱなしで出かけちゃうなんて不用心だなあ。

建物の外の日陰になったところにテーブルがあって、男が3人ナンやトマトを食べながらお茶を飲んでる。どうやら、あちらに駐まってるトラックの運転手さんたちらしい。お茶はどこでもらうのか、と聞くと、そばのドラム缶を指し示した。ドラム缶には蛇口がついていて、そこをひねるとお湯が出てくるらしい。ドラム缶の下にはガスのホースが引き込まれていて、やはり炎が出っぱなしだ。この附近では最近天然ガスが発見されたと聞いた。多分そのガスが使い放題なのね、今のところ。のんきな話だ。

やがて奥からコーラの箱を抱えた主人が現れた。外国人観光客の到来ということで、あわててコーラをとりにいったらしい。みんなゴクゴク飲んでいたが、私はトイレがこわくて飲めなかった。

バスにもどると、狐川さんがひとりずつに濡れティッシュを渡してくれる。あれ?と思っていると、次は紙ナプキンに包んだお菓子を配ってくれた。中身はおせんべいと梅干しあめとクッキー。こういうのって、添乗員マニュアルで決められているのかしら? それとも、各人の気配りでいろいろ工夫するのかなあ。どっちにしても、私にはとっても無理な職業だわ。

道路は一直線。起伏があるので、坂をひとつ越えると次の坂を登ることになり、登りきったところに何が見えてくるかという期待でつい夢中で景色を見てしまい、まったくあきるということがない。これは意外だった。砂漠を7時間も走ったら、退屈で死にそうになるか、ず〜っと寝てしまうかのどちらかだと思っていたのだ。ただでさえ、バスに乗ると条件反射のように寝てしまう(なぜか、私のまわりにいる血液型がAB型の人は全員そうなのだが、これって科学的な根拠があるのか?)私のこと。信じられないような体験だった。

急に左手に海が見えた。んなわけはない。川だ。アム・ダリア。でも、すご〜く広くて、まるで海のよう。

次のトイレタイムは、完全に砂漠のど真ん中だった。ターニャが、みんなに手をふりながら、潅木の影に去っていく。話の種に私も、と思ったけど、例のNHKの本で砂漠にいる毒虫やさそりの話を読んだばかりだったので、やめた。

道路の向こうにちょっとした砂丘があったので、ついつい好奇心に駆られてみんなでよじ登る。こういうところに来ると、みんな子どもにかえっちゃうみたい。山羊田さんまで日傘をさして登ってきたのには驚いた。でも、登っただけのことはあった。砂丘の向こうはアム・ダリアをせき止めて作った人造のダムだったのだ。あまりにきれいな水面を見て、石の投げっこをしてしまった私たち。

果てしがないかと思われた砂漠もとうとう終わり、急に緑が増えてきた。とうもろこし畑も見える。村を走る道路の真ん中には、なにをするでもなくしゃがみこんで、だべっている男の子たち。退屈なんだろうなあ。インツーリストのバスが通ると、ほんとにうれしそうに手を振るのも、なにか珍しいこと、おもしろいものが見られるからなのよね。

このあたりの人は、サマルカンドやブハラとはまた違う顔立ちだ。きれいな男の人が多いような気がした。

ガソリンスタンドで給油。これが怖かった。なにしろ、地面に開いた穴に鉄パイプが渡してあって、その下からホースが直接出ている。で、そのホースを運転手さんが勝手にひっぱってバスの給油口に差し込むという・・・危ないったら。

だれかがタバコ吸ったりしやしないかと、ハラハラしながら周りをチェックしてしまった。

大平原に沈む大きな太陽を追いながら、バスはさらに走り続ける。右手のはるか遠くを貨物列車が走って行く。これが長い! こっちのバスは走ってる、あっちも反対方向に走ってる、なのにいつまでも続くのだ。多分30両くらいはつながってたんじゃないだろうか。


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