WALKING PARIS IN WINTER



12月29日(日)

ロワッサン、バゲット、バター、ジャム、コーヒーという朝食をすませると、フロントに荷物を預けて出かけました。まずは、近くのホテルから順に空き部屋があるかどうかチェック。

「ブザベユヌションブル?」「コンビヤン?」を何回繰り返したことか。空いていて値段も手頃でも、見せてもらうとがっかりだったりで、なかなかこれというのに出会えません。そのうちに雪が降り始めました。

と、書くとロマンティックでしょ。と〜んでもない! ひどい大雪なのよ、これが。

前が見えないくらいの横なぐりの雪の中、HOTELの看板を見つけては走り寄り、「満室」の札を見て肩を落とす私たち。持ってる地図は雪に濡れてべしょべしょ。「なんにも見えない!」と言って振り向いたWの眼鏡には雪が積もっていた。

結局ODEONまで歩いてしまい、時刻はもうお昼時です。「腹がへってはいくさはできぬ」部屋探しはいったん中断して、きのう見かけておいしそうだったロシア料理のレストラン LA DATCHA DES ARTS ( 56, RUE ST.ANDRE DES ARTS ) に入りました。ほんとうのサーモンピンクをしてるスモークサーモンのおいしかったこと! ほかに、いわしのマリネ、タラモサラタ、魚のヨーグルトあえなどをクレープにのせて食べる料理を注文して、どうやら元気を回復しました。結局、ゆうべ泊まったホテルのそばの HOTEL DENMARK に決め、荷物を持って移動します。 今度は5階の屋根裏部屋(キャッ!芸術っぽい)。ただし、星なしのホテルですから、エレベーターなどありません。

「こんなことなら来る前に ゼェゼェ 教えといて ゼェゼェ くれれば ゼェゼェ いいのに ゼェゼェゼェ」

さすがにWもかわいそうと思ったのか、頼みもしないのに一緒になってスーツケースを5階まで引っ張り上げてくれました。

部屋はあまりというか、まったくきれいじゃありません。タンスなんかトビラが閉まらないし、椅子に張ってあるきれはボロボロ。絨毯もすりきれてます。シャワーはなし、トイレは共同。でも、雰囲気は充分です。古びた花柄の壁紙もカーテンも、アンティークと言えば言えるし、観音開きの窓には木の枠がはまっているし、淡いピンクに塗った小さな木の椅子が片隅にあるのも可愛い。タンスだって、日本でなら立派なアンティーク家具です。映画で見た、売れない画家のアパルトマンみたい←単純なヤツ私って(^_^)。

とにかく泊まるところが見つかったので、安心して出かけます。ノートルダム寺院の中をひとまわりしてから、ルーブルに行きました。ところがものすごい行列。「ひえ〜、こんなのに並んでたら日が暮れちゃうわよ。ここは朝早く来なくちゃだめね。出直そう」すぐにあきらめ、古い町並みが残ると言われるマレ地区に。

確かに由緒ありげな建物が並んでいます。でも、すでにどれも人は住んでいないらしく廃墟のよう。人通りもほとんどなくて、気味が悪い。 通りすがりの少年が「ケラレティル?」と聞きます。オイオイ、こっちは観光客だぞ。時間なんかフランス語で答えられるわけがないじゃないか。しかたがないから、「はい!」と言って腕を突き出し、時計の針を読んでもらいました。変な顔をしていたなあ。


「あれって、もしかしたらスリかカッパライの手口だったのかも」と、10年近くたった今、急に思いつきました。時計の文字盤を見ながら一生懸命フランス語を考えてるスキに掏るのかもしれない。ところで、最近の女性誌「FIGARO」のパリ特集を見ていたら、マレ地 区は今やと〜ってもお洒落な場所になっているのね。結局、再開発のために土地や建物を買収し、住民を追い出して、取り壊しを始める、まさにその時点に私たちは訪れたわけです。


こんな所に長居は無用です。夜9時まで開いているというポンピドーセンターに行き、ゆっくりと美術館を回ります。最近は日本でも、週に1回くらい、夜遅くまで開いている美術館が増えてきて、勤め人にとってはとてもありがたいことです。土日に混んだ美術館に行くのはなるべく遠慮したいものですものね。

9時過ぎに地下鉄で VAVIN に戻り、店の外に蛎を山盛りにしていたレストラン BAR A HUITRES で蛎と貝を堪能。シーズンだからでしょうけど、街を歩いていると、店の外に台を出して、その上に殻付きの蛎を積み上げているレストランが多いんです。あれを見ながら歩いていれば、誰もが「夕食は蛎」と潜在意識に刷り込まれてしまうんじゃないかしら。

貝の盛り合わせは、はまぐりやつぶ貝、それにタニシみたいな形の貝が、クラッシュアイスの上に山盛りで出てきました。蛎も3種類くらいが盛り合わされていて、それぞれに味が違う。これにおいしいワインもたっぷり飲んで、すご〜くいい気持ちになってワアワア騒ぎながら帰りました。

が、いい気持ちだったのはそこまで。

「げえ〜っ!」

なんとホテルの入口が閉まっちゃってる。門限があるなんて、ひとことも言ってなかったのにぃ・・・しかたなくブザーをビービー鳴らすと、中から不機嫌そうな顔のおじいさんが出てきて、開けてくれました。「11時過ぎるなら、玄関の鍵を持ってってくれなきゃ困るじゃないか」と怒られてしまった。なんか、ホテルじゃなくて、親戚の家にでも泊めてもらってるみたい。

酔っぱらってる体には、5階までの階段はつらいものがあります。そのうえ、途中まで登ったところで電気が消えてしまった! 「やだ、停電だ。雪のせいかしら?」と騒ぐ私に「そうだ、パリの電気は時間が来ると消えるんだった」とパリ経験者W。各階のどこかにスイッチがあるはずだけど、めんどうなので手探りで登ってしまいました。フランス人って、ほんとに締まり屋なのねえ。

このあとトイレに行ったときもひと騒ぎしてしまった私です。だって、どこを探しても電気のスイッチがないんですもの。悩んだあげく、なんとかなるだろうと覚悟を決めて(オオゲサナ)中に入り、鍵を掛けたら電気がつきました。

このトイレの設置場所もすごくて、5階と4階の間の階段の途中の壁に埋め込まれたみたいに作ってあるの。狭いのなんのって、扉を開けるとすぐ便器で、座ってる目の前がドアになるという・・・。出るときも気をつけないと、階段を踏み外しそうになってしまうのだ。掃除はちゃんとしてあって、不潔ではありませんでしたけど。

そういえば、パリのトイレットペーパーは、どんなにきれいなホテル(といっても私たちが泊まったいちばん高級なところでも2つ星だったけど)でも、茶色のパリパリの紙でした。向こうの人って、痔になったりしないのだろうか。私なんて、トイレに入るなり紙をとって手で揉み揉みして柔らかくしてから使ってました。


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