
WALKING IN RUSSIA
PART 19
さあ、砂漠に向けて出発だ。全員、覚悟を決めてバスに乗り込んだ。と思ったら、だれか足りない。 人数が合わない。
狐川さんがホテルのほうに走って行った。「なんだ、またか。今度は誰がいないのかな?」とみんながガヤガヤ言いながら、バスを降りて行く。バスの中から窓の外の人を数えた私が「山羊田さんがいない」。
すると、バスの奥のほうから「わたくしは、さっきからここにおりますわよ!」
キャア〜、どうしよう!
「たった1回の前科でそんなふうにおっしゃらないでいただきたいわ」
「あの、いえ、その、そんなつもりでは・・・」
穴があったら入りたかった。砂漠は、想像していたような砂ばかりのところではなかった。月の砂漠のような砂丘は、アフリカのほうに行かなければないのかもしない。
黄色い砂の平野が前後左右一面に広がっている。わずかに緑色を残した貧弱な潅木と枯れた草の塊のような丸い植物が点在している。砂地には直径10cmくらいの穴がいっぱい開いてる。ネズミだかモグラだかの穴だと聞いた。そういえば、時々炎天下の砂地をイタチのように体の 細い小動物がすごいスピードで走っていくのを見かけた。
なぜかタイヤの端っきれがたくさん落ちているのが不気味。まさか、ここで遭難した車の残骸ではないでしょうね。それに、いくらなんでも数が多すぎる。真新しい原型のままのタイヤ、ちぎれたもの、風化して紙のようになり風に飛ばされているもの等、各種が見られるんだもの。 ひょっとして砂漠はこの国のタイヤの捨て場所?
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帰国後W(シシリーのときのの相棒)と会ったとき、この話をした。彼女は最近、やはりツアーでシリア・ヨルダンに行ってきたのだが、あち らの砂漠にはビニール袋の残骸がやたらと舞っていたそうだ。ふたりであれこれ話した結果、タイヤもビニール袋も砂漠緑化策の道具では ないかという結論に達した。ビニール袋は苗木を包んでいたもの、タイヤは苗木が根付くまでの囲いではないかと。砂漠の潅木が人為的に植えられたものだということは、NHKシルクロード[ローマへの道]第10巻『アジア再深部』(なんて長い書名なんだ!)で読んだ。それにしても砂漠を緑化する過程で、土に還ることのないプラスティックごみをまき散らすことになるなんて・・・。
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砂漠は不毛の地のような気がしますが、意外にたくさんの動物がいるものだ。黒くて、羽の先だけが白い、きれいな鳥も見かけた。ターニャの説明によると、3月には砂漠の潅木にも100種類の花がいっせいに咲くのだそう。すてき!
山羊や羊の群れもときどき現れる。馬に乗った羊飼いがそばを走るさまには、「おお、騎馬民族だあ」と感激してしまう。掘ったて小屋のようなバラックが10軒ほど建っているあたりでは、ジプシーのような人たちがヒッチハイクをしていた。あの人たちは、なにで生計を立てているんだろう? まさか、あそこから街までヒッチハイクで通ってるわけではないだろうな。