WALKING PARIS IN WINTER



12月30日(月)

の食事は階下の小さな食堂でいただきます。食堂と言ったって、小さなテーブルが2つあるだけ。8人くらいしか食事できないんじゃないかしら。時間差で食べるしかないのね。食堂に座って待っていると、玄関のベルがチリン!と鳴って、おばあさんが入ってきました。腕に下げた買物篭からバゲットが覗いています。

「あれが私たちの朝ごはんだわ!」

夕べ鍵を開けてくれたおじいさんが、コーヒーを出してくれました。このホテルは老夫婦でやってるみたい。ほんとにパンとコーヒーだけの朝食なんだけど、パンがおいしいから許せてしまう。

きょうはディジョンに行って泊まり、31日にまた戻ってきて1泊するからと言って、荷物を預ってもらうことにしました。リヨン駅から電車に乗ります。コンパートメント式の電車で、禁煙車を指定したせいか、同室者は18くらいの女の子と子どもを2人つれた母親とその姉妹らしき人、と女子どもばかり。でも、フランスの子どもはあまりうるさく騒がないので助かりました。

約2時間半の間に、窓の外の景色は吹雪から快晴へと劇的に変わりました。山を越えたせいかしらね。

ディジョンに着いて、さっそくインフォメーションに行きました。が、タッチの差で昼休みに突入。これが影響大なんですよねえ。なにしろ12:30〜14:30までと長いから、困ってしまう。せめてホテルリストだけでも置いておいてくれればいいのに、建物全体に鍵を掛けて出かけてしまっているから、中に入ることもできない。昼休みが長いのって、自分の身に置き換えて考えれば、実に結構なことなんだけど、旅先でこれをやられるとかなり頭に来ます。限られた時間と予算で歩いているから、1時間でも貴重なのに・・・。

ぼ〜っと待っていてもしかたがないので、パリから持ってきた身の回りの荷物をかついで、あてもなく街をさまよい歩きます。商店も昼休みで、なぜかお菓子屋さんだけが開いていました。このお菓子屋さんのショーウィンドーが、クリスマスシーズンのせいかすごくにぎやかしい。 マジパンで作ったカラフルなくだものや動物が、おしゃれなパッケージに入って飾られています。中には全長40cmくらいもある真っ赤なオマールえびやナマズまで! チョコレートやタルトもおいしそう。

八百屋さんの店先には、大きなアーティチョーク、真っ白なマッシュルーム、小さめのトマト、カリフラワー、チコリ、さやいんげんなど、冬だというのに質のよい野菜がならんでいます。温室栽培かしら? それとも南のほうから運んでくるのかなあ。

ディジョンというのは、ブルゴーニュ地方の農村かと思っていたのですが、ちょっとイメージと違って、古い城下町といった感じ。どちらかというと、安野光雅の『旅の絵本』に描かれている、石造りの街のイメージに近いです。屋根の瓦が黄色やオレンジ色、緑色で、模様のようになっているのがとてもきれい。パリほど高い建物はないし、細い石畳の道が縦横に通っていて、いい雰囲気です。

街の中心部に市場があるのも気に入りました。ここは屋根つきの大きな常設市場で、朝・夕はその周囲にさらに露天市が出て、街じゅうの人が買物に来たかのようににぎわいます。ちょっとした広場に、仮設のメリーゴーラウンドが出ているのも年末だからかしら?

なにしろ狭い街なので、すぐに街はずれまで出てしまい、また別の道を戻っては街はずれに出てしまい・・・というのを繰り返しているうちにようやく昼休みが終わりました。

インフォメーションは2ヵ所あって、さっきは駅のそばに寄ってみたのですが、今度は古い石造りの館の中にあるほうに行ってみました。 ホテルやレストランの地図がのってるリストをもらい、ホテル探しに出かけます。ところがこの地図がかなりいい加減!

おまけにシーズンオフのため、駅の近くのホテルなどはほとんどが休業中で、ずいぶん時間がかかってしまいました。でも、ようやく見つけたホテル HOTEL JACQUEMARD ( 32, RUE VERRERIE) は値段も安くて(ツインで200フラン以下)、従業員の感じもとてもいい。古い木の階段は黒光りするまで丁寧に磨き上げられているし、家具も本物のアンティーク。バスルームには毛足の長い絨毯が敷いてあって、ちょっと少女趣味だけど、お姫様の部屋みたいです。

荷物を置いて出かけます。骨董屋さんが並んだ通りを見つけ、ふたりとも目がランランと光ってしまいました。きょうはもう閉まっているけど、「明日はぜったいチェックね!」と誓い合う私たち。代わりに?靴屋さんがバーゲンしていたのを目ざとく見つけ、ブーツを買ってしまった。クリスマスの飾りなどを専門に扱う店も開いていました。最近では東京にも一年中開いてるクリスマス・ショップができているけれど、このとき初めて、そういう店の存在を知りました。

さすがに田舎で、7時を過ぎたらあっという間に人通りがなくなり、店もばたばたと閉まってしまう。通りにの上には、クリスマスのイルミネーションがずらっと続いていてきれいなんだけど、誰も歩いていないし、街灯も少ないしでやっぱり不気味。

おまけにレストランがない!

昼間歩いていたときは、こじんまりとした感じのよさそうな店がけっこうあったのだけれど・・・。ふたりしてそこらじゅうを走り回ったけど見つからず、だんだん怖くなってきたので、市場の近くのファミリーレストランみたいな所に入ってしまいました。

ブルゴーニュ名物のエスカルゴをまず注文します。寒い街を歩き回ったあとだけに、にんにくバターが溶けてじゅうじゅう言ってるエスカルゴの皿が出てきたときは、幸せいっぱいでした。でも、それ以外のメニューは、あんまりフランスっぽくはない。どちらかというとドイツ料理みたい。ソーセージとじゃがいもに、ザワークラウトがもう「これでもか!」とばかりにやたらたくさん付いてくる。でもまあ、ソーセージにつけるディジョン特産のマスタードは、なんてったっておいしい。それにもちろん、ブルゴーニュワイン! ちょっと思惑とはずれてしまったけれど、まあまあ満足のいく食事でした。

このときは知らなかったのだけれど、ここはアルザス料理のレストランだったのね。シュークルート(ザワークラウト)がアルザス料理として有名だなんて、当時の私たちは知らなかった。


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