WALKING IN RUSSIA


PART 18

ハラの目玉は、なんといってもイスマイル・サマニ廟だろう。ここは、ほんとうに小さい目立たない建物だ。それまでの色鮮やかな装飾を見慣れていた目には、最初のうち貧弱に見えるが、その実、日干しレンガに刻まれた模様は数知れないくらいのパターンを持っていて、とても立体感のある美しい仕上がりになっている。プロの仕事だなあ、と感心してしまう。

カリヤン・ミナレットは、迷路のような旧市街を歩くときの目印にもなる、高さ46メートルの搭だ。ガイドブックには罪人を袋に詰めてこの搭から突き落としたと書いてあったが、きょうのガイドさんは「浮気をした妻を突き落とす」と言っていた。いつの間にそんな話に・・・。 これに限らず、ガイドさんの話がガイドブックなどと違っていることはけっこうあって、猪木さんや蛇本さんは怒ってた。

次は古い寺院を利用した劇場です。劇場と言っても、座席はチャイハナにあるような四角い縁台のようなものが並んでいる。これならリラックスして劇が楽しめそう。ここの入口には、自作の絵を売る青年がいた。ブハラを描いた風景画だったが、なかなか雰囲気のある画風。1枚5ルーブル!

昼に帰ったホテルで話した若い女性グループによると、ブハラ出身の韓国系ウズベク人の有名画家がいるんですって。彼のアトリエがブハラにあって、そこを訪ねてみたけど留守だったので、代わりに例の青年の絵を買った、と話していた。う〜む、すごい情報収集力だなあ。感心してしまった。

メドレッセ(多分、アブドラジス・ハーンだと思う)には、夏休みだというのに帰省もせず、コーランをひとり静かに読む青年がいた。私たち観光客が静寂を乱しているのにも関わらず、頼むとコーランを見せてくれた。その美しさにも驚いたが、浮わついたところがなくて、落ち着いた青年のまなざしに感動してしまった。宗教でも何でも、ひとつのことを真摯に突き詰めようとしている人の表情なのだろうか。

さて、心ひそかに(ほんとうは口に出して騒いでいたけど)憧れていたリャビ・ハウズだ。ハウズというのは池のこと。乾ききった街を歩いてきて、このさして大きくもない池に出たときの感動はなかなかのものだ。実際に、池のそばは温度が少し低いのではないだろうか。池の周囲には大きなニレの木が植わり、気持ちのよい木陰を作っている。木のてっぺんにはコウノトリの巣が。本で読んで、このコウノトリに憧れていたのだが、なぜか今回の旅行では1度もお目にかかれなかった。巣だけはたくさん見たんだけど。コウノトリって、渡り鳥だっけ?

木陰には有名なチャイハナがある。ここに座りたかったんだ!

さっそく売店にいって、お茶を注文した。1ルーブルで急須1杯のお茶。茶碗は、プラスティック製のこれ以上汚れようがないといったくらいに古びていた、もうこのくらいじゃ誰も驚かないもんね。おまけに1個しかなかったもので、みんなで回し飲みだ。

もひとつ慣れたもの、それはハエ。最初のうちこそ、神経質に払っていたが、だんだんに無益なことを悟ってきて、自分が口に入れるときにとまってさえいなければ、食べ物にたかっていようがへ〜き。

隣りの縁台にはお爺さんとお婆さんのグループが楽しげにお茶会を開いている。自分たちで持ち寄ったナンやトマトを食べているのをうらやましそうに見ていたら、ナンを分けてくれた。ナンの表面には脂が塗ってある。バターのようなものかしら?

また、例によって身振り手振りでお話をしてしまう。こっちの人たちは暑いのに長靴を履いているのですが、その上にさらに外履きのような靴(というよりカバーかな)を履いていて、縁台に上がるときはこの外履きだけを脱いで、長靴のまま上がっちゃう。なるほど、長靴は寝るときしか脱がないわけだ。お爺さんたち、お茶が終わると、残ったナンやトマトをテーブルに敷いていた布でまとめて包み、見事な引き際で去っていった。

念願のお茶もして、満足してホテルに帰り、昼食。

  • コールドビーフ
  • トマト&きゅうり
  • スープ・・・にんじん、たまねぎ、黄ピーマン、レンズ豆、トマト、米を煮たもの。意外にあっさりしていておいしい
  • 牛肉とじゃがいものシチュー・・・かんたんに言えば肉じゃが。日本のみたいにしょうゆ味と甘みはないけれど、すごく近い味。そのせいか、和食党で、どんどん食欲が落ちていたさっちゃんも全部平らげた
  • ぶどう、洋梨、りんご
  • さて、この後バスに乗って、キジル・クム砂漠を縦断。ウルゲンチに向かう。7時間の旅、トイレだけが心配だ。


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