WALKING IN RUSSIA


PART 12

時に起きて散歩に出る。しかし日頃の私とは別人だなあ、この早起きぶりは。

サマルカンドはとても美しい街だ。街じゅう緑に覆われていて、そこかしこに花が咲き乱れている。緑が多いといっても、はんぱじゃない。 樹齢何百年といった、大きくて葉も豊かな木ばかりなのだ。大小さまざまなバラの花が咲き乱れているのにも驚く。今だともう秋バラになるのかしら? オアシスって、こういうものなのね。砂漠を旅してきて、こんな街にたどり着いたら、どんなにうれしく思えることだろう。

ただし、ほこりっぽい! 空気が乾燥してるから、風が吹くと道路から黄色っぽい砂が舞い上がる。おまけに道路清掃人がやたらに多くて、そこらじゅうをほうきで掃くものだから(ディズニーランドじゃないっていうの)、ほこりまみれ。時々撒水車が走ってきて、道路に水を撒いていくが、文字通り焼け石に水ね。

道行く人たちは、ほとんどが民族衣装で、とても華やか。女性はたいていアトラスという模様の生地で作ったワンピースを着ている。日本の矢ガスリに似ているが、色は赤、黄、ピンク、グリーンと目も覚めるほど強烈。強い太陽の下だからこそ映える服だ。小さな民族帽子をちょこんとかぶっている人もいた。とにかく若い女性はみんなきれい! 目鼻立ちがくっきりしたエキゾチックな美人。

ホテルのそばの空き地では、少年が西瓜を並べて店の準備をしていた。こっちの子どもたちは、夏休みだったせいもあるだろうが、実によく親の仕事を手伝う。

「ねえねえ、おはようって、なんて言うんだっけ」がさごそがさごそ(かんたんロシア語会話集を見ている)
少年はなにごとかと私たちをみつめている。
「あった、あった。これだわ。でも、発音がわからないね」
「言ってみようよ。1、2、3」(2人で声をそろえて)「どーぶらえ うーとら!」
一瞬たじろいだ少年も、すぐに恥ずかしそうに笑って「ドーブラエ ウートラ」と返してくれた。

ホテルの庭にはぶどう棚があって、おじいさんがはしごに昇って実を取っていた。

「ドーブラエ ウートラ」(すっかり調子に乗っている)
「ドーブラエ ウートラ」(わ〜い)
私たちはきのう持ち帰ったぶどうを食べながら歩いていたので、それを見せると
「*******************」と言って(ひとこともわからない)うなずいてくれた。

さて、朝食は

  • 黒パン
  • チーズみたいなバター
  • 穴あきチーズ
  • ヨーグルト・・・これがものすごく濃くて、どろどろした感じ。大きなコップになみなみと入っている
  • オムレツ・・・のはずなんだけど、たくさんの油の中で焼いたらしく、どちらかというと揚げ卵という感じのもの
  • バスでペンジケントに向かう。

    窓の外には例によって
    羊や山羊。
    チャイハナで(朝っぱらから)くつろぐ人々。
    西瓜や瓜を売る人たち(道端に山のように積み上げている)。
    生肉(?)を木の枝にぶらさげて売る人たち。
    が、流れていく。

    ペンジケントでは地元のガイドさんがつく。ターニャがガイドの説明を日本語に通訳してくれるのだが、彼女の日本語はまだ発展途上。途中で言葉に詰まる。

    「うぅぅ・・・シュク、シュカ、シュフ・・・」
    すると、みんなが口々に「主観?」「修理?」「修復?」
    「あ、それです!しゅーふくです」
    その頃には何の説明を聞いていたかは忘れているのだが。でも、なんだかクイズみたいでおもしろかった。

    最初の考古学博物館は、はく製や発掘物がほんの少しあるだけで、ちょっと子どもだましって感じ。それなのに、写真を撮るならカメラ1台につき25ルーブル払いなさい、というの。このあと行ったどこの観光地でもそうだったから、この料金は大切な観光収入の一部なのね。しかも、ほんとに小さな建物なのに、係員がいっぱいいる。入口に偉そうに座ってたおじいさんでしょ、彼にお茶をいれていた若い女性と、そばで私たちから写真代を徴収していたおばさんでしょ、あと、部屋ごとに子どもを抱いた女の人とか、おしゃべりに夢中の若い娘とか、どこまでが関係者なんだかわからないけど、合計12〜3人はいただろうか。そして、私たちが見学を終えて外に出ると、その人たちもぞろぞろついてきて、おじいさんは入口の鍵を閉めてしまった。結局、博物館で見学されたのは私たちのほうだったんじゃないだろうか。

    次に遺跡の発掘現場に行った。ここはすごい。一面に黄色い砂の丘が横たわっている。なにも遮るもののない炎天下を一列になって歩いていくと、実際に掘っている人たちがいた。映画で見るように、穴の中にしゃがみこんで、小さなノミで少しずつ砂の壁を掘りくずしている。そばには、掘り出したばかりの、完全な形の骨がひとつ。おお、すごい!

    ガイドさんが中の人に声をかけると、汗をふきながら立ち上がって会釈してくれた。が、そのとき、あとずさりした彼の足下には例の骨が・・・

    ボリバリベリ(粉々)

    あっ! 全員が叫んだ。

    でも、その人もガイドさんもぜ〜んぜん平気。涼しい顔をしている。??????

    なるほど、よ〜く周りを見れば、そこらじゅうに積み上げられた砂の山の中に、数えきれないほどの骨が混ざっている。たいして重要なものじゃなかったのね。←でも、ほんと?

    帰りのバスに乗ろうとすると、小さな女の子たちが寄ってきて、またもや「ギブミーチューインガム」とやる。外国製品が珍しいのかなあ。 でも、だれもあげないでいたら、いきなり歌を歌い始めた。「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ。豆がほしいか、そらやるぞ」

    やだあ〜。誰よ、こんな歌教えたの。この歌を歌えばガムをあげるとでも言ったのかしら。許せない。ツアーのおじさんたちも、さすがに複雑な表情だった。


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